北欧を代表する家具メーカー「CARL HANSEN&SØN(カール・ハンセン&サン)」。
ハンス J. ウェグナーをはじめ、名だたるデザイナーや建築家と協働し、世界に誇る美しいデザインの家具を生み出してきました。
今回「OPEN CRAFT STUDIO(工房見学会)」に参加してきました。
今回特別に招待されたTIMBER YARDのスタッフが、体験の全貌を詳しくレポートします。
目次
倉庫群の一角にあるカール・ハンセン&サンの工房へ潜入!
2023年11月1日、TIMBER YARDのスタッフは、本邦初公開となるカール・ハンセン&サンの工房を訪れて見学しました。
カール・ハンセン&サンの工房があるのは、複数の倉庫が立ち並ぶ東京モノレール「流通センター駅」の近く。
こちらのスペースにはオフィス・倉庫・工房の役割があり、家具在庫の保管や修理が行われています。
使い込まれたチェアのペーパーコード張り替えやメンテナンスを対応しているそうです。
こちらは工房で働く職人さんたち。
メンテナンス時の組み立てやメンテナンスはすべてプロによる手作業で行われるというのだから驚き!
今回はカール・ハンセン&サンの初の試みとして行われる工房見学会。
見学会では、実際にお客様から修理依頼のあったチェアを受け取り、メンテナンス・修繕していく貴重な過程を間近で見られます。
修理品の到着後にはまず検品が行われ、再加工が必要ないか確認が入ります。
再加工が必要なものは分解し、丁寧に糊付けを行い一日保管。
その後にペーパーコードの張り替えを行います。
まずはペーパーコードの取り外しからスタート
修理工程は検品作業から始まります。
写真の修理品は、実際にお客様から届いたCH24。
長年使ってきたものなのか、座面のペーパーコードが乱れているのがわかります。
まずは古いペーパーコードの取り外しを行います。
ゴミ箱の上にチェアを固定して、手際よくペーパーコードを切っていきます。
丁寧に切り落としたペーパーコードはそのままゴミ箱へ。
家具のパーツが傷つかないように細心の注意を払いつつ、細かい部分は丁寧にカット。
職人さんの技術が光ります。
あっという間にフレームだけになったCH24。
作業が完了したら、各パーツの汚れを丁寧に拭きながら、フレームに修理が必要な箇所がないか確認します。
今回の修理品は経年劣化による歪みが見られたので、分解して修理することに。
接合部分に新しく糊を入れるために、丁寧にフレームを分解します。
手際よく分解していく様子に思わず見惚れてしまいました。
分解したCH24の糊入れ作業を見学
次の工程は、分解したCH24のメンテナンスと組み立て作業です。
張り替えの前にあらかじめフレームを外し、改めて糊入れしながら丁寧に補修していきます。
絶妙な力加減と感覚が必要になるはめ込み作業も、経験を積んだ職人の手にかかればお手のもの。
角度を微調整しながら、糊入れした部分をはめていきます。
糊が定着するまでに時間がかかるため、専用の工具を使ってフレームを固定。
ベルトと工具で固定したまま倉庫で管理します。
ペーパーコードの張り替え作業を見学
続いてはペーパーコードの張り替え作業を見学しました。
CH24の張替え専用の治具に乗せて固定します。
張り替えにはかなりの力が必要なので、動かないようにチェアの貫き部分をしっかりと押さえておく必要があるのだとか。
ちなみに治具の下には、重りとしてダンベルが置かれていました。
ちなみに一脚のCH24には、なんと約150mものペーパーコードが使用されるとのこと。
張り替えの様子を観察していると、見えないところに結び目が来るように考えて作業していることに気が付きました。
座面からは結び目が一切見えない美しい仕上がりは、長年の張り替えで経験を積んだ職人ならではの技術の結晶です。
手際の良い作業に見惚れているうちに、張り替え作業もいよいよ終盤に。
すでに隙間なく張り詰められた座面に見えますが、職人さんいわく「まだ入る」とのこと。
工具を使用してペーパーコードを寄せながら、寸分の隙間なくきっちりと張っていました。
職人技を間近で見られて大満足です!
ちなみに張り終わったペーパーコードの末端は、前座面の裏側にタッカーで固定されています。
もちろん座面からは全く見えません。
張り替えが完了したCH24がこちら。
張り替え前の座面と比べると新品同然です!
ペーパーコードが交差する部分は、均等に力を加えないとジグザグになってしまうので、上手く仕上げるのが難しいところ。
職人さんはやはり美しく張られていました。
熟練の職人さんでも、一脚のCH24を張り替えるのにおよそ70分ほどかかっていました。
時間だけ聞くといまいちピンときませんが、この後実際に張り替えを体験してみると、座面を一周分張るのでも精一杯!
常に強い力をかけつつ、均一な力加減で集中を切らさずに70分のスピードで張り替えられるのは、純粋にすごいなと感動しました。
感心しているうちに、もう一人の職人さんもおよそ90分ほどで張り替え作業が完了。
最後に座面裏側に出ている結び目部分を内側に入れ込んで終了です。
二人の職人さんが張り終えたCH24に座らせていただきました。
張りたてのペーパーコードは座り心地が抜群に良く、しっかり体を支えてくれる安心感があります。
張りも均一で、ただ眺めているだけでも美しい…。
まさに職人技を体感できました。
職人監修のもと張り替え作業を体験!
職人さんの張り替えが終わった後は、実際に張り替えの工程を体験させていただきました。
力を入れながら手探りで張ってみるものの、張りの強さが均一ではなかったり、一部の箇所が空いてしまったりと、やはり微妙な仕上がりに。
隙間がないように張るには、相当な修行が必要だと感じました。
ちなみに、ペーパーコードの張り替え職人として一人前になるには、業務開始前後などの空き時間を利用してサンプルで練習し、張り替えを繰り返しながら半年ほどで技術を習得するそうです。
一つ仕上げるのに大体60〜90分ほどかかるので、一日の張り替え脚数は体力的にも4〜5脚が限界なのだとか。
業務量によっては外部委託(元従業員)にも作業を依頼しているそうです。
ものづくりの裏側を覗ける工房見学会
工房見学会では、修理やメンテナンス以外にもさまざまな作業を見学できました。
写真はチェアのがたつきを直す機械。
平らな天板の上にチェアを置くことで、チェアの微妙な歪みを見つけるものです。
歪みを確認した後は、機械に入れ込まれたベルトサンダーで脚先を削って補正を施すそうです。
普段は公開されない空間だからこそ見られる貴重な光景です。
倉庫と工房はとても綺麗に整理されていて、それぞれが作業しやすいように効率的な動線が作られていました。
毎日多くの検品や修理をこの倉庫のみで捌けているのにも納得です。
今回工房を案内してくれた職人さんたちはみな優しく、丁寧なお人柄でした。
製品に対しても細やかな対応をされていて安心感があります。
体験させていただいた張り替えの工程は、実際に見ているよりもさらに力が必要で、ペーパーコードの強さと職人さんの卓越した技術力を実感しました。
すべての家具は日々のメンテナンスを怠らずに行ったとしても、永く使っていると少しずつ不具合が出てくるもの。
カール・ハンセン&サンの張り替えや修理の作業を見学することで、お気に入りの家具を安心して使い続けられる秘密がわかりました。
ものづくりの裏側を支える職人たちの技術と情熱を体感できる、とても有意義な工房見学会でした。
カール・ハンセン&サンで生み出される至高のプロダクトを、ぜひこれからもチェックしてみてください。
洗練された北欧家具やインテリア雑貨を扱うTIMBER YARDは、「CARL HANSEN&SØN(カール・ハンセン&サン)」の正規代理店。
豊富な家具シリーズの取り扱いはもちろん、修理やメンテナンスなど、購入後のアフターフォローも充実しています。
張り替えをご検討されている方は、お気軽にTIMBER YARDまでご相談ください。
※正規品のみのご対応となります。
それではさっそく、熟練の職人が織りなす手作業を見てみましょう!