「アルヴァ・アアルト」は20世紀を代表する北欧の建築家の一人です。自身の建築に合わせ、家具や照明のデザインも多数手掛けています。
この記事では、アルヴァ・アアルトの成り立ちやデザインの特徴、代表作について詳しくご紹介します。
20世紀を代表する建築家アルヴァ・アアルト
1898年フィンランド中西部の「クオルタネ」に生まれたアルヴァ・アアルト。
家系は代々林務官であり、測量技師の父「ヨハン・ヘンリク・アールト」と、母「セルマ・ハクステット」の間に生まれました。
スウェーデンの「グンナール・アスプルンド」と並び、20世紀を代表する北欧の建築家の一人です。
生涯において200以上の建物を設計し、のちの建築家たちにも多大な影響を与えました。
自身が手掛けた建築に合わせ、家具のデザインもおこないました。
その他にもガラス食器のデザインや絵画など、活動は多岐にわたり、プロダクトデザイナーとしても高く評価されました。
ヘルシンキ工科大学で建築を学ぶ
1916年から21年まで、アアルトはヘルシンキ工科大学に在籍。
フィンランドの建築家・教授・画家である「アルマス・リンドグレン」のもとで建築を学びました。
在学中には両親の家の設計も手掛けています。
卒業後に建築設計事務所を立ちあげる
卒業後の1923年、アアルトはユヴァスキュラ市に建築設計事務所「Alvar Aalto(アルヴァ・アアルト)」を開設します。

フィンランド建築家リストのトップに名前がくるように考慮して、Aから始まる事務所名にしたといわれています。
1927年に設計事務所をトゥルクに移転。
トゥルクの農業組合本部とヴィープリの図書館の建築設計競技で一等を受賞したことがきっかけでした。
また1933年には、敷地変更により休止していたヴィープリの図書館の設計が再始動したため、事務所をウィープリに近いヘルシンキに移しています。
家具メーカーアルテックを創業する
1935年アアルトは、妻であり建築家の「アイノ・アアルト」、フィンランドのアートコレクターである「マイレ・グリクセン」、美術史家の「ニルス・グスタフ・ハール」と共同で「アルテック」を設立。
社名は1920年代に沸き起こった国際的なモダニズム運動のキーワードである「アート」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語です。
家具の販売だけでなく展示会や啓蒙活動をとおして、モダニズム文化の発展を目的としていました。
アアルトが手掛けた家具は、アルテック社が製作および販売をおこなっています。
サナトリウムに向けた家具デザインで有名になる
パイミオのサナトリウム用に開発した家具デザインが、1928年に開催されたコンペで一等を獲得します。
成形合板を使用した座面のアームチェアは、当時斬新だったため「材料革命」と評価され、アアルトは国際的な家具デザイナーとして有名になりました。
このプロジェクトをきっかけに、本格的に家具デザインをスタートしています。
夫婦共同でガラス食器のデザインを手掛ける

アルヴァは建築以外のデザインも、多数手掛けています。
妻アイノと共同で生みだした「イッタラ」のガラス食器は日本でも有名です。
湖や白樺をイメージしてデザインしたといわれる花瓶「アアルト・ベース」は、1937年のパリ博覧会に出品され、世界中の多くの人から評価されました。
アルヴァ・アアルトの代表的な北欧家具・照明5選
アアルトが生みだす作品は、ミニマルながら機能性が高いのが特徴です。
曲線を用いたデザインが多く、空間に柔らかさをもたらします。

また量産を考慮しパーツの一体化や、新しい曲木の技法を取り入れているのも、アアルトデザインの秀逸なところです。
ここからは、代表的な北欧家具・照明を5つご紹介します。
アルヴァ・アアルトを象徴する「スツール60」

「スツール60」はアルヴァ・アアルトのアイコン的作品の一つ。
木材をL字に曲げた「L-レッグ」を取り入れた初のデザインとなっています。
軽量で持ち運びしやすく、スタッキング可能。機能性にも優れています。
また椅子として腰掛けるのはもちろん、ソファ横に置いてサイドテーブルとして使ったり、ディスプレイ台として雑貨を飾ったりするなど、いろいろな使い方が楽しめるのも大きな魅力。
定番の3本脚のほか、より安定感のある4本脚バージョンも展開しています。

好みやインテリアに合わせて選べる、豊富なカラーバリエーションも嬉しいポイントです。
デスクチェアにも向いている「69チェア」

1935年にデザインされた「69チェア」は、アルテックの椅子のなかでも、特に人気の高い作品です。
広い座面と安定感のある背もたれが、しっかりと身体を支えるため、ホームオフィスにも、ぴったり。
スツール60と同じ「L-レッグ」の曲線と、シンプルなフォルムは飽きがこず、長く愛用できます。
豊富な色と仕上げからセレクトできるのも魅力的。
色違いで複数配置しても良いでしょう。
作業デスク向けのコンパクトなテーブル80A

「テーブル80A」は1935年にデザインされました。
奥行きは浅め、幅は120cmと余裕があるので、作業をおこなうデスクに向いています。
長方形のシンプルなデザインなので、どんなテイストのインテリアにも馴染むのが魅力的。
特許を取った「L-レッグ」がデザインのアクセントになっています。
素材にはフィンランド産のバーチ材を使用。
木ならではの質感が、部屋全体に温もりをプラスします。経年変化も楽しめるテーブルです。
複数個吊るして楽しみたい照明A330(ゴールデンベル)

「ゴールデンベル」という愛称で親しまれているペンダントライトです。
ヘルシンキで最も格式の高いレストラン「Savoy(サヴォイ)」に向けて、1937年にデザインされました。
アアルトはSavoyのオープン時に、内装だけでなく花器や照明、家具なども合わせて手掛けています。

メイン照明として一灯で全体を照らすのではなく、カウンターやテーブルの上に複数個吊るのに向いています。
消灯しているときも、目で見て楽しめるデザイン性の高さが魅力です。
蜂の巣を思わせるペンダントライトA331(ビーハイブ)

「BEEHIVE(ビーハイブ)」とも呼ばれるペンダントライト「A331」。
「BEEHIVE(ビーハイブ)」は英語で「蜂の巣」を意味します。
アアルトが手掛けた照明のなかでも、特に人気の高い作品の一つです。
1953年に誕生し、フィンランドのユバスキュラにある大学にも採用されています。
個性を感じる重なり合ったシェードは、デザインとしてだけではなく、眩しさを感じないよう工夫が施されています。
下方からの光はもちろん、天井に映るやわらかな灯りも楽しめるペンダントライトです。
北欧デザイン界に大きな影響をもたらしたアルヴァ・アアルト
この記事では20世紀を代表する建築家である、アルヴァ・アアルトについてご紹介しました。
200以上の建築物や家具、照明などを生みだし、北欧デザイン界において多大な影響を与えた人物です。
スツール60など、比較的手にしやすい価格でありながら長く使える家具が多いのも嬉しいところ。
気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
北欧において、モダニズム建築が盛んになるきっかけとなった人物でもあり「北欧が生んだ近代建築の巨匠」とも呼ばれています。