「回遊動線」という言葉は聞いたことがあっても、イメージが浮かばない方もいるのではないでしょうか。
回遊動線がある間取りは、住まいの不満点を解消できる可能性を秘めています。
とはいえ、「取り入れ方は?」「我が家に当てはまる?」など、気になることも多いですよね。
今回は、回遊動線を取り入れるメリット・デメリットや事例を紹介します。
新築するタイミングで暮らしの質を向上させたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそも回遊動線とは
回遊動線とは、家の中に行き止まりがなく、室内をぐるりと回れる動線のことです。
生活や家事の中心となる場所を起点にして回遊できる間取りにすれば、無駄のない動きができます。
イメージでいえば、日本家屋が回遊動線に近いでしょう。
部屋の間がふすまで仕切られている日本家屋は、開けると居間からキッチン、居間から玄関へとスムーズにアクセスできる間取りです。
回遊動線にするメリット
注文住宅なら新築時に回遊動線を取り入れた間取りが可能です。
効率を重視したストレスがない日常生活を実現できます。
まずは、回遊動線を取り入れるメリット4点を解説しましょう。
部屋の行き来をショートカットできる
一部屋に2つ以上の経路がある回遊動線は、部屋同士の距離が短くなり目的の場所へ短時間で移動できます。
例えば、買い物帰りに玄関からキッチンへの動線を確保すれば、買ったものをスムーズに収納できることも。
目的に合わせて移動距離をショートカットできる動線なので、効率よい生活ができるのです。
室内で渋滞が起きにくい
回遊動線は起点とする場所に複数の経路をもつため、慌ただしい時間帯に渋滞が起きにくい間取りです。
例えば、朝は玄関や洗面所が混み合いやすくてすれ違えない場合、回遊動線なら他の出入り口からアクセスできるため、行きたい場所へスムーズに移動できます。
渋滞解消は部屋の使いやすさにもつながり、ストレスなく過ごせるでしょう。
家事の負担を軽減できる
キッチン・ランドリールーム・洗面所など水回りを回遊動線にすれば、家事の無駄な動きがなくなるため時短につながります。
キッチンで煮込み料理をしている間に洗濯の準備ができるなど、目の届く範囲で家事の同時進行が可能になるからです。
浮いた時間は少し休んだり読書をしたりなど時間を有効に使えるため余裕が生まれます。
間取りに奥行きを感じられる
回遊動線の間取りは壁で仕切られた空間が少なく、行き止まりの箇所も一般的な間取りに比べて少ない傾向です。
そのため、空間に奥行きを感じられるので広くて開放的な室内を作れます。
回遊動線のデメリットと対策
メリットがある一方、デメリットも4点あります。
しかし、どれも事前に対策できるものばかりです。
メリットとデメリットを理解した上で、自分のライフスタイルに回遊動線が適しているのか判断材料にしてください。
居住スペースや収納スペースが狭くなる可能性がある
回遊動線は、本来収納スペースであった場所を通り道として利用します。
つまり、通路のために収納や居住スペースが狭くなる可能性があるのです。
収納がある程度欲しい方、各部屋の広さを通路に割ける余裕がない方にとってはデメリットといえるでしょう。
収納スペースは「動線上にスペースを作る」「壁面収納を取り入れる」ことで解決します。
そのためには事前に収納する量を把握して、それに見合ったスペースを洗い出しましょう。
家具の配置が限られる
複数の出入り口はスムーズなアクセスが可能である一方、通路部分に家具が置きづらい傾向です。
また、模様替えしにくいため新築時に家具の配置を固定する必要があります。
間取りを考える際、事前に家具のサイズを設計士に伝えましょう。
一般的に、部屋の出入り口が少なければ配置場所の選択肢が広がります。ライフスタイルをシミュレーションしながら回遊動線を検討してください。
プライバシーが確保しにくい
回遊動線は一つの部屋に対して複数のルートがあるため、場合によってはプライバシーを確保しにくい点がデメリットです。
例えば、家事の効率化を目的として洗面所・浴室・キッチンを回遊できても、入浴時は家族間で気を遣いながら生活しなければいけないことも。
引き戸や鍵を設置するなど、ある程度のプライベートを確保できる状態にしましょう。
希望通りの耐震を確保できない可能性がある
通路が多くて開口部が広い間取りは建物を支える壁が減り、構造が弱くなる可能性があります。
当然、建築基準法で定められた耐震はクリアしていますが、高い耐震等級を希望する場合は間取りの制約により回遊動線が難しい場合があります。
動線の利便性か高い耐震性かなど、住まいの優先順位をあらかじめ検討しましょう。
それによりバランスを考慮した設計ができ、回遊動線が必要な箇所を吟味できます。
回遊動線で後悔しないための注意点
回遊動線のメリット・デメリットは理解できたものの、「実際本当に暮らしやすくなるのか?」「必要なのか?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。
以下2点を念頭におけば、ギャップが生じにくくなります。
延べ面積に合わせて間取りを考える
延べ面積の限度を把握しておかなければ生活スペースが狭くなり、暮らしにくい住まいになる恐れがあります。
そもそも回遊動線は通路が増える分、他の空間に影響を及ぼします。
さらに、家事の効率化が目的の回遊動線は、一般的なキッチンに比べて広いスペースが必要なアイランドキッチンを取り入れるケースが多い傾向です。
つまり、動線を意識することも重要ですが、延べ面積に合わせて間取りを考えるのが基本だと心得ましょう。
家族の動きや家事動線をシミュレーションする
回遊動線を考える際は、作業の時間・収納方法・家事のスタイルなど家族一人ひとりの行動パターンをシミュレーションしましょう。
さらに、住まいに対してストレスを感じていることや理想のシチュエーションを家族間でシェアするのが大事です。
それにより、どの部分を回遊動線にするか明確になり、快適な間取りが実現します。
暮らしを快適にする回遊動線の間取りとは
回遊動線を取り入れて快適な暮らしを実現するには、生活や家事の中心となる場所を起点にすることが重要です。
ここからは、実例を紹介しましょう。
キッチンを中心とした回遊動線
キッチン周りに回遊動線を取り入れれば料理中に洗濯ができたり、パントリーと玄関に動線を設けて買い物後の収納をスムーズにしたりなど、家事効率がアップします。
おすすめの設備はアイランドキッチンです。
キッチン周りを一周できるので各部屋へのアプローチが自由自在。
無駄のない動きができるため、シンプルで実用性を求める方にはおすすめです。
洗濯のしやすさにこだわった回遊動線
同じく家事を効率アップさせるには、洗濯動線を基準とするのもよいでしょう。
例えば、洗面脱衣所(洗濯)→ランドリールーム(外干し・取り込み・畳む)→ベランダ(外干し)を隣接させれば時短につながります。
ファミリークローゼットに行き来しやすい回遊動線
リビング→ファミリークローゼット→洗面所を回遊させるのも無駄が省けて便利な動線です。
家の中心にファミリークローゼットを配置すれば、朝の時間帯でも家族同士ぶつからずに移動できます。
また、洗濯動線上にファミリークローゼットを設ければ収納までがスムーズに!
さらに効率アップにつながります。
注文住宅なら回遊動線の間取りが自由自在!
ライフスタイルに合わせて回遊動線を取り入れれば、暮らしの質が向上して時短につながります。
そのためには、延べ面積を把握して家族の動きをシミュレーションしましょう。
注文住宅であれば理想の間取りが実現し、構法によって耐震性をカバーできることも!
暮らしの不満点を解消するために、回遊動線を検討してみてはいかがでしょうか。
つまり、複数の出入り口により部屋同士を周遊できる動線が、回遊動線なのです。