「カイ・ボイスン」はデンマークを代表するデザイナーの一人です。
ステンレスのシンプルなカトラリーシリーズや、愛嬌のある木製の人形は、日本でも人気があります。
この記事では、カイ・ボイスンの生い立ちや代表作について詳しく解説します。
目次
美術工芸の先駆者カイ・ボイスンとは?
1886年にデンマーク人として生まれたカイ・ボイスン。
機能性主義の考え方をデンマーク工芸に用いて、現代のデザインの先駆けとなりました。
なかでも有名なのが、1938年にデザインされたステンレスのカトラリーシリーズです。
デンマーク王室や、各国のデンマーク大使館でも使用され、発売から50年以上が経つ現在も、多くの人に愛用されています。
1930年代には、自身の長男の誕生を機に、木工作品の制作をスタートしました。
カトラリーとは異なる作風の木製玩具は、北欧インテリアが好きな人を中心に日本でも人気を集めています。
ジョージ・ジェンセンで修業を積む
20歳だったカイ・ボイスンは、ジュエリーや時計を中心に取りあつかうブランド「ジョージ・ジェンセン」に約4年間勤務し、修業を積みます。
1910年には、コペンハーゲンで銀細工師を目指し、独立を果たしました。
デン・パーマネンテを設立し時代の先駆けに
1920年代には、当時のホルムガード社社長「クリスチャン・クラウベル」と共に、先進的なデンマークデザインを扱うセレクトショップ「デン・パーマネンテ」を設立。
現代デザインの先駆けとなる活動をスタートさせます。
カトラリーシリーズで一躍有名になる
1938年に手掛けたカトラリーシリーズにより、カイ・ボイスンの名が世間に広がりました。
もともとはシルバーカトラリーとしてデザインされましたが、戦時中のため素材となる銀の供給が困難に。
そこで当時の工芸品としては珍しい、ステンレスを用いることにしたのです。
シンプルながら上品さが漂うデザインは、北欧だけでなく世界各国の人々から高く評価されました。
1951年に、おこなわれた国際的なコンテスト「ミラノトリエンナーレ」において、3年連続で最優秀賞を獲得。
そのときに「グランプリ カトラリー」と名付けられ、発売と同時に大きな話題を呼びました。
カトラリーシリーズが日本で生産されるように
1991年ステンレスのカトラリーシリーズは、日本での製造を依頼されます。
きっかけは、デンマークのデザイナー「オーレ・パルスビー」と、新潟燕三条(つばめさんじょう)の金属加工メーカー「大泉物産」の出会いでした。
高い研磨技術に魅了されたパレスビーが、当時カイ・ボイスンの経営をおこなっていたローゼンダール社に大泉物産を紹介したことが、カトラリーの生産につながりました。
2011年には、持ち手の先端が丸みを帯びたデザインにリニューアルしています。
同名ブランドとして独立を果たす
2011年、カイ・ボイスンの生誕125周年をきっかけに、自身と同名であるブランド「カイ・ボイスンデンマーク」として独立を果たします。
それまで、彼が亡くなってからの約30年間は家族が経営し、1991年には現在の「ローゼンダール・デザイングループ」が木製商品の商標権を受け継ぎ「ローゼンダール社 コペンハー ゲン」として、復刻生産をしていました。
現在はカイ・ボイスンデンマークとして、彼の思いを継ぎながら数々の作品を再び世に送りだしています。
カイ・ボイスンの代表作4選
銀細工師としての技術をもつカイ・ボイスン。
定番のカトラリーシリーズはもちろん、ユーモラスな印象の木の玩具も人気です。
ここからは、カイ・ボイスンの代表的な作品を4つご紹介します。
上品な佇まいのグランプリ カトラリー
1938年にデザインされた「グランプリ カトラリー」。
全28種類の豊富なバリエーションや使い勝手の良さ、手にしやすい価格が魅力です。
シンプルかつ上品なフォルムは合わせる食器を選ばず、家庭の食卓やレストラン、ホテルなど、さまざまな場所で愛用されています。
加工はマットとミラーの二種類。好みや使うシーンに合ったタイプを選べるのが嬉しいですね。
アイコン的存在のモンキー
あどけない表情のモンキー。カトラリーシリーズと並び、カイ・ボイスンを象徴する作品です。
温もりある木の質感と、丸みを帯びたフォルムが特徴的。
もともとは子供用のコートフックとして、1951年に発表されました。
現在は玩具として販売されており、モンキーの手にはモノを引っ掛けることができます。
座らせてスマートフォンやポストカードスタンドにしたり、ウォールシェルフなどに、ぶらさげたりするなど、使い方のアイデアは無限大です。
北欧カラーのソングバード
「ソングバード」はモンキーと同じく、木製の人形です。
カイ・ボイスンが暮らしていた、コペンハーゲンの自宅の庭に集う、小鳥からインスピレーションを受けてデザインされています。
北欧らしいポップなカラーリングは、インテリアのアクセントに最適です。
一つ一つ職人が手づくりしており、温もりを感じる作品に仕上がっています。
また、それぞれにカイ・ボイスン本人や、彼の家族の名前が付けられているのも、愛着がわく理由の一つです。
木の質感に癒されるベア
丸い体と顔に癒される、木製の小熊。
角がなく、木ならではの優しい触り心地が魅力のフィギュアです。
お腹にはホワイトメープル材が使用されており、経年変化が楽しめます。
手足と体はゴムでつながっているため、好きなポーズに変えることも。
子供の玩具としてはもちろん、インテリアアイテムとして大人にもおすすめの作品です。
素材を問わず質の高い作品を手掛けたカイ・ボイスン
木工や金工といった素材の種類に関わらず、質の高い作品を数多く手掛けたカイ・ボイスン。
デンマーク王室にも認められた確かな品質はもちろんのこと、普段の暮らしに馴染むデザインが多くの人の心を惹きつけました。
ぜひ実際に手にとり、長年愛され続ける理由を探ってみてくださいね。