住宅の断熱工法には、「外断熱」と「内断熱」とがあります。
言葉は知っていても、違いが分かりにくいという方も多いのではないでしょうか。
どちらの工法を選ぶかによって、断熱材を入れる場所や断熱性能が変わり、壁の厚みや住宅のデザインにも影響することがあります。
そこで今回は、外断熱と内断熱の違いや特徴、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
住まいの断熱性能や省エネに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
目次
住み心地をよくするには「断熱」が大切!
家づくりの楽しみや、優先したいこだわりとして挙げられるのは、間取りやデザイン、キッチンなど設備選びでしょうか。
確かに、大切なマイホームを形にするために大切なことですね。
しかし、住み心地にも目を向けた時、大切になってくるのは「断熱性」です。
断熱性の高い住まいでは、家の中のどこにいても室温の差がなく、廊下や玄関が寒いということがありません。
冷暖房の効率も良く、省エネ性能も高まります。
断熱材は壁の中に設置するため、完成すると見た目には分かりません。
そのため、優先順位が低くなりがちです。しかし、間取りやデザインと同じくらい、住み心地に影響する部分です。
断熱工法は、外断熱か内断熱
断熱をする方法としては、「外断熱」と「内断熱」の2つの方法があります。
断熱工法は、建てる地域の気候や、建物の構造、コストなどを総合的に判断して決めていきます。
どちらが特別に優れているわけではないので、メリット・デメリットを含めた特徴を知っておくといいでしょう。
外断熱とは?
外断熱とは、建物の柱の外側に断熱材を張り付け、その上に外壁の仕上げ材を施工する方法です。
「外張り断熱」とも呼ばれます。
建物をぐるりと断熱材で包むようなイメージで、断熱材に切れ目ができません。
ボード状の断熱材を使ってすき間なく施工し、高い断熱性と気密性が特徴です。
柱の外側に断熱材を張る分、外壁の厚みが増えることとなり、敷地や間取りに余裕が必要となります。
内断熱とは?
内断熱とは、建物の柱と柱の間に断熱材を詰め、その外側に外壁の仕上げ材を張る工法です。
「充填断熱」とも呼ばれます。
使用する断熱材の材料には、ボード状や袋に入ったタイプ、吹付などさまざまな種類が使われます。
外断熱と内断熱は、何が違う?
外断熱と内断熱の違いは、次の3点です。
断熱材を入れる場所
まず、断熱材を入れる場所が違います。
外断熱では、構造材となる柱の外側に断熱材を張ります。
一方、内断熱では、断熱材を柱と柱の間に詰めます。
外断熱では、断熱材は切れ目なく設置できますが、内断熱では、柱の部分には断熱材が入らないことに。
そのため、柱の部分が熱を通過させてしまう「ヒートブリッジ」となってしまいます。
冬は外の寒さが室内に入りやすくなり暖房の効きが悪くなる、夏は外の暑さが室内に伝わり冷房が効きにくくなるといった現象が心配されます。
使用する断熱材の種類
使用できる断熱材の種類にも違いがあります。
外断熱 | 柱の外側に断熱材を張り付け、その上に外壁の仕上げ材を固定します。 そのため、使用する断熱材はボード状の発泡プラスチック系のタイプが一般的です。 基礎部分には、現場吹付タイプを選ぶこともありますが、外壁や屋根は断熱材の上に仕上げ材を張るため、表面をフラットに仕上げる必要があり、吹付タイプは選びません。 |
内断熱 | 柱の間に断熱材を充填する工法なので、断熱材の種類は幅広く選べます。 外断熱と同じボード状の発泡プラスチック系、袋に入った繊維系のタイプ、現場で吹き付けるものなど、さまざまな種類を、設置する場所の形状やコストに合わせて選べます。 |
建物の気密性
気密性とは、建物に生じるすき間のことです。
気密性の高い家はすき間が少なく、断熱材の性能を最大限に発揮することができます。
外断熱は、切れ目なく断熱材を施工でき、木造の柱が経年変化で細くなっても断熱材に影響しないため、気密性を高く保つのに有利な工法です。
一方で内断熱は、断熱材の切れ目が生じる上、経年変化で構造柱が細くなった時にすき間ができやすいこともあって、気密性が低くなることがあります。
ただし、断熱材を正確に施工した場合、経年変化による性能の低下はそれほどないとも言われています。
外断熱のメリット
外断熱と内断熱のどちらを選んだらいいのか判断するためには、それぞれのメリット・デメリットを知っておくといいでしょう。
まずは外断熱のメリットからご紹介します。
断熱効果が高い
外断熱は、建物をぐるりと断熱材で覆います。
断熱材の切れ目がないので、外気温の影響を受ける「ヒートブリッジ」が生じず、断熱効果を得やすいのがメリットです。
気密性が確保しやすい
切れ目なく断熱材で包み込む工法は、気密性を高める効果も期待できます。
壁や屋根などの外側から施工するため、ほとんどの施工部分が広くフラットですき間ができにくく、断熱材による気密性が確保できます。
また、経年変化で構造体の柱がやせても、断熱材と柱の間にすき間が発生せず、新築時の気密性能を維持しやすい工法です。
結露が起きにくい
防湿性にも優れており、結露が起きにくいのもメリットです。
壁の中の結露は、断熱材にダニやカビが発生したり、柱が腐食したりする原因となります。
結露が起きにくいことで、建物の寿命も長くなるでしょう。
外断熱のデメリット
次は外断熱のデメリットについてもおさらいしましょう。
主なデメリットは次の3点です。
壁が厚くなる
柱の外側に断熱材を設置するため、壁が厚くなります。
狭小敷地では壁の厚みによって外周部に余裕がなくなることもあり、採用しづらいことがあります。
また、外壁に窓を設置する場合、壁の厚みを感じさせないような納まりの工夫も必要です。
コストがかかる
外断熱では、選べる断熱材の種類に限りがあります。
断熱材の上に外壁を張るため、それほど厚いものは使えず、一定の厚みで十分な断熱性能を持つ高性能の材料を選ぶ必要があり、内断熱より費用がかかります。
外壁の固定強度が弱くなることがある
断熱材の上に胴縁と呼ばれる細い木の材を挟んで、外壁の仕上げ材を固定します。
断熱材の厚みがあるため、通常より長いビスを用います。
断熱材は発泡スチロールのようなもので、ビスをしっかり固定する力が弱いため、外壁材の重みで仕上げ材が下がってきてしまうことがあります。
内断熱のメリット
内断熱のメリットは、次の3つが挙げられます。
壁の厚みが一定になる
内断熱では、柱と柱の間に断熱材を施工するため、外壁の厚みに変化はありません。
そのため、外装材のデザインや窓の納まりなどに特別な配慮は必要なく、狭小地でも問題なく施工できます。
コストを抑えやすい
昔から使われてきた一般的な工法なので、施工できる業者も多く、外断熱より使う断熱材の量も少ないため、コストを抑えやすいのがメリットです。
豊富な種類から断熱材を選べるため、コストのかからない断熱材を使用することも可能です。
温暖な地域では十分な断熱性がある
日本で外断熱が一般的に使われるエリアは、北海道や本州の積雪の多い地域です。
内断熱は、外断熱に比べて断熱性能が低いものの、本州の温暖なエリアなら、内断熱でも十分快適な断熱性能を確保できます。
内断熱のデメリット
内断熱のデメリットとしては、以下の2点があります。
結露や熱損失が起きることもある
内断熱では、断熱材が入らない柱の部分から熱が失われやすく、冬の寒さや夏の暑さの影響を受けやすくなってしまうのがデメリットです。
温度差によって結露が生じるケースもあり、その場合、カビが発生したり柱が腐食したりすることがあります。
仕上がりにブレがある
内断熱では、さまざまな断熱材を使うことができますが、壁の内側は形状が複雑になりやすく、正確に施工するには技術が必要です。
そのため、現場によって仕上がりの精度にブレが出ることがあり、十分な断熱性能を確保できないケースも出てくることがあります。
適切な断熱方法で、住まいの住み心地を快適に
間取りやデザインだけでなく、断熱性能も住まいの住み心地に影響します。
断熱方法には、外断熱と内断熱とがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
どちらがいいというよりも、家を建てる地域の気候や、採用する構造、コストなどから総合的に判断していきます。
適切な断熱方法を選び、住み心地も最高の住まいを作りましょう。
ぜひ、断熱性にも目を向けて、住み心地のいい住まいを手に入れましょう。