注文住宅を設計する際、家族同士がゆるくつながりながら、心地よく過ごせる住まいにしたいと考える人は多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、近年注目されている「ヌック」という空間です。
自由設計の注文住宅であれば、個室でなくてもひとり時間を快適に過ごせる、ヌックを含めた空間づくりができます。
この記事では、ヌックを住まいに取り入れる際のつくり方の実例と、活用するためのポイントを解説します。
新しい住まいにヌックを採用できるか、ぜひ検討してみてください。
目次
ヌック(NOOK)とは?
ヌックとは「こぢんまりとした心地よい空間」のことです。
ドアのある個室として区切られた間取りではなく、部屋や通路などの一角に設けられた、小さなスペースを指します。
ベンチ仕様にしたり、隠れ家や秘密基地のような狭い空間をつくったりすることもあります。
ヌックの語源は暖炉横の「腰かけ」
ヌックの語源は、スコットランド語のイングル・ヌーク(Ingle neuk)で、中世石造住宅の暖炉の側に設けた「腰かけ」という意味です。
ヌークは「暖かく心地よい場所」を表しています。
海外の住宅にあるヌックは、夕食で使うダイニングとは別に設けられた、朝食用スペースとして使われています。
日本のヌックは緩やかに区切られた小さな空間
日本の住宅で設置されるヌックは、家族同士の気配を感じながら、小さな空間でひとり時間を楽しむスペースであることが特徴です。
ヌックには場所や使い方によって名称がついているものもあります。
- ダイニングヌック・キッチンヌック:家事の合間にひと休みできるスペース
- リーディングヌック:読書用の小スペース
リーディングヌックは海外の住宅でも採用されることの多い空間で、主に子どもが読書に親しむ目的でつくられます。
ヌックを取り入れるメリット・デメリット
自宅にヌックを取り入れると、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
それぞれを詳しく解説します。
メリット1:ひとりを楽しめる空間をつくれる
ヌックでは、自分の好きなことに集中しやすくなります。
一般的にヌックは、ひとりかふたりで使える程度の狭い空間であるため、環境に影響されにくく、やりたいことに没頭できるでしょう。
ヌックはドアのある個室ではないので、お互いの気配をゆるやかに感じることもでき、他の家族にとっても安心できる空間です。
メリット2:空間にメリハリが生まれる
ヌックは空間を立体的に見せる効果があります。
リビングの一角に小上がりを作ったり、窓辺にベンチを設けたりするなどしてヌックをつくるため、メリハリのある間取りになるからです。
ヌックを取り入れた間取りは、よくある平均的な居室ではなく、個性的でおしゃれな空間になるでしょう。
メリット3:さまざまな目的で使える
ヌックは集中しやすい空間のため、さまざまな目的で使えます。
デスクやコンセントを設置しておけば、書斎やテレワーク用のスペースとして活用できます。
家事の合間に作業する、趣味スペースとしても快適に使えるでしょう。
ヌックを天井の低い隠れ家のように作れば、子どもの遊び場所としても最適です。
デメリット1:設置する費用がかかる
快適なヌックを設置するには、費用がかかります。
間仕切り壁や造作家具、換気設備をつけるとなると、建設費用にプラスして相応の金額が追加されます。
設置場所によっては照明や冷暖房設備が必要となる場合もあるため、費用とのバランスを考慮しながら判断しましょう。
デメリット2:設置する面積が必要
ヌックを設置するには、ある程度の面積が必要です。
広さによっては、居室や収納スペースを圧迫してしまう可能性もあります。
ヌックをどう使いたいかを明確にし、全体のバランスを見ながら設置場所を選択しましょう。
デッドスペースを有効利用することで、他の間取りに影響しないように設置することもおすすめです。
ヌックのつくり方の実例
この章では、ヌックを自宅のどこにつくるか、どうやって使うかを検討されている人に向けて、つくり方の実例を紹介します。
家族が集まる空間の一角をヌックにする
家族が一番使うリビング内にヌックを作れば、家族との距離を程よく取りながら、ゆっくりとヌックで過ごせます。
天井の低い小上がりタイプのヌックなら、テレビを見ている家族の側で、雑誌を読んだり趣味を楽しんだりもできます。
キッズスペースとして使えば、目が届きやすいため、安心して遊ばせられるでしょう。
窓辺をヌックにする
リビングに出窓を設置して、窓の手前に腰掛けられるタイプのヌックをつくるのもおすすめです。
大きめの出窓なら、奥行きをつけてクッションを置けば、幅の広いソファーとして使えます。
奥行きの壁の内側に収納棚をつくると、お気に入りの小物や書籍を置くスペースとして利用できます。
階段下デッドスペースをヌックにする
デッドスペースになりがちな階段の下の空間を使って、ヌックを設置しましょう。
リビング階段なら階段下の形状に合わせて本棚をつくったり、階段下が壁なら奥へ凹ませて小上がりのような空間をつくったりすると、オリジナリティのあるヌックができあがります。
階段の踊り場をヌックにする
階段に踊り場を設け、ヌックとして使うのもいいでしょう。
階段の壁を本棚にして、本棚に挟まれた踊り場の隙間にベンチを設置すると、読書に没頭できるリーディングヌックが完成します。
階段スペースのヌックなら、それほど他の間取りに影響しないため設置しやすいでしょう。
子ども部屋の一角をヌックにする
子ども部屋の一角にヌックを採用すれば、まるで秘密基地を得たかのように、大喜びで使ってくれるでしょう。
おもちゃで遊ぶスペースとしてだけではなく、いずれはデスクや本棚を置いて、集中できる学習スペースとして使うこともできます。
ヌックをつくるときの費用目安
ここではヌックを設置する際の、費用の目安を紹介します。
注文住宅でヌックをつくる場合の費用は、全体の建築費用に含まれて計算されます。
そのため、ヌックの間取りや形状などを施工業者に相談しながら、設置方法を決めましょう。
- ベンチの造作費用 10万円~
- 小上がりの造作費用 3畳程度で15万円〜
- 間仕切りを新設する費用 1つの壁につき20~30万円程度
ヌックを活用するための5つのポイント
ヌックをうまく活用できず、後悔したという声もあります。
そこでこの章では、ヌックを長く活用するためのポイントを5つ解説します。
1:過ごし方をイメージしておく
ヌックをつくる際には、誰がどう使うのかなど、ヌックでの過ごし方をイメージしておきましょう。
ヌックは目的なく設置すると、時間の経過とともに使わなくなり、物置になってしまうという失敗例もあります。
デッドスペースがもったいないからという漠然とした理由ではなく、
など、はっきりと目的を持って設計しましょう。
2:メリハリをつけてゾーニングする
ヌックはしっかりゾーニングすることで、使い勝手がよくなります。
中途半端な空間だと何にも使えず、最終的にはただの収納場所になる可能性があります。
ヌックを使いやすいメリハリのある空間にする、方法をいくつか紹介しましょう。
ヌックのスペースを主張させることで、使用目的のある空間になり、長く活用し続けられるでしょう。
3:こぢんまりとした居心地よいサイズにする
ひとり時間を楽しめるヌックにするためには、広さは大体2〜3畳くらいを目安にするといいでしょう。
落ち着いた空間でゆっくり過ごしたり、好きなことに集中したりするには、広すぎず狭すぎない空間が最適です。
4:換気や日当たりに気を配る
ヌックは狭い空間のため、換気口や空調設備が採用できないことが多く、間取りによっては日当たりもほとんどないこともあります。
そのため湿気対策として、換気や日当たりに考慮した設計をおすすめします。
三方が壁になっている場合は、窓に近い面を入り口にしたり、小さな窓をつけたりして、風通しや採光に気を配りましょう。
5:照明で落ち着いた雰囲気をつくる
窓のない廊下や階段などに設けたヌックの場合、落ち着いた雰囲気づくりをするためには、おしゃれな照明が欠かせません。
間接照明などで静かなくつろげる場所として演出すると、家族の誰もが使いたくなる空間になるでしょう。
ヌックを長く愛される場所にするためには、使い勝手の工夫だけではなく、おしゃれな空間にすることも必要です。
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ヌックを取り入れて家族で楽しめる空間を作ろう
ここまで、ヌックを住まいに取り入れる際のつくり方の実例と、活用するためのポイントを解説してきました。
注文住宅ならば、家族にとってちょうど良いサイズでヌックを取り入れられます。
使っている家族の姿をイメージしながら、理想的なヌックを設計し、心地いい住まいを手に入れましょう。
開放感とは対局の空間ですが、こぢんまりしたヌックは、その狭さが心地よく感じられるのです。