家づくりをする際に「防火地域」や「準防火地域」という聞きなれない言葉を耳にすることがあります。
これは建物が密集している地域で、万が一火災が発生した際に延焼しないよう、建物に制限を設けている地域のことを言います。
今回は、これらの地域で家を建てる際、どのような制限があるのか詳しく解説します。
これから家づくりを検討している方はぜひチェックしてみてください。
目次
防火地域・準防火地域とはどの地域のこと?
防火地域・準防火地域は、建物が密集している地域において、万が一の火災が延焼しないようにという目的で「都市計画法」に定められています。
建物が多くある駅前や、幹線道路付近エリアなどの多くは、この防火地域や準防火地域に含まれています。
建物が多くある地域では火災が延焼しないように、幹線道路沿いは火災などの緊急時に消防車や救急車など緊急車両の走行を妨げないようにという目的で制定されています。
防火地域
銀行・役所・交通ターミナルなど、生活する上で必要な機能が密集している中心市街地やその周辺の幹線道路周辺エリアは「防火地域」に指定されます。
特に、東京都や大阪府などは防火地域に指定されるエリアが多く、東京都千代田区・中央区においては、区内ほとんどのエリアが防火地域に含まれています。
この防火地域に、3階建て以上の建物や延面積が100㎡以上の建物を建てる場合は、「耐火建築物」にすることが必要です。
耐火建築物は一般的に「鉄筋コンクリート」の建物を指しており、防火地域に建築をする場合は鉄筋コンクリート造にするのが主流でした。
ただ、最近は木造の耐火性能が発展したこともあり、「一定の耐火構造を有している」と国土交通大臣から認定されていれば、木造住宅を建てることも可能です。
準防火地域
「準防火地域」は防火地域の外側に広がるエリアのことを言います。
防火地域と比べると建物に関する制限はゆるく、4階建て以上の建物または延面積が1,500㎡以上の建物を建てる場合は「耐火建築物」にしなければなりません。
延面積が500㎡以下の場合は、一般的な2階建て木造建築と、防火に関する基準を満たしていれば3階建て木造建築を建てることが可能です。
ただ、その場合にもいくつか制限があり、木造2階建てと平屋に関しては軒裏や外壁などを防火構造にしなくてはならず、木造3階建ての場合は外壁開口部分の構造と面積に一定の基準が設けられています。
地域別に異なる制限の内容とは?
東京都に関しては、他の地域と比べて建物が密集しているエリアが多く、防火地域・準防火地域だけでは区別するのが難しいため、他にも規制が定められています。
そのひとつが2013年に定められた「東京都建築安全条例に基づく新たな防火規制」で、この条例で定められた地域を「新たな防火規制地域」と呼びます。
また、建築基準法で定められた、「法22条区域」というエリアでは、燃えにくい外壁や屋根を使わなくてはならないという規定もあります。
これらは、制限の度合いや内容が異なるため、自分の地域がどのエリアに含まれるか判断するためにも内容を理解しておくことが大切です。
防火地域の建築制限
「防火地域」は建築に関する制限が最も厳しく、
- 延床面積100㎡以下の場合3階以上の建物は耐火建築
- 1・2階の建物は耐火建築や準耐火建築
にしなくてはなりません。
延床面積100㎡以下 | 延床面積100㎡以上 | |
3階以上の建物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
1・2階の建物 | 耐火建築物・準耐火建築物 | 耐火建築物 |
新たな防火規制区域の建築制限
「新たな防火規制区域」の建築制限は、防火地域の制限に次いで厳しくなっており、
- 延床面積500㎡以下で4階以上の建物
- 延床面積500㎡以上の建物
は全て耐火建築にしなくてはなりません。
延床面積500㎡以下 | 延床面積500㎡以上 1500㎡以下 | 延床面積1500㎡以上 | |
4階以上の建物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
1〜3階の建物 | 準耐火建築物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
準防火地域の建築制限
「準防火地域」で家づくりをする場合、延床面積500㎡以上であれば耐火建築または準耐火建築にしなくてはなりませんが、延床面積500㎡以下の1・2階の建物の場合は指定箇所に防火処置を施すことで認められる場合があります。
延床面積500㎡以下 | 延床面積500㎡以上 1500㎡以下 | 延床面積1500以上 | |
4階以上の建物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
3階の建物 | 耐火建築物 準耐火建築物 一定の技術基準 | 耐火建築物 準耐火建築物 | 耐火建築物 |
1・2階の建物 | 木造建築は外壁・軒下・開口部 などに一定の防火処置を設置 | 耐火建築物 準耐火建築物 | 耐火建築物 |
法22条区域の建築制限
「法22条区域」で家づくりをする場合は、防火地域・準防火地域・新たな防火規制区域と比べると制限が少ないのが特徴です。
ただ、燃えにくい屋根や外壁を使わなければならないなどの規定があるため、事前に把握しておくことが大切です。
防火地域・準防火地域に建てられる家とは?
防火地域・準防火地域などで家づくりをする場合、延床面積や建物の階数に合わせて耐火建築物・準耐火建築物にしなくてはなりません。
では、耐火建築物・準耐火建築物とはどのようなものなのか解説します。
耐火建築物
「耐火建築物」は鉄筋コンクリート造の建物や、耐火被膜している鉄鋼物が使われた耐火構造の建物のことを言います。
建物の造りだけでなく、
- 窓やドアなどの開口部に防火窓・防火ドアを使用する
- 防火ダンパーがついた換気扇にする
などの規定があります。
一般的な耐火建築物は鉄筋コンクリートですが、木造建築でも耐火建築物にすることは可能です。
ただ、耐火建築物を建てるためには専門知識が必要な上、建築工程が増えることから、工期は一般的な住宅より長くなります。
準耐火建築物
「準耐火建築物」は、耐火被膜している木造住宅や、一定基準の規定を満たしている構造の建物です。
窓やドアなど、開口部の作りは耐火建築物と同じで、防火窓・防火ドアを使用する必要があります。
家を建てる際は防火地域・準防火地域に含まれるか事前にチェック
防火地域・準防火地域などに家を建てる場合、
- 一般的な住宅を造るよりも工期が長くなる
- 費用がかかる
などの注意点があります。
そのため、家づくりを始める前に自分たちの土地が防火地域・準防火地域に含まれるか把握しておくことが大切です。
ハウスメーカーや工務店、不動産会社に依頼すれば調べてもらうことができますが、最近ではインターネットで気軽に調べることもできます。
防火地域に含まれるかどうかで家のデザインが変わる
本記事で解説した通り、防火地域・準防火地域などに家を建てる場合、耐火建築物や準耐火建築物にしなくてはならなかったり、防火窓・防火ドアを設置したりする必要があるため、思い通りのデザインで家づくりができない可能性があります。
また、一般的な住宅と比べて工期が長くなりやすいこと、費用がかかりやすいことを把握しておくことも大切です。
これから土地を探すという方は、希望エリアがこれらの地域に含まれるのか、事前にチェックするようにしましょう。
「調べたい土地名・防火地域」と検索すると都市計画図が出てきますので、ぜひチェックしてみてください。