部屋の中に高低差を作るスキップフロアは、おしゃれでメリハリのある空間を演出できる施工手法です。
狭い土地でも広く見せられるのが魅力ですが、同時に設計難易度が高いことでも知られています。
この記事では、スキップフロアのメリット・デメリットや、実際に設計するうえで注意したいポイントについて分かりやすく解説していきます。
失敗や後悔がないように、スキップフロアが持つ特徴をしっかりと理解しておきましょう。
目次
スキップフロアってもの?
スキップフロアとは、一つの空間の中に複数の段差を作る施工手法のこと。
「中二階」や「1.5階」などと呼ばれることが多いです。
階の間にもう一つ別の空間を作るので、立体的で奥行きのある雰囲気を作ることが可能。
部屋の区切りを高低差のみで作るため、壁や廊下などの仕切りを一切使わないという特性があります。
これにより、見た目も珍しい独特の雰囲気を演出できるのです。
勾配のある土地で活用されることもあり、土地の形状によってはスペースを有効活用できる場合もあります。
スキップフロア型のマンションって?
スキップフロアは一般的に戸建て住宅で使われる単語ですが、実はマンションなどの集合住宅でも使うことがあります。
マンションの場合は少し意味合いが異なり、エレベーターが1〜2階おきにしか止まらない物件のことを指します。
エレベーターが止まらない階の人は、近隣階で降りたあとに階段を使って自分の階まで行くことになります。
少し不便になる一方で、「近隣階とのプライバシーが確保しやすい」「エレベーターホールが不要になる」「施工面積を小さくできる」など、入居者・施工者どちらにもメリットがあります。
スキップフロアのメリット
スキップフロアは狭い土地を有効活用する施工手法ですが、導入するとどんなメリットがあるのでしょう?
ここからは、スキップフロアを活用するメリットを4つの項目に絞って解説していきます。
プチ吹き抜けで空間を広く感じられる
スキップフロアは段差のみで空間を仕切るため、吹き抜け構造のような開放的な見た目となります。
段差を作ることで視点が奥へ・上へといきやすくなる効果もあるため、実際の空間よりも広く見せる効果もあります。
上下に空いたデッドスペースを有効活用できるので、狭めの土地でも生活スペースを広くとることができるのです。
家族とのコミュニケーションがとりやすくなる
壁や廊下の仕切りがないため、一緒に住む家族とのコミュニケーションをとりやすくなります。
上下階で声が通りやすいので、小さな子供がいる家庭では会話がスムーズになります。
子供部屋をスキップフロアに置いてしまえば、1階から子供たちの様子を伺うことも可能に!
そのぶんプライベート空間が少なくなりがちなので、実際の生活スタイルをイメージしながら設計するのが大切です。
収納スペースが増えて便利
スキップフロアで段差を作ったぶん、収納スペースを多くとることができます。
床下やロフト収納などと比べて少ない負担で物の出し入れができるので、かさばるものでも楽に収納できます。
また、敷地に余裕がある人は、収納専用のスペースである蔵を作るのもおすすめ。
地域の自治体によっては蔵を床面積に含まない場合があり、固定資産税の節約になるメリットがあります。
とにかくオシャレ!
スキップフロアに憧れる人が多い理由は、おしゃれな雰囲気を作りやすいからです。
オープンスペースの部屋は遊び心に溢れており、段差の区切りがあるぶんインテリアの差別化もしやすいのです。
自由な空間デザインを楽しみたい人にとってはたまらない間取りといえるでしょう。
スキップフロアのデメリット
設計に関して絶妙なバランスが求められるスキップフロアは、失敗・後悔する人が多い施工手法としても知られています。
スキップフロアのデメリットをしっかりと理解したうえで、導入するかどうかを検討しましょう。
光熱費が高くなる
スキップフロアは壁の仕切りが存在しないため、通常の住宅と比べて冷暖房効率が悪くなりがちです。
「断熱性の高い素材で設計する」「空調設備を強化する」などの対策をしなければ、快適な温度にするために時間がかかってしまうことも。
通常の住宅よりも光熱費がかかりやすいので、毎月かかるコストも細かくチェックしておきましょう。
年配の方にとっては住みにくい
同じ空間の中にいくつもの段差を作るので、年配の方にとっては単純に住みにくい家になってしまいます。
若い人にとっては何の問題もありませんが、毎日蓄積される疲労は高齢者の負担になりやすいもの。
特に狭い土地に作るスキップフロアは複雑な構造になりやすいので、将来的にバリアフリー設備などを導入しにくくなってしまいます。
建築費用が高くなる
大きな空間の中に段差や階段をいくつも作るので、通常よりも施工費用が高くなりやすいのもデメリットの一つ。
段差や収納スペースを作るための材料費や、特殊な施工技術による人件費などが増えやすくなります。
壁や仕切りを排除することによって耐震性が損なわれるので、これを補強するのにも追加コストが必要になります。
音や匂いが広がりやすい
コミュニケーションがとりやすくなる反面、音や匂いなどが漏れやすいというデメリットもあります。
仕切りがないので防音力は弱く、生活音などが周囲に聞こえやすくなってしまいます。
料理の匂いなども充満しやすいので、換気設備を強化するなどの対策が必須となります。
どんな土地がスキップフロアに向いている?
施工難易度の高いスキップフロアは、建てる土地によって向き・不向きがはっきりしているのも特徴。
スキップフロアの魅力を最大限に活かせる土地のパターンを紹介していきます。
家を建てる土地に高低差がある場合
建築場所が傾斜地になっている土地は、スキップフロアとの相性が良いです。
従来の施工方法だと無駄になりやすい場所に上手く高低差をつけることで、生活スペースを増やすことができます。
狭小住宅のスペースを有効活用
使える土地が極端に少ない狭小住宅は、スキップフロアの特徴を最大限に活かすことができます。
狭小住宅は構造上、上に長い建物になってしまうため、上下の空間を活かせるスキップフロアとは相性抜群!
スペースを上手に使いつつ、適度な吹き抜け感で開放感も演出できます。
平屋の場合はより空間を活用できる
意外かもしれませんが、平家の物件でもスキップフロアを活用できます。
平家は横に長く単調な印象を与えやすいので、部分的に段差を付けることで空間にメリハリと開放感を生むことができます。
おしゃれで広いデザインのワンルームを作れるので、新築だけでなくリノベーションの活用事例にも多く取り上げられています。
スキップフロアをつくるときの注意点
実際にスキップフロアを作るときには、いくつか注意しておきたいポイントが存在します。
特に気をつけたいポイントをまとめたので、参考にしてみてください。
床面積が増えるので固定資産税が上がる
スキップフロアは高低差のぶんだけ床面積が増えるので、通常よりも固定資産税が高くなりやすいです。
収納スペースと併用すれば床面積にカウントされない場合もありますが、ルールはその地域の自治体次第。
建てる場所によっては床面積を多く計算されてしまうケースもあるので、設計時点で細かくチェックしておくことが大切です。
設計者の腕次第!住みやすさに影響する
スキップフロアは施工の難易度が高く、建築ルールや生活導線のバランスなど、考慮しなければいけないポイントがたくさんあります。
ある程度の技術と施工実績をもった建築業者を選ばないと、不便で住みにくい家になってしまう可能性があります。
設計の段階で不安な点を全てリストアップし、要望がきちんと通っているのかを入念にチェックすることが大切です。
空間を最大限活用するスキップフロアで楽しい暮らしを
今回はスキップフロアの基本知識や注意点について詳しく解説しました。
おしゃれで開放的な空間を作れるスキップフロアですが、設計・建築においては注意すべき項目も多いのが特徴です。
実際に導入を検討している人は、メリット・デメリットをしっかりと見極めながら完成系をイメージしてみてくださいね。