一年中お家で快適に過ごせるポイント「断熱」の仕組み・種類を一挙ご紹介

    最近の住宅のつくりを見ると、昔と大きく変わっているのが断熱性能です。

    数十年前に建てられた住宅と比較すると、冷暖房費が約3分の1になるほどの違いです。

    家の断熱効果を上げると、家の中が過ごしやすくなるだけでなく、建物を傷みにくくする効果もあります。

    確かな技術を持つ業者に託すためにも、断熱のしくみから断熱材の種類まで理解しましょう。

    こちらでは、断熱の方法や、よく使われる断熱材の特徴などを説明します。

    断熱の仕組みとは?

    断熱の仕組の図

    「断熱」とは、熱の移動を防ぐこと。

    住宅の断熱に使われることの多い断熱材には、液体や固体に比べて熱を通しにくい気体の性質を利用しています。

    断熱材の中に密度の高い気体を閉じ込め、外から伝わる熱の通り道を減らす仕組みです。

    方法としては、新築やリフォームで天井や壁、床などに密度の高い断熱材を入れ、窓には断熱性の高いサッシや複層ガラスなどを設置します。

    よく耳にする「遮熱」との違いは?

    断熱とよく比較されるのが「遮熱」です。

    熱を伝えにくくする断熱と違って、遮熱は光を反射させることで温度の上昇を抑えます。

    断熱には、基礎から屋根、天井、壁、床まで断熱材を使うことができますが、遮熱には、最近になって関心が高まったこともあり、現在取られている方法は多くありません。

    主な対策には、窓にひさしやシェードなどを設置、屋根に遮熱塗料を塗る方法などがとられています。

    気になる「断熱圧縮」と「断熱膨張」って何?

    「断熱圧縮」とは、外気を遮断して体積を小さくすると、内側の温度が上昇する現象です。

    エアコンの暖房にはこの機能が使われています。

    「断熱膨張」は、圧縮と反対に、外気を遮断して体積を大きくすると温度が下がる現象です。

    エアコンの冷房や冷蔵庫がこの仕組みを利用しています。

    断熱のメリット

    断熱は、熱が伝わりにくくなることで、さまざまなメリットが得られます。

    リフォームで断熱工事をするか迷っている方は、施工費用と断熱のメリットを照らし合わせて決めると良いでしょう。

    冷暖房費用が安くなる

    冷暖房設備のついた部屋

    家庭で消費されるエネルギーのうち、年間約25%を冷暖房が占めていると言われます。

    特に冬期、室温を10〜15度上げる消費量はとても高いものに。

    断熱がほどこされた家では、夏は涼しく、冬は暖かい室温が保たれます。

    断熱の基準は年々性能が上がっていて、1992年以前の基準と比較すると、「高断熱住宅」と言われる住宅では冷暖房費用を約3分の1におさえられます。

    冷暖房の使用が減れば、冷暖房機器も長持ち。修理や買い替えの出費も少なくなります。

    温暖差を下げて家族の健康にいい

    温度計
    Photo by Jarosław Kwoczała on Unsplash

    断熱化していない建物では、冷暖房をつけた部屋とつけていない部屋の温度差が高くなります。

    暖房をつけた部屋からトイレや洗面所に行くと、その温度差は15度以上になることも

    急激な温度の変化で血圧が変動し、心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中の原因になる「ヒートショック」のリスクを高めます。

    家全体の断熱化ができれば、部屋と部屋の間の温度差がなくなり、ヒートショックの可能性も減るでしょう。また、室内でもかかりやすい夏の熱中症も防げます。

    室内の暖かさ・涼しさを保ち一年中快適に過ごせる

    高断熱の建物は、夏だと屋外の熱気が入らず、冷房がよく効きます。

    冬は暖かい部屋の空気が壁、天井、床、窓から逃げないため、早朝や夜でも極端に温度が下がらず、快適に過ごせます。

    熱い空気は上昇し、冷たい空気が下に溜まるため、断熱化していないと暖房をつけても足元が寒い状態が続きますが、断熱した部屋では室内の温度が一定に保たれます。

    水蒸気やカビが生じにくいため家が長持ち

    窓際や壁の表面につく結露は、温度と水蒸気のバランスで起こります。

    放っておくと、カビやシミになり、ひどい時は家の柱や土台を腐らせることも。

    適度な換気で水蒸気を逃しながら室内に冷えた部分を作らないようにすれば、結露は発生しません。

    断熱と防湿加工をして、室内の換気をしながら温度差をなくせば、結露やカビを防げます。

    3種類の断熱方法(断熱工法)とそれぞれの特徴

    断熱のメリットを確認したところで、次は断熱方法を見てみましょう。

    断熱の効果は、いくら断熱材の性能が優れていても、適切な方法で設置されなければ機能しません。

    断熱方法の種類とメリット、デメリットがわかれば、新築やリフォームの時に施工会社がどんな方法で断熱化を進めるかわかりやすくなるでしょう。

    外張り断熱

    「外張り断熱」は、柱や梁の外側からすっぽりと家を包み込むように断熱材を覆う方法です。

    外気の影響を受けやすい柱も守られて、柱の内側に充填するより断熱性を保ちやすくなります。

    壁内が空洞になるので、充填断熱のように配線に注意する必要がなく、施工しやすい方法です。

    断熱材に隙間がないために湿気が侵入しにくく、木材から熱も逃げずに結露もできにくいので長持ちします。

    一般的に外張りは防蟻性の高いグラスウールなどが使われます。

    ただし、地震や自らの厚みで垂れ下がらないように加工が必要です。壁の厚みで部屋が狭くなることも注意しましょう。

    充填断熱

    「充填(じゅうてん)断熱」とは、壁や天井の内部に断熱材を入れる方法です。

    機械でグラスウールやロックウールを吹き込む工法と、プラスチック系の断熱材などをはめ込むパネル工法があります。

    「吹き込み工法」は、障害物が多く入り組んだ場所でも断熱材を埋め込めます。

    短時間で仕上がるので、新築だけでなくリフォームにも適したやり方です。

    トータルコストは比較的安いですが、入り組んだ場所などは、隙間ができやすく、結露防止に防湿・気密シートが必要です。

    「パネル工法」は、合板とプラスチック系の断熱材を組み合わせたパネルが主流です。気密性の高い断熱施工が可能な反面、コストアップにつながり、また現場での急な変更に対応しづらい工法です。

    付加断熱

    「付加断熱」は外張り断熱と充填断熱の両方を施工する方法です。

    柱や梁などに使われる木材は熱が伝わりやすい性質を持っています。

    木材から熱が逃げないように外側と内側から断熱をすることで、約2倍の効果を発揮します。

    コストは高くなりますが、断熱材を厚くできるために性能アップにつながります。

    家に使う断熱材の種類

    省エネや、高断熱・高気密の洋風建築がブームになって数十年、住宅の断熱性能が注目され、技術も進化してきました。

    今では20種類以上の断熱材があります。

    断熱材の性能は、熱の伝わりやすさを示す「熱伝導率(W/m・k)」で判断します。

    この値が小さいほど断熱の性能が良く、建築では一般的に0.1W/m・Kより小さい断熱材を使います。

    断熱材の種類は主に「繊維系」と「発泡系」があり、繊維系は細かい繊維が詰まった高密度な素材が効果が高く、プラスチック系断熱材はより多くの細かな気泡があるものが高性能となります。

    無機繊維系:グラスウール、ロックウール

    グラスウールはガラスを接着剤で成形、ロックウールは玄武岩などの天然岩石を繊維状にしたもの。

    グラスウール、ロックウール共に熱伝導率は約0.035〜0.050W/m・kです。

    両方とも低価格なので普及しています。

    グラスウールとロックウールの組み合わせで、基幹的な住宅用断熱材として優れた効果を発揮します。

    床、壁、天井などと住宅のほとんどの部位の断熱に利用できます。劣化しにくく、耐火性と防音性に優れていますが、高い断熱性能を得るためには厚みが必要で、湿気防止のため、防湿剤も欠かせません。

    木質繊維系:セルロースファイバー

    綿やおがくず、トウモロコシなど、木質繊維を使った断熱材は、古くから利用されてきました。

    自然系の中では一番歴史があり、普及しています。

    最近では、古紙を再利用したセルロースファイバーが主流。

    壁や天井の中に吹き込む充填断熱が最も一般的です。

    燃えにくさや防虫効果を高めるために、ホウ酸や硫酸アンモニウムを加えます。

    天然素材のため環境に優しいイメージですが、断熱の性能に対して価格が割高。熱伝導率は約0.038〜0.040W/m・kです。

    天然素材系:羊毛、炭化コルク

    羊毛や炭化コルクなど、天然素材を使った断熱材は環境に負荷が少ない素材として注目されています。

    羊毛は、自ら湿気を吸湿・放湿する調湿機能があり、結露がつきにくく、腐りにくい特長があります。防虫加工を施して使用します。

    欠点は価格の高さでしょう。

    炭化コルクは、ワインの栓に使うコルクなどの製造過程で余った切れ端が原料です。

    コルクの持つ樹脂成分で固まるため、化学糊を使う必要がなく、コルク樫には防虫効果もあります。

    特徴は、調湿性能の他、燃えにくく、火災があっても一気に燃えないこと

    羊毛は充填断熱に、炭化コルクは充填断熱、外張り断熱両方に使われます。熱伝導率は約0.037〜0.040W/m・kです。

    発泡プラスチック系:ポリスチレンフォームシリーズ等

    発泡プラスチック系は、材質によって性能や硬さ、使い方が変わります。

    板状なので外張り断熱や床断熱が可能。

    だいたい他の断熱材より防湿性が高く、結露ができにくいのが長所です。

    中でもポピュラーな「ポリスチレンフォーム」は発泡スチロールと同じ素材の「ビーズ法」、それを固い板状にした「押出法」があり、外張り断熱工法や家の基礎部分の断熱によく使われます。

    結露ができにくく、軽量で加工しやすいですが、熱に弱いのがデメリット

    ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えた「硬質ウレタンフォーム」はマンションで充填断熱の吹き込み工法によく使われます。

    熱伝導率は約0.023〜0.039W/m・kと断熱性に優れますが、価格が高く、燃えると有害ガスが発生する危険性があります。

    買い物用の袋と同じ素材の「高発泡ポリエチレン」は柔軟で湿気や薬品に強いのが特長。

    「フェノールフォーム」はプラスチックでありながら、耐火性に優れています。

    熱伝導率は約0.019〜0.036W/m・kと高断熱で有害ガス発生の可能性も少ないですが、価格がとても高いのが難点です。

    新築やリフォーム時には断熱を検討しよう!

    リビングとダイニング

    断熱工法も断熱材の種類もたくさんあって、それぞれメリット、デメリットがあることはおわかりいただけたでしょうか。

    断熱材は、目に見えない場所にあるだけに、工事の時に手を抜かれることもあると言われます。

    断熱の知識があれば、手抜きを防ぐことは不可能ではありません。

    お家で断熱対策をすることを決めたら、価格の安さだけでなく、性能やデメリットにも注意して、快適な断熱住宅を完成させましょう!

      ABOUT US
      KJ設計士
      自然を愛する設計士。光や風、植栽を上手に取り入れる洗練させた空間提案が得意。実は一年中海に通うサーファーでもある。一見強面だが実は猫が好き。今日もお客様の喜ぶ顔を思い浮かべ、ペンを走らせる。