建物の1階を柱だけで支えた「ピロティ」形式は、都心の狭小住宅や、眺望のいい敷地に建つ高級住宅などで採用されています。
浮遊感のある個性的な外観デザインや、アイデア次第でさまざまに活用できる屋外空間がピロティの魅力です。
しかし、実際にピロティを採用するなら、メリットだけでなくデメリットや設計上の注意点も知っておきたいものですね。
そこでこの記事では、「ピロティ」の特徴や使い方、メリットデメリットについて詳しく解説し、ピロティを取り入れた住宅を設計する際の注意点についてもご紹介します。
ピロティに興味を持っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ピロティとはどんな空間?
「ピロティ」とは、建築の構造を表す言葉のひとつで、2階以上の建物の重みを柱だけで支えた吹き放し空間のことを言います。
その始まりは、世界的に有名なフランスの建築家ル・コルビュジェがパリ近郊に建てた住宅「サヴォア邸」までさかのぼります。
建物が地面から浮いているようなピロティ形式は、建築デザインとして画期的なものでした。
斬新なデザイン性だけでなく、1階に多目的に使えるオープンな空間ができるという実用的な側面からも支持され、世界中に広まるようになりました。
ピロティはどう使う? 住宅や別荘での活用方法
住宅や別荘で採用されるピロティは、どのように使われているのかを見ていきましょう。
愛車を守るインナーガレージ
ピロティの最も一般的な使い方は、駐車場に使う方法です。
建物の2階部分が屋根がわりとなり、愛車を雨や紫外線から守ってくれます。
時には愛車のメンテナンスをしたり、洗車をしたりするなど、カーライフを楽しむ空間としても活躍します。
また、敷地面積が限られる都心エリアの住宅では、土地を有効活用して駐車場を確保し、日当たりや風通しのいい2階部分に居住スペースを設けられるメリットも生まれます。
屋外のセカンドリビング
ピロティにテラスやウッドデッキを設け、セカンドリビングとして使う方法もおすすめです。
風の吹き抜ける気持ちのいい屋外でランチを食べたり、家族とバーベキューを楽しんだり。
屋根があるピロティなら、日差しを避けながら、気軽にアウトドアを楽しめます。
気軽に使える子供のプレイスペース
敷地内にあるピロティは、子供たちのプレイスペースとしても最適です。
日差しや雨を気にせず、たっぷり体を動かして遊ばせることができます。
目の届く範囲だから、飛び出しなどのリスクも少なく、安心。
雨の日はもちろん、暑い夏の日のプール遊びにも役立ちます。
広がりのある玄関アプローチ
柱だけで構成されるピロティは、エントランススペースとしても魅力的です。
単に駐車場の奥が玄関となってしまわないよう、床面の仕上げや玄関との位置関係を計画し、訪問者をワクワクさせるような演出をしましょう。
ピロティを取り入れる4つのメリット
デザイン性や実用性など、さまざまな角度から、ピロティを取り入れるメリットをご紹介します。
代表的なメリットは以下の4つです。
一つひとつ、詳しくご紹介します。
浮遊感のあるスタイリッシュな外観が実現する
細い柱で建物を持ち上げたような浮遊感のある外観デザインは、とても軽やかでスタイリッシュ。
この高い意匠性が、ピロティを採用する大きなメリットです。
印象的な建築デザインを求める方にとっては、魅力的な選択肢の一つとなり得るでしょう。
多目的に使える屋外空間が生まれる
先ほどお伝えしたように、ピロティは多目的に使える半屋外空間です。
駐車場として実用的に利用するだけでなく、セカンドリビングやプレイスペースとして活用できる場所があることは、家で過ごす楽しみを広げてくれます。
生活空間のプライバシーを保ちやすい
ピロティを取り入れた住宅では、主に2階以上が居住空間となります。
周囲の視線が気にならない2階以上のスペースなら、プライバシーを確保した暮らしが可能に。
大きな窓を設けカーテンを開けたまま過ごせるので、日当たりや景色を楽しむ暮らしが実現します。
容積率の制約を受けにくい
容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合で、敷地ごとに上限が定められています。
周囲を壁で囲まれていないピロティは、延べ床面積に参入されないため、容積率の制約を受けません。
そのため、間取りや設計の自由度がアップ。
容積率を最大限利用して、住まいを設計できます。
ピロティを取り入れる3つのデメリット
多くの魅力を持つピロティですが、もちろんデメリットもあります。
事前にデメリットも把握しておけば、ピロティを導入するかどうかも判断しやすくなります。
主なメリットは次の3つです。
- 耐震性が低くなる
- 1階の床面積がコンパクトになりやすい
- 階段利用が負担になることがある
耐震性が低くなる
ピロティ形式の建物は、耐震性が低くなりやすい点がデメリットです。
2階以上の建物の重みを支える1階部分は、通常、柱と壁で重さに耐え、地震などの揺れに対抗するように設計されます。
しかし、ピロティは柱だけで2階を支えるため、構造的にどうしても弱くなってしまいます。
建物の強度を高めるため、木造以外の構造を採用することも多く、その場合は追加費用が必要となることも知っておきましょう。
階段利用が負担になることがある
一般的なピロティ形式の住宅では、2階以上が生活空間になります。
そのため、階段の昇り降りが負担になる心配があります。
若いうちはともかく、年齢を重ねると感じ方も変わります。
将来に備え、ホームエレベーターを設置する、1階だけで生活が完結する間取りにしておくなど、対策をしておくと安心です。
ピロティを設計する際の注意点
メリットデメリットを踏まえ、設計上の注意点についてもお伝えしておきます。
床面積の参入条件を正しく判断する
周囲を壁で囲まれていないピロティは、基本的には床面積に参入されません。
容積率の制約を受けずに設計できるため、特にコンパクトな敷地では有利になります。
ただし、一部を壁で囲んだり居住スペースと合わせて設計したりすると、床面積として参入する部分が出てきます。
床面積へ含むかどうかで容積率にも影響しますので、法律的な判断を正しくできる設計士と計画を進めましょう。
耐震性を考えた構造にする
ピロティの場合は、耐震性に十分配慮した設計が求められます。
強度を確保するため、ピロティのある1階部分は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造とすることが一般的です。
この場合は、強度を確認するための構造計算が必須です。
ライフスタイルに負担がないか検討する
デメリットでもお伝えしたように、ピロティのある住まいでは階段利用が多くなります。
今は元気でも、年齢を重ねると負担に感じる可能性もあります。
将来のライフスタイルも含め、本当に負担がないか慎重に検討しましょう。
ピロティのある住まいで、屋外空間をもっと豊かに
ピロティのある住まいは、軽やかな外観デザインや豊かな屋外空間が魅力です。
メリットデメリットを踏まえ、敷地の条件に合わせて効果的に取り入れましょう。
戸建て住宅では、ピロティによって生まれる1階の屋外スペースを駐車場や庭として活用するほか、2階からの眺望を生活空間に組み込むために、あえてピロティを採用するケースも見られます。