「ジョージ・ジェンセン」はデンマークの銀細工師です。
自然界からインスピレーションを受けたアール・ヌーヴォー調のデザインが評判をよび、後に自身と同名のブランドを立ちあげました。
この記事では、ジョージ・ジェンセンの成り立ちやデザインの特徴、代表作について詳しく解説します。
目次
伝説の銀細工師ジョージ・ジェンセン
ジョージ・ジェンセンは、1866年にナイフとぎ師の息子としてコペンハーゲンの北部に誕生しました。
1904年には自身と同名のブランドを、コペンハーゲンに設立。
当時流行していたアール・ヌーヴォー調の装飾的な作品が高く評価され、1920年代の終わり頃には、ヨーロッパやアメリカにも店舗を拡大していきます。
現在ではデンマークとスウェーデン王室御用達としても知られ、世界のセレブを中心に多くの人から愛されています。
有機的でタイムレスなデザイン
森や湖に恵まれた町で育ったジェンセンは自然界に感銘を受け、果物や草花など有機的なモチーフとした作品を数多く手掛けました。
また彫刻的な装飾も特徴で、ジュエリーだけでなくテーブルウェアなどのデザインにも反映されています。
銀細工と彫刻が融合した多様な作品は、流行や年齢を問わず人気を集めています。
芸術から工芸へと方向転換する
14歳から銀細工を学んだジェンセンは、18歳のときにアンデルセン金細工「ギルド」の見習いを終えます。
その後、彫刻家を目指して「デンマーク王立芸術アカデミー」に進学。
卒業した後は芸術家として活動していましたが、収入が十分ではなかったため、芸術から工芸へと方向転換します。
やがてシルバーの魅力に気付いたジェンセンは、陶器制作をやめて銀細工師・デザイナーとして活動するようになりました。
デンマークを代表するブランド「ジョージ・ジェンセン」
銀製品をメインに扱う「ジョージ・ジェンセン」は、ジェンセンが亡くなったあともデンマークを代表するブランドとなりました。
設立した当初は小さなジュエリー店でしたが、シルバーの魅力を活かした斬新なデザインと確かなクラフトマンシップにより、店舗を拡大していきます。
日本では東京日比谷の「帝国ホテル」にある、インペリアルプラザに1号店が誕生。
2006年には、ロサンゼルスの高級住宅地として知られる「ビバリーヒルズ」の「ロデオ・ドライブ」に世界最大規模のジュエリーショップがオープンしました。
現在は世界12ヶ国において80以上もの店舗を展開しています。
銀細工師として新風を巻き起こす
ジェンセンは「ジュエリーは富の象徴ではなく、日常を彩る芸術品」として新しいスタイルを確立しました。
有機的で大胆な装飾や、表面に立体感をだす技術を用いて、独自性のあるデザインを生みだしたのです。
またジェンセンは銀細工師としての高い技術だけでなく、優れたクラフトマンシップも持ち合わせていました。
さまざまなアーティストとコラボレーションを展開
ジェンセンは自身の才能に満足することなく視野を広くもち、才能豊かなデザイナーや建築家とコラボレーションを展開してきました。
「固定概念にとらわれずデザインの幅を広げていく」という彼の信念は、多くのアーティストたちから共感をよびます。
1999年にはジュエリーアーティストの「ジャクリーン・レイバン」がデザイナーとして、2006年には「イヴ・サンローラン」や「ポロ・ラルフ ローレン」などで活躍した「ヤン・シリエク」がクリエイティブ・アーティスティックディレクターを担当。
数々の名作を世に送り出しました。
ジョージ・ジェンセンの代表作4選
ジョージ・ジェンセンのテーブルウェアやジュエリーは、控えめなシルバーの輝きや、さりげない宝石使いが印象的。
デイリーはもちろん、フォーマルシーンにも使える上品さが魅力です。
ここからは、代表的な作品を4つご紹介します。
さり気なく個性が光るムーンライトグレープ
「ムーンライトグレープ」は、ぶどうを連想させる球体をあしらったシリーズです。
大小さまざまな粒がリズミカルに並んでいます。
さりげなく個性が光るデザインは、1900年代初期のアール・ヌーヴォー時代の彫刻的な美しさを彷彿とさせます。
流行に左右されずデイリーからフォーマルまで、さまざまなシーンに対応できるのが魅力的です。
アンティークな雰囲気のムーンライトブロッサム
月明りからインスピレーションを得てデザインされた「ムーンライトブロッサム」。
スターリングシルバーの控えめな輝きが、エレガントかつアンティークな雰囲気を醸しだしています。
落ち着いたブルーのストーンと組み合わせたタイプは、よりクラシカルな印象です。
初期のデザインであるブロッサム
ジェンセンの初期のデザインとなるブロッサムシリーズ。
アール・ヌーヴォーの要素をもつ、彼らしい作品に仕上がっています。
ティーポット・スプーン、トレイなどに施された、マグノリアのつぼみの装飾から、銀細工師としての高い技術が感じられます。
感性が凝縮されたグレープコレクション
ぶどうのモチーフをあしらった、華やかな印象のバー・テーブルウェアのシリーズです。
なかでもワインクーラーは、ジェンセンが得意とするアール・ヌーヴォーの要素が、色濃く反映されています。
置いているだけでテーブルが華やぐ美しい作品たちは、一生ものになるでしょう。
独自のスタイルを確立したジョージ・ジェンセン
デンマークの伝統と、豊かな発想力を融合させたジェンセン。
独自のスタイルを確立し、20世紀の北欧デザイン界を牽引する人物の一人となりました。
ジェンセンが手掛けた立体的な装飾は多くの人を魅了し、現在も世代を超えて愛され続けています。