一口に北欧家具といってもブランドの成り立ちには、さまざまな歴史的背景があるのを知っている人は多くはないでしょう。
家具メーカーは2つのタイプに分けられ、それぞれに異なる特徴があります。
この記事では、北欧家具におけるキャビネットメーカーとファニチャーファクトリーの違いや歴史について、詳しく解説します。
目次
家具メーカーは2つのタイプに分けられる
家具メーカーのタイプは大きく分けて、2種類あります。
- キャビネットメーカー
家具職人による小ぢんまりとした家具工房 - ファニチャーファクトリー
近代的な機械を活用し、スムーズに量産
この章では、2種類の家具メーカーについて、それぞれの特徴を説明します。
小規模な家具工房キャビネットメーカー
キャビネットメーカーは、英語で「家具職人」を意味する言葉です。
名前のとおり、職人による小規模な家具工房を指します。
伝統的な手仕事によるクラフトマンシップをベースにしながら、木製の家具の製作をおこなっていました。
日本でいう「伝統工芸」に近いものです。
職人を育成する環境が整っていたデンマーク
デンマークでは木工マイスター制度が定着しており、職人を育成する環境が整っていました。
マイスター制度による木工技術の取得と、家具職人組合による工房経営に必要な知識の勉強といった、バランスの良いシステムが存在していたのです。
この制度が土台となり、伝統的で質の高い家具作りが受け継がれてきました。
また家具デザイナーや建築家と、職人がコラボレーションした「キャビネットメーカーズギルド展」もおこなわれ、数多くの名作誕生につながりました。
北欧家具の歴史に影響をあたえたキャビネットメーカー
代表的なキャビネットメーカーとしては、
- オーレ・ヴァンシャーなどの家具を手掛けた「A .J.イヴァーセン工房」
- ウェグナーの名作を多数製作した「ヨハネス・ハンセン工房」
- 家具職人およびデザイナーのどちらも優秀な「ヤコブ・ケア工房」
残念ながら現在は、ほとんどの家具工房が廃業していますが、北欧家具の歴史に大きな影響をもたらしました。
効率的に量産をおこなうファニチャーファクトリー
キャビネットメーカーとは対照的な、ファニチャーファクトリー。
機械を活用してスムーズに量産をおこなうのが特徴です。
キャビネットメーカーの手作りの家具よりも手の届きやすい価格帯なので、一般市民や海外市場からも需要がありました。
キャビネットメーカーによる家具作りから量産へ
18世紀後半に産業革命の風潮がイギリスから始まり、その他のヨーロッパ諸国やアメリカ、日本などにも広がりました。
その影響で当時ヨーロッパでは工業化が進み、質の低い製品が出回りました。
19世紀後半から20世紀の初めにかけて、デンマークにも産業革命の波は広がりますが、あまり浸透しませんでした。
1970年代頃まではキャビネットメーカーによる家具作りが盛んで、伝統的な手仕事を中心としたクラフトマンシップが定着していたのが理由です。
20世紀前半になると、第一次世界大戦の戦争特需などをきっかけに、機械を用いたスムーズな量産へと移行。
ファニチャーファクトリーは、家具デザイナーや建築家とタッグを組み、使い心地の良さとデザイン性を兼ね揃えた家具の製造をおこないました。
現在人気のファニチャーファクトリーを紹介
キャビネットメーカーによる家具作りが衰退したあと、ファニチャーファクトリーでの製作が主流になりました。
ここからは、現在も人気の高いデンマークのファニチャーファクトリーを3つご紹介します。
北欧デザインを象徴する老舗メーカーフリッツ・ハンセン
「フリッツ・ハンセン社」は1872年、家具職人である「フリッツ・ハンセン」によって創業されました。
世界をリードするデザイナーや建築家とのコラボレーションが魅力です。
1950年代には建築家およびデザイナー「アルネ・ヤコブセン」との共同開発が本格的にスタート。
「セブンチェア」や「アントチェア」といったブランドを象徴する名作が誕生し、北欧デザインを代表する家具メーカーとして大きく成長しました。
モーエンセンの作品が強みのフレデリシア・ファニチャー
1955年に設立された「フレデリシア・ファニチャー」。
デンマークデザイン界の巨匠「ボーエ・モーエンセン」や、女性デザイナー「ナナ・ディッツェル」などとのコラボレーションで知られています。
創業者の「アンドレアス・グラバーセン」が、経営が傾いていた椅子メーカーを買収したことから始まりました。
ボーエ・モーエンセンをデザイナーに起用したことで、一気に業績が回復。
1959年に発表されたモーエンセンの代表作「スパニッシュチェア」はブランドの顔となっています。
1993年にはナナ・ディッツェルがデザインした「トリニダッドチェア」が高く評価されるなど、北欧デザイン界の歴史に残る数々の名作を発表しています。
ウェグナーとの共同開発で知られるカール・ハンセン&サン
「カール・ハンセン&サン」は世界を代表するデンマークのメーカーです。
木工マイスターのカール・ハンセン&サンが、1908年にデンマークのオーデンセに工房を開いたのが始まりです。
1920年代後半よりデザイナーとのコラボレーションがスタート。
1949年より「ハンス J. ウェグナー」とのパートナーシップが始まり、1950年に世界中に多くのファンをもつ傑作「Yチェア」を発表しました。
カール・ハンセン&サンの優れた技術力により、数々の名作の誕生と世界中への提供が実現しました。
北欧家具の知識を深めて「好き」に磨きをかけよう
今回は、北欧家具におけるキャビネットメーカーとファニチャーファクトリーの違いについて詳しくご紹介しました。
それぞれの特徴や歴史的背景を知ると、より北欧家具に関心が深まります。
興味がある方は、ぜひお気に入りの家具について知識を深めてみてくださいね。