洗練されたデザインを追求したポール・ケアホルム|歴史や偉業を紹介

    ポール・ケアホルムは、デンマークの家具デザイナーです。

    鋭い感性によって生まれた直線的で繊細な作品を得意とし、現在もインテリアデザイン界において高い評価を得ています。

    この記事では、ポール・ケアホルムの生い立ちやデザインの特徴、代表作について詳しく解説します。

    金属製の家具を得意とするポール・ケアホルム

    ポールケアホルム

    1929年1月8日にデンマークで生まれたポール・ケアホルムは、少し珍しいタイプの北欧家具デザイナーです。

    その理由は、主に木製家具をデザインするデザイナーが多いなか、金属製の家具を得意としていたところにあります。

    クールな印象をもつ素材を使用した繊細なデザインは、レイアウトする場所を選びません。

    彼の作品は金属がメインでありながら、温もりを感じる木製家具と同じ空間に置いても違和感がないのです。

    クリント派だったケアホルム。

    少しでも良い作品を生みだすため、試行錯誤を繰り返す「クラフトマンシップ」が他のデザイナーと共通していたからでしょう。

    15歳で木工マイスターに弟子入りする

    ケアホルムは15歳で木工マイスター「Th.グロンベック」に弟子入りします。

    もともとは絵を描くことが好きで画家を目指していましたが、幼い頃に負った怪我の影響で左脚に障害が残ります。

    そんな息子を心配した父親の「手に職をもたせたい」という勧めもあり、4年間専門学校に通いながら木工マイスターの資格を取得しました。

    ウェグナーの事務所で働きながらデザインを学ぶ

    1949年にコペンハーゲンの美術工芸学校に進学したケアホルム。

    当時、教授を務めていた「ハンス・J・ウェグナー」と出会い、彼の事務所の非常勤所員として働くようになります。

    ウェグナーはユトランド半島出身であることや、デザイナーという目標が同じであるケアホルムに親近感を抱いたのでしょう。

    ケアホルムは恵まれた環境で家具デザインを学び、卒業制作では後に発表される金属を用いたシリーズのベースとなる「PK25」を手掛けました。

    コル・クリステンセンと出会い道が開かれる

    アイヴァン・コル・クリステンセン」との出会いによって、ケアホルムのデザイナーとしての道が開かれます。

    コル・クリステンセンは「ハンス・J・ウェグナー」の家具の販売と営業をおこなう会社「サレスコ」の中心人物。

    会社を設立しケアホルムのプロデュースに努めました。

    幅広い人脈を活用したサポートの甲斐あってダイニングチェア「PK1」を筆頭に、代表作となるラウンジチェア「PK22」やコーヒーテーブル「PK61」など、PKナンバーの家具が多数発表されます。

    王立芸術アカデミー家具科で教授を務める

    ケアホルムは王立芸術アカデミー家具科において、後進の育成にも貢献しました。

    「オーレ・ヴァンシャー」の助手を担当したあと、1976年に後を次いで3代目となります。

    学生の作品に対しても妥協を許さなかったため、生徒からすると少し近寄りがたい先生だったようです。

    ポール・ケアホルムの主な功績

    ケアホルムは金属を用いた家具デザインだけでなく、さまざまな功績を残しています。

    ここからは、具体的な例をいくつかご紹介します。

    歴代の教授に続きX型折りたたみ椅子を手掛ける

    PK91

    ケアホルムは、歴代の教授がX型の折りたたみ椅子をデザインしたことに続き、1961年に「PK91」を発表しています。

    1930年にコーア・クリントが手掛けた木製の「プロペラスツール」を、ステンレススチールを使ってリ・デザインしたものです。

    金属の華奢なレッグが上品な印象の作品でしたが、持ち運ぶときに素材の重さがネックに。

    1970年に4代目教授「ヨルゲン・ガメルゴー」が、軽量化を実現させたスチールロッドのモデルを発表します。

    それを知ったケアホルムは機嫌を損ねましたが、より使い良いデザインの誕生に貢献したといえるでしょう。

    妻が設計した自邸の家具デザインを手掛ける

    妻「ハンネ・ケアホルム」は建築家。ケアホルムは、彼女が設計した自邸の家具デザインを手掛けました。

    メインの部屋は壁ではなく、家具を配置して区切っているのが特徴的です。

    暖炉の前にはソファ「PK31」とコーヒーテーブル「PK61」、ダイニングとの境目には「PK111」など、ケアホルムのさまざまな作品が設置されています。

    この自邸は、デンマークを代表するモダンな住宅の一つとして有名になりました。

    木製家具のデザインにも挑戦する

    金属を用いた作品を得意とするケアホルムですが、晩年には木製家具にも挑戦しています。

    1971年に成型合板を用いたラウンジチェア「PK27」、1976年にはデンマーク「ルイジアナ美術館」のコンサートホールに向けて、木製の折り畳み椅子をデザインしています。

    2つの作品が評価され、デンマーク家具製造連盟より賞を受賞しました。

    金属とは性質の異なる木の家具に対しても妥協せず、試行錯誤を繰り返した結果といえるでしょう。

    ポール・ケアホルムの代表的北欧家具4選

    ケアホルムが手掛ける作品は、徹底した美意識による洗練されたフォルムが特徴です。

    素材の持ち味を活かすよう、計算しつくされています。

    ここからは代表的な北欧家具を5つ紹介しましょう。

    ケアホルムを象徴するPK22

    PK22

    1956年にデザインされたラウンジチェア「PK22」は、ケアホルムの代表作の一つ。

    1957年のミラノトリエンナーレにてグランプリを受賞しました。

    金属とレザーの対照的な素材の調和が美しく、適度な緊張感をもたらします。

    先端が上を向いた金属製の脚は、床に傷が付くのを防ぐため。

    細部にも手を抜かない、クラフトマンシップを重視する姿勢が伺えます。

    座面にはレザーを使用。腰掛けたときに体の重みで沈み、全身を包み込みます。

    レッグのラインが印象的なPK31

    PK31

    「PK31」は、大きすぎず小さすぎないサイズ感が絶妙なソファです。

    奥行きは深くありませんが安定感があるので、腰掛ける人の体形や設置する場所を選びません。

    背もたれには、さりげなく傾斜がついており、立ったり座ったりする動作をスムーズに行えます。

    浮遊感のある脚がデザインのアクセントになっています。

    正方形の天板が主役のPK61

    PK61

    1956年に誕生したコーヒーテーブル「PK61」。

    空間を邪魔しないよう、重心が低めに設定されているのが特徴です。

    天板の素材は複数から選べます。大理石や御影石を使用したタイプは緊張感のあるフォルムに温もりが加わり、自然素材と金属の調和を楽しめます。

    クールな雰囲気が好みならガラスの天板がおすすめ。

    脚の構造があらわになることで空間が、よりスタイリッシュに仕上がります。

    上品かつ洗練された佇まいのPK80

    PK80

    ベンチやベッドとして活用できる「PK80」は、1930年にドイツの建築家「ミース・ファン・デル・ローエ」とデザイナー「リリー・ライヒ」が手掛けたカウチから、ヒントを得て作られました。

    張地のレザーとスチールベースのフレームの対比の美しさが際立つ、ケアホルムらしいミニマルなデザインです。

    低めの重心は、どんな空間にも圧迫感なく馴染みます。

    ニューヨーク近代美術館「MoMA(モマ)」の展示室など、さまざまな場所で活躍しています。

    ミニマルなフォルムのPK1

    PK1

    「PK1」は1955年に発表され、「カールハンセン&サン」が製造したダイニングチェアです。

    空間を邪魔しないミニマルなデザインは、モダンインテリアはもちろん、クラシカルな雰囲気の部屋にも馴染みます。

    強度の高いロープ「フラッグハリヤード」を使用した、背もたれと座面は座り心地抜群です。

    ケアホルムの家具職人としての高い技術を感じる、初期の名作といえるでしょう。

    一切の妥協を許さないデザイナー

    家具デザインに対して一切の妥協を許さないケアホルム。

    その姿勢がブレることありませんでした。より良いものを生みだすための努力と鋭い感性によって、優れた作品を数多く残しています。

    ぜひ実際にケアホルムの作品に触れて、凛とした空気感を味わってみてくださいね。

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      cova
      「五感」と「空間提案」をテーマとする建築士。職人の手仕事が感じられるモノや空間は、視覚的な美しさだけでなく、触れた感触が心地よかったり、そこでの食事の味や音の響きにまで影響を与えるもの。机上で完結しない、現場でのインスピレーションを大切にしています。