「減築」とは、住宅の一部を削って床面積を減らすリフォームのことです。
新築のときには大きな家が必要だったかもしれませんが、ライフスタイルの変化とともに住宅に必要な広さも変わってきます。
この記事では、減築を検討するタイミングや費用、メリット・デメリットなどを徹底解説します。
目次
減築とは
冒頭でも述べたとおり「減築(げんちく)」とは、住宅の床面積を減らすリフォーム工事のことをいいます。
たとえば駐車場を増やすために住宅の一部を削ったり、二階建て住宅を平家にしたりするのが減築です。
「床の面積が減ったかどうか」が減築基準のため、リビングとキッチンの壁を取り払って間取りを変更するような工事は含まれません。
ただし、二階部分にある部屋を取り除き吹き抜けにした場合には、床の面積が減少するため減築に含まれます。
どんなときに減築を検討するべき?
「わざわざ家の広さを小さくする必要があるの?」と疑問に感じる人もいるでしょう。
しかし住宅は住む人のライフスタイルによって、適した大きさが変わります。
そのため次のようなタイミングで減築を検討する人が多いでしょう。
- 子どもが巣立ったとき
- ライフスタイルの変化で部屋が不要になったとき
- 駐車場や庭を増やしたい
- 高齢になり階段がしんどいので二階を減らしたい
たとえば自分たちが20〜30代のころに新築し、それから子どもが生まれたとします。
新築するときには将来の子どものことを考え、子ども部屋をいくつか設計するでしょう。
しかし20年ほどの年月が流れ、子どもたちは大人へと成長します。それぞれが巣立っていき、今の家には最初のころのように夫婦2人が残るのです。
使わない部屋がたくさんあれば、掃除やメンテナンスが面倒になり、固定資産税も高いまま。
自分たちが高齢になっていくにつれて減築を決意する人も少なくありません。
このようにライフスタイルの変化によっては、減築したほうがよいケースもあるのです。
減築にかかる費用はどれくらい?
減築には、1平方メートルあたり「約10.5〜15万円」の費用がかかるといわれています。
しかしこれはあくまでも目安であり、工事を行う面積や内容によって総額1,000〜2,000万円程度と相場の幅が広いことも事実です。
減築を行う場合、次のような工事に費用が発生します。
- 解体費用
- シロアリ駆除
- 登記申請費用
- 仮住まい費用
- 工事の足場設置
- そのほかの特殊施工
また減築するときに補修したほうがいい場所があれば、その分の費用も追加されるでしょう。
今の住宅の構法が鉄骨なのか木造なのかによっても、減築にかかる費用は変動します。
このように減築は費用の変動ポイントが多いため、単純にリフォームするよりも見積もりが読みにくく、必ずしも前述の相場になるとは限りません。
減築を依頼する業者とよく相談し、予算と照らし合わせながら進めていくことが大切です。
代表的な減築のパターンを紹介
次に、減築における代表的なパターンを4つ紹介しましょう。
それぞれの工事の特徴や目的も解説していきます。
一階・二階部分の部屋を減らす
まずは一階や二階のなかで、要らなくなった部屋を撤去する減築パターンです。
これは子どもが巣立ったあとに、子ども部屋や二階のトイレなどをなくす目的で行われることが多いでしょう。
単に床を取り除くだけでは済まず、解体したあとはその部屋があった部分に新たな屋根や壁などを設置しなければなりません。
二階建てを平家に改築する
次に、二階建ての住宅を一階だけの平家に改築するパターンです。
その家に済む住人が高齢になり、階段の上り下りが辛く感じるようになったときに減築リフォームに踏み切ることが多いでしょう。
この工事も二階部分を全撤去したあとに、壁の修復や屋根の新設などを行う必要があり、決して安くはない費用がかかります。
駐車場や庭を増設する
駐車場や庭を増設する場合には、住宅の一階部分を減築する必要があります。
駐車場を増設するときは、車種にあわせて「車幅+900mm」と「全長+600mm」程度のスペースが必要です。
所有する車によって考えなければならない広さが異なるため注意しましょう。
また庭を増設する場合には、どんな目的でスペースが欲しいのかによって必要な広さが変動します。
- ウッドデッキがほしい
- 洗濯物を干すスペースがほしい
- ガーデニングを楽しみたい
など、何のために庭を増設したいのかを明確にしておく必要があるでしょう。
二階に吹き抜けやロフトを作る
二階の床をくり抜いて、吹き抜けやロフトにする減築リフォームもあります。
これは一階の日当たりが悪く、ジメジメしてしまう住宅に向いている工事です。
二階を吹き抜けにして、高い位置にある窓から日光を取り入れるようにすれば、住宅全体が明るくなります。
またロフトを作れば、収納スペースや小さな部屋としても活用できるでしょう。
減築を行うメリット
ここからは、減築を行う4つのメリットを解説していきます。
生活しやすくなる
まず挙げられるメリットといえば、そこに住む人が生活しやすくなること。
先にも説明したとおり、減築はライフスタイルの変化とともに検討されるリフォームです。
新築したときと比べて生活に変化があり、住みづらくなっているから減築します。
- 上下階の移動がなくなって負担が軽減される
- 部屋数を減らすことで移動効率が上がる
など、今のライフスタイルにマッチした住宅となれば生活のしやすさも向上します。
掃除・メンテナンスの手間が減る
減築を行って部屋数や階数が減れば、単純に床の面積が小さくなるため、掃除やメンテナンスの手間が少なくなります。
具体的には、子どもが巣立ったあとに使わなくなってしまった部屋を思い切って減築することで、その部屋の掃除や換気などが不要となります。
こうした生活動線のムダを削り、身体的な負担を軽減させられる点も減築のメリットです。
冷暖房の効率が良くなる
不要な部屋をなくせば、冷暖房の効率がよくなり光熱費を削減することも可能になります。
使っていない部屋の扉を閉めっぱなしにしておけば、ある程度空気の流れを遮れるでしょう。
しかしそれでも扉には隙間があり、そこから空気が出入りしてしまいます。
そこで要らない部屋の減築に踏み切れば、長期的にみて冷暖房の維持コストを大きく減らすことができます。
固定資産税が安くなる
減築すれば固定資産税が安くなる点も大きなメリットです。
固定資産税とは、土地や家などの資産に対して課せられる税金のことで、土地や家の延べ面積によって算出されています。
そのため床の総合面積が広ければ広いほど税金が高くなり、狭ければその分安くなるのです。
固定資産税が高くて悩んでいる場合には、減築リフォームすることで税金を減額できるでしょう。
減築の行うデメリット
減築はメリットばかりではありません。ここからは、3つのデメリットについても解説していきます。
施工費用が高い
減築は想像しているよりも高い費用がかかる可能性があります。
「単に部屋数を減らすだけ」と考えていると、費用の高さに驚いてしまうかもしれません。
先にも紹介したとおり、減築するには新たに屋根や壁を設置したり、工事関係者が使用する足場代がかかったりします。
さらに築年数が経っている住宅の場合、工事を始めてみたらシロアリが見つかることも珍しくありません。その場合、シロアリの駆除費用も追加になります。
こうした想定外のコストがかかる可能性もあるため注意しましょう。
収納スペースが減る
減築してしまうと、収納スペースが減ることも考えられます。
住宅の床面積が小さくなるため、当然生活する部分は狭くなります。
しかし部屋の広さなどは小さくするにも限りがあるため、収納スペースなどを削って床面積を狭めるのが一般的です。
もしも減築することによって収納場所に困ってしまう場合には、季節によっては使わない物などを月額制のトランクルームなどに預けるのも一つの手段といえるでしょう。
登記申請を行う必要がある
減築によって床面積が変わるときには、必ず「登記申請」を行う必要があります。
これは工事の規模にかかわらず、減築工事を行った日から1ヶ月以内に手続きをしなければなりません。
登記申請の手続きを怠れば罰則もあるため注意してください。
ライフスタイルに合った減築を検討しよう
今回は住宅の床面積を小さくする「減築」について紹介しました。
「せっかく大きな家を建てたのに減築するの?」と驚く人がいるかもしれませんが、長い年月の間には暮らしに変化が生じるものです。
自分の年齢やライフスタイルに合わせた家に住みたい人は、ぜひ減築を検討してみてください。