「基礎工事」は、一から家を作るうえで非常に重要なキーワードです。
この記事では、どんな建物にも必要になる基礎工事の手順や種類、知っておいたほうが良い基本知識などについて解説します。
特にマイホーム建築においては住宅性能を左右する重要ポイントになるので、注意深くチェックしておきましょう。
目次
基礎工事とは?その役割や特徴を解説
基礎工事の種類は、大きく分けて「ベタ基礎」「布基礎」「SRC基礎」の3つに分けられます。
それぞれの工事の詳細や特徴について詳しく解説していきます。
ベタ基礎
現在の日本においてもっとも一般的な基礎工事のうちのひとつです。
家の床下部分全体にコンクリートを流し込んで作る基礎であり、そのコンクリートまで鉄筋が入っています。
シロアリの侵入を防ぐことのできる基礎工事であり、湿気にも非常に強くなる特徴があります。
建物の重さを基礎によって地面全体にかけていくことができるため、一か所にだけ負担がかかることもありません。
ただこの場合、コンクリートの使用量が多くなり、コストがかかります。
また新築から2年程度の間は水分が出てくることもあります。
布基礎
家の壁に沿うようなかたちでコンクリートを流し込んでいくスタイルであり、以前はこれが主流でした。
コンクリートを使う分量が少ないためコストが安く、一か所に負担がかかりやすい構造であった場合は強さを発揮します。
また、重くないので地盤にかかる負担も少なくて済みます。
一方、このやり方の場合は長期優良住宅に認定されません。
そのため、長期優良住宅が受けられる恩恵(不動産所得税などの優遇措置)の対象外となります。
SRC基礎
従来のやり方とは異なり、「そもそも床下を持たない」という構造です。
床下全体をコンクリートと砂利で埋めていくため、湿気やシロアリや床下浸水が発生することがありません。
また地震にも強いというメリットがあります。
ただし工程が多くなるため、施工までには時間がかかります。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。そのため、知識をつけたうえで、「どの基礎工事を選ぶか」を検討していくことが必要です。
期間や流れを知っておこう!基礎工事の工程
ここからは、基礎工事を行う工程についてみていきましょう。
なお基礎工事は早い場合では1週間程度、通常は1ヵ月程度かかるとされています。
ただ、期間には余裕を持ち、1ヵ月半ほどはかかると考えておいた方が安心です。
1:地縄を張る(遣り方工事)
基礎工事の初期の段階です。
まずは縄を張り、「ここからここまでで建物を作るよ」という目印を設けます。
今では慣用句として使われている「縄張り」という言葉は、ここからきています。別名で「遣り方工事」とも呼ばれます。
2:掘削工事
「根切り」とも呼ばれます。
基礎を入れるために、土を掘り起こす工程をいいます。
パワーショベルなどの重機が登場するのはこのタイミングです。
3:砕石を敷く
砕いた石を「砕石(さいせき)」といいます。
この砕石を敷いていくのが、3つめの工程です。
今は行う人も少なくなってきましたが、地鎮祭で使われた「鎮め物」はこのときに埋められます。
4:捨てコンクリートを流す
「コンクリート」は基礎工事の基本となるものですが、ここの工程で使われるコンクリートは目印をつけるために使われるものです。
これを流し込んで、その後に基準線を引いていきます。
5:鉄筋を組む(配筋)
鉄筋を組んでいきます。
一般的に私たちが「基礎工事」と聞いてイメージするのはこのあたりかもしれません。
家の基礎をつくるときに非常に重要になってくる工程です。
ちなみにこの基礎工事が終わった段階で、有資格者によって、床下基礎の検査が行われます。
6:型枠を組んでコンクリートを流す
型枠を組んでいきます。
この型枠があるおかげで、流し込んだコンクリートが流れ出ていくことを防げます。
7:型枠を外して、仕上げ&完成
型枠を外して、仕上げをしていきます。
その後に、勝手口などのコンクリートを流し込むなどして完成です。
基礎工事で気になる疑問を解決!
ここからは専門家の意見を交えて、「よくある基礎工事の疑問」について答えていきます。
基礎工事の費用はどれくらい必要?
まず、「基礎工事の費用はいくらくらいか」についてみていきましょう。
これはだいたい「120万円~150万円程度」だといわれています。
ただしこの数字は、「どのような家か」「建築会社はどこを使うか」によっても変わってきます。
そのため事前に見積もりをとることが重要です。
基礎工事中に雨が降っても大丈夫?
「基礎工事の最中に雨が降ったら、コンクリートが傷むかもしれない」と不安に思う人もいるかもしれません。
しかしこの点については、実は心配は不要です。
なぜなら基礎工事に使われているコンクリートは、”化学反応で固まる”ものだからです。
乾燥したから固まるというものではありませんから、雨が降っても影響はないのです。
なお、基礎工事の最中にブルーシートがかけられているのは、雨への対策ではありません。コンクリートを乾燥から守るためです。
コンクリートを流し込んでいるときに雨に降られた場合は、影響が及ぶ可能性は否定しきれません。ただし影響が出るような量の雨に降られる可能性は非常に低いので、気にしすぎる必要はないでしょう。
欠陥が心配?定期的に現場見学しよう
「欠陥が心配だから、基礎工事をしている様子を見学しよう」と考える人もいるかもしれません。
しかし実際のところ、建築学を専門に学んだ人でもない限り、今現在行われている基礎工事が適切なものであるかどうかを見極めることはできないとされています。
ただそれでも、基礎工事を施主が見に行くことには意味があります。
「この施主さんは、工事や家に興味があるのだな」と知れば、それだけ職人のモチベーションが上がります。
また見学をしにくる施主の場合、当然職人もより丁寧に対応しようとするでしょう。
このため、たとえ専門的な知識がなかったとしても、施主が基礎工事の現場に足を運ぶことには大きな意味があります。
基礎工事の前には地盤調査を
最後になりましたが、基礎工事を行う場合には必ず「地盤調査」を行いましょう。
地盤調査とは、土地の強度を調べるための検査です。
現在はスウェーデン式サウンディング試験というやり方がよくとられます。
費用は高くても30万円程度ですが、地盤調査の結果が思わしくなかった場合は地盤改良工事が必要です。このための費用は、ケースによって異なりますが150万円程度とされています。
基礎工事をしっかりして安心できる住まいづくりを
「基礎工事」は、文字通り、家の基礎を組み立てるための工事です。
基礎が弱ければ、上に建った建物がどれほど堅牢なものであろうと災害に耐えることは難しいでしょう。
基礎工事は終わってしまえば私たちの目に直接触れる機会はほとんどなくなるものですが、重要な役目を持つものだということを忘れてはなりません。
費用や特徴を踏まえたうえで、現場に足を運ぶなどして、基礎工事に向かい合いましょう。