優れたバランス感覚をもつキャスパー・サルト|歴史や代表作を紹介

    デンマーク出身のデザイナーであるキャスパー・サルト。

    優れたバランス感覚をもち、現代の家具デザイン界において注目を集める人物の一人です。

    この記事では、キャスパー・サルトの成り立ちやデザインの特徴、代表作について詳しく解説します。

    バランス感覚に優れたキャスパー・サルト

    「キャスパー・サルト」は1967年に、コペンハーゲンに生まれました。

    祖父はデンマークを代表する陶芸家、父は建築家、母はテキスタイルデザイナーとして活躍しており、日常的に芸術に触れながら育ちました。

    周りの環境もあってか、サルトはバランス感覚に優れていました。

    「コーア・クリント」が提唱したデンマーク伝統のリ・デザイン法を実践しつつ、コスト面や市場のニーズなど時代に合わせた作品を手掛けています。

    家具職人としての修業を積む

    現役のデザイナーとしては珍しく、サルトは家具職人としての修業を積んでいます。

    17歳の頃、1985年から1988年にかけて木工マイスターである「ヨーン・ウォルフ」の工房で、知識と技術を取得します。

    インダストリアルデザインを学ぶ

    サルトは家具職人としての経験を積んだ後、デンマークデザインスクールに入学。

    インダストリアルデザインを学びます。

    在学中にスイスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインに留学し、国際的な感覚を身に付けました。

    ボチウムの創設者ピーター・スタークと出会う

    卒業後「ルッド・チューゲンセン」デザイン事務所に勤務していたとき、有名家具ブランド「ボチウム」の創設者であり、デンマークを代表するデザイナーの「ピーター・スターク」と出会います。

    1997年に「ランナーチェア」がボチウムから公開されたことで、サルトの名は世間に広まり、デザイナーとしてのキャリアがスタートしました。

    フリッツ・ハンセンからアイスチェアを発表する

    2002年にサルトは、デンマークの家具メーカー「フリッツ・ハンセン」からの初めての作品となる「アイスチェア」を発表します。

    2003年にはフランスの「ル・グランプリ・デュ・デザイン」を受賞し、サルトはデザイナーとして一躍有名になりました。

    日本では国立新美術館や明治学院などに数多く採用されています。

    トマス・シグスゴーとユニットを組む

    2003年頃からサルトは、建築家「トマス・シグスゴー」と共同で活動するようになります。

    2005年にはデザインオフィス「サルト&シスゴー」を設立。

    それぞれの個人プロジェクトと並行し、二人で協力してアイデアを温めました。

    初の共同作品は、2007年にデンマークの照明器具メーカー「ライトイヤーズ」から発表された「NOSYデスクランプ」です。

    サルトとシグスゴーは、家具デザイナーと建築家という違った立場での知識や経験を活かし、デンマークデザイン界の先頭に立つユニットとなりました。

    サルトの相棒トマス・シグスゴーとは?

    建築家の父の影響もあり、王立芸術アカデミーで建築を学んだシグスゴー。

    家具や照明デザインのプロダクト、インテリアデザインも得意としていました。

    デンマークの「PLHアーキテクツ」や「ヴィルヘルム・ラウリッツェン」の建築事務所に勤務し、大規模な建築物の設計にも関わっています。

    2001年にはコペンハーゲンに事務所を立ち上げ、個人宅の設計を中心にフリーランスとして活動していました。

    信託統治理事会議場のリノベーションで有名になる

    サルトとシグスゴーは、2011年に「フィン・ユール」の生誕100周年記念して開催された「信託統治理事会議場」のリノベーションに伴う、デザインコンペで勝利を獲得します。

    大規模な工事を担当したことで世界的にも有名になり、活躍の幅を広げました。

    共同で活動を始めた当初は照明器具の作品が中心でしたが、このプロジェクトがきっかけとなり、家具デザインにも取り組むようになります。

    キャスパー・サルトの主な功績

    サルトはデンマークデザイン界に影響を及ぼす功績を残しています。

    ここからは具体的な例を解説します。

    大手家具ブランドとコラボレーション

    サルトは「フリッツ・ハンセン」や「ライトイヤーズ」「ワンコレクション」といった大手家具ブランドとのコラボレーションにも積極的に参加しました。

    2002年にフリッツ・ハンセンから発表されたアイスチェアを筆頭に、2005年に「リトルフレンドテーブル」、2010年には「ナップチェア」を手掛けています。

    数々のデザイン賞を獲得する

    サルトが手掛けた作品は世界各国で高く評価され、数々のデザイン賞を受賞しました。

    アイスチェアシリーズは世界中で販売され、フランスのデザイン賞を獲得。

    1999年には日本でもグッドデザイン賞に選ばれています。

    デザインした家具は東京の「国立新美術館」やデンマークの「ルイジアナ美術館」といった、有名な美術館にも取り入れられています。

    若手デザイナーの育成にも貢献

    サルトは作品を生みだすだけでなく、若手デザイナーの育成にも積極的に取り組んでいます。

    1996年から1997年にコペンハーゲンの王立芸術アカデミーで講師をしたり、2019年には次世代の家具デザイナーの登竜門番組の審査員を務めたりしました。

    こうしたサルトの活動は、将来の家具デザイン界に貢献しているといえるでしょう。

    キャスパー・サルトの代表作3選

    サルトの作品の多くは、自然界からインスピレーションを受けてデザインされています。

    定番の素材を取り入れ、細部まで丁寧に仕上げているのが特徴です。

    ここからは、代表的な家具を3つご紹介します。

    多目的に使えるリトルフレンドテーブル

    リトルフレンドのある空間

    2005年にフリッツ・ハンセンとのコレボレーションにより誕生したリトルフレンドテーブル。

    コンパクトかつ軽量なので、限られた空間での使用にも最適です。

    高さが調節できるため、ソファの近くに設置してサイドテーブル、パソコンを置けばワークテーブルなど、さまざまな用途に使えます。

    ゆったりと座れるナップチェア

    ナップチェアのある空間

    ナップチェアは2010年にデザインされました。

    座面の緩やかなカーブと、凹凸のあるマットな質感が印象的です。

    縞模様のような表面はデザインとしてだけではなく滑り止めの役割があり、快適な姿勢をキープすることができます。

    無数の可能性をもつプルラリステーブル

    プルラリスのある空間

    プルラリス」とはラテン語で「いくつか、1つより多い」という意味をもちます。

    目的に応じて、さまざまな使い方ができるのが魅力です。

    天板が延長可能な仕様もあるので、オフィスでのミーティングにも最適。

    オプションのケーブルマネジメントシステムを付ければ、パソコンやタブレットの電源を確保できます。

    インテリアを選ばないデザインなので、ダイニングテーブルや書斎机として自宅で使用するのもおすすめです。

    現代のデンマークデザイン界を牽引する人物

    サルトはデンマーク伝統のリ・デザインを実践しながらも、時代に合わせた作品を数多く手掛けました。

    また個人だけでなく、シグスゴーとのユニットも才能を認められ、活躍の場を広げています。

    将来を見据え、後進の育成にも貢献するサルトは、現代のデンマークデザイン界を牽引する人物といえるでしょう