「鉄骨造」「S造」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
鉄骨造は木造住宅と並んで日本では一般的な建造方法であり、さまざまなメリットがあります。
「家を建てるなら木造一択!」というかたも、ご自宅に求めるものによっては鉄骨造の方が良いかもしれません。
この記事では、鉄骨造のくわしい内容や他の建築構造との違いについて、ご説明いたします。
目次
知っておきたい建物構造の種類と特徴
日本住宅で使用する家の基本材料は、主に4種類あります。
- 木
- 鉄骨
- 鉄筋
- コンクリート
それぞれ4つの材料で作られた住宅は、コストや強度などに差があります。
戸建てやマンション、アパートを建てるときにどの材料が適しているのか、目安となる違いをご紹介いたします。
木造(W造)
木造建造は、日本ではポピュラーな建築構造です。
一軒家やアパートなど、面積や高さのない建物で用いられる場合が多いです。柱、梁(ハリ)といった躯体部分に木材を使用しています。
木造建造の魅力は、通気性の良さとコストパフォーマンスの良さにあります。
日本は島国で湿気の多い地域です。調湿性に優れた木を使った建造は日本の土地に合っており、古くから親しまれてきました。
また木材は鉄材に比べて安価なのもメリットの一つ。
建造料の価格を抑えたい場合にも適しています。
一方で通気性の良い木材は、温めた空気をとどめておくことが苦手です。そのため木造建造には、温まりやすく冷めやすいという特徴があります。
また、木そのものは耐火・防音・耐震性には優れておらず、鉄骨や鉄筋を使用した住宅に比べて、安全面で不安が残ります。
しかし柱や梁の表面を耐火材で包んだり、壁に防音・耐震の工夫を施したりすることで、これらの不安はある程度、解消できるでしょう。
鉄骨造(S造)
木造の次に住宅に多く用いられるのが、鉄骨造です。
スチール(鉄)の頭文字のSを取り、「S造」と表現することもあります。
木造建造が柱や梁を木で作るのなら、鉄骨造はそのまま同じ部分が鉄骨になったイメージです。
マンションやビルなど大きな建造物に使われることが多かったですが、近年では一般住宅でも鉄骨造を選ぶ人が増えています。
木造建築に比べ、耐震性・耐火性・防音性に優れています。
鉄筋コンクリート造(RC造)
鉄筋コンクリート造は、その名のとおり、鉄筋とコンクリートを組み合わせた建造方法です。
- 鉄筋で柱や梁といった躯体の芯となる部分を組み立てる
- そのまわりをベニヤなどで囲む
- しっかりベニヤを固定したらコンクリートを投入
- コンクリートが乾いたら、ベニヤ板を剥がす
大まかではありますが、基本はこの流れで鉄筋コンクリート建造が完成します。
コンクリートは引っ張る力に弱く熱に強い、鉄筋は引っ張る力に強く熱に弱い。
それぞれの弱点を補うことで、引っ張る力にも熱にも強い建築ができる、という仕組みです。
防音性・耐震性・耐火性に優れており、マンションやビルで多く用いられています。
一方で通気性が悪くコストが高くなる、さらにリフォームが容易ではないといった弱点があります。
鉄骨鉄筋コンクリート造 (SRC造)
鉄筋鉄骨コンクリート造とは、外側から「コンクリート」→「鉄筋」→「コンクリート」→「鉄骨」で構成された建造方法です。
4つの建造方法の中でもっとも性能が高いですが、そのぶんコストも高く、工期も長くなります。
柱や梁も太くなるため、面積の狭い一般住宅やアパートには不向き。
一般的にはタワーマンションや高層ビルなどで多く用いられています。
SE構法
SE構法とは、強度の高い木材を頑丈な金物で固定する耐震性に優れた建造方法です。
高品質な木材を組み合わせる木造構法の一種で、高度な構造計算によって最高クラスの耐震性・耐久性を誇っているのが特徴です。
柱・梁・接合金物で強度を担保するので、建築において必須となる壁面を無くせるのが魅力。
ほかの構法では実現しにくい特殊な間取りや大空間を実現できます。
木造の優しい素材感を味わいつつ自由度の高い設計を楽しめるので、注文住宅において特に人気の高い構法となっています。
鉄骨造(S造)とは?
近年、一般住宅でも取り入れられるようになった鉄骨造について、掘り下げてみましょう。
鉄骨造、とひとことで言われてもどんなものかイメージしにくいかもしれませんね。
クレーン車などが、赤い鉄の柱を持ち上げている工事現場を見たことはないでしょうか?
鉄骨造で使われる柱は、あのような赤い柱が多いです。ちなみに赤は、錆止めペンキの色です。
鉄骨造は鉄本来の強度が特徴であり、耐久性・耐震性に優れています。
それでいて木造と同等程度の工期で建築が済み、鉄筋コンクリート造よりも安価です。
しかし鉄骨は重いため、地盤がしっかりした土地でないと建設はできません。もし地盤が適していない場合は、補強をするといった対策が必要になります。
鉄骨造の耐用年数目安は?
鉄骨造の耐用年数は、19年〜34年です。
しかしこの数字は、法定耐用年数と呼ばれる「税法上」で定められ年数。
つまり、法律が「19年〜34年までは資産として価値があるよ」と定めたものであり、実際の耐用年数ではありません。
鉄骨造の住宅は、丁寧にメンテナンスを行った場合50〜60年は持つとされています。
鉄骨部分だけなら、100年以上持つことも珍しくありません。
鉄骨に限らず、住宅は劣化を感じる前、遅くても劣化を感じた時点で、適切な改修・リフォームをしてあげることが大切です。
鉄骨造(S造)の2種類構造とその特徴
鉄骨造の家には、ラーメン構造とブレース構造の2種類があります。
それぞれの違いについて、見てみましょう。
ラーメン構造
ラーメンとは、中華料理のあの麺料理のことではありません。
ドイツ語で「枠」という意味があります。
ラーメン構造は、地面に立てた柱に対して、水平に梁を巡らせた構造のことです。
ジャングルジムを思い浮かべると、わかりやすいのではないでしょうか。柱と梁の部分を溶接して繋げているため、接合部分は強固。
揺れが発生してもしなったりずれたりすることもなく、上からの圧に強いのが特徴です。
また、柱と梁だけでがっちりと家を支えられる構造なため、壁部分に基礎はありません。そのため、窓や壁などが自由に設計でき、リフォームもしやすいというメリットがあります。
ブレース構造
ブレース構造は、柱と梁の間に斜めに筋交いが入った構造です。
ラーメン構造が柱と梁をがっちり繋げて耐震性を強化しているのに対し、ブレース構造は斜めに入った筋交い部分が揺れを負担します。
また、ラーメン構造に比べて柱と梁の部分が小さくなるため、建物重量が軽くなり、杭や基礎工事にかかるコストも減少します。
軽量鉄骨とは?
鉄骨建造に使われる鉄骨には、軽量鉄骨と重量鉄骨があります。
軽量鉄骨とは、戸建やアパートで使われることの多い材料です。
鋼材の厚みが6mm未満であることが、軽量鉄骨の条件となります。
ブレース構造におもに使われるのは、軽量鉄骨です。
軽量鉄骨のメリット
軽量鉄骨は鋼材が薄い分、重量が軽いです。
そのため住宅全体の軽量化が実現できるため、家を支えるための地盤にかかるコストが減ります。
また、軽量鉄骨はその軽さゆえ扱いやすく、工事もスピーディーです。
少人数でも比較的早く工期が終わることから、人件費のコスト削減にも貢献します。
軽量鉄骨のデメリット
軽量鉄骨での建造は、柱と柱の間に筋交いを作るブレース構造に用いられる場合がほとんどです。
壁の中に軽量鉄骨が入っているため、間取り変更といった大掛かりなリフォームは容易ではありません。
重量鉄骨とは?
重量鉄骨とは、マンションや大型の建造物で使用されることの多い材料です。
鋼材の厚さが6mm以上の鉄骨を指します。おもにラーメン構造の建造物に使われます。
重量鉄骨のメリット
重量鉄骨は厚みがあり頑丈なため、柱の本数が少なくても家の強度が保たれます。
そのため重量鉄骨を用いた建造物は、大きなリフォームがしやすいです。
壁一面窓、といった大胆なリフォームも、重量鉄骨なら実現しやすいでしょう。
重量鉄骨のデメリット
一方でデメリットは、軽量鉄骨造に比べてコストがかかるという点です。
柱1つ梁1つ、それぞれが重たいため、住宅全体の重量が増します。
そのため地盤の改良・基礎の見直しといった費用が追加で発生する可能性が高いです。
鉄骨造の防音対策
鉄骨造は使う材料・工法に限らず、壁部分に柱やコンクリートが詰まっているわけではありません。
そのため防音性にやや不安が残ります。
鉄骨造の防音を構造から見直すには、「壁や床にある下地材や断熱材を吸音性に優れたものに変える」という方法があります。
もっと気軽に防音対策をするのであれば、窓に防音フィルムを貼ったり床にラグやカーペットを敷いたりするだけでも、効果を感じるでしょう。
内装デザインを大きく変えたくない方は、スリッパや窓サッシの隙間を塞ぐテープなどの使用もおすすめです。それ以外にもテレビやステレオといった音の出る機械は、「なるべく音漏れをしてほしくない場所から離す」といった方法も効果的です。
重視するポイントに合わせて建物の構造を検討しよう
建物の建造方法はさまざまです。
- コストや建てやすさ求めるのなら「木造」
- 耐久性や耐震性を求めるのなら「鉄構造」
- 自由度の高い設計を楽しむなら「SE構法」
というふうに、重視するポイントに合わせて選ぶ必要があります。
ご自身が家に何を求めるのか、はっきりさせてから建物の構造を決めると良いですね。