SE構法を検討するなら知っておきたい8つのデメリットを解説

    「SE構法は間取りが狭い家でも自由にできるらしいから、検討してみたい」 「でもSE構法だっていいことばかりじゃないはず」 SE構法の魅力やメリットを知って、注文住宅を建てる際に採用すべきか迷っている人もいるでしょう。

    どんな建築方法であっても、メリットとデメリットは必ずあります。

    しかし、デメリットへの対応策を事前に知っておくと、検討しやすいですよね。

    この記事では、SE構法を検討する前にぜひ知ってもらいたい、デメリット8つを解説していきます。

    SE構法を本気で検討しようと思う人は、ぜひ参考にしてください。

    SE構法とは耐震構造をもつ木造住宅の技術

    SE構法とは、鉄骨造(S造)・鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で採用されているラーメン構造で、木造住宅を建築する構法です。

    ラーメン構造の家は柱と梁を一体化させる剛接合するため、地震による揺れでも崩壊しない、高い耐震性を持ち合わせます。

    ラーメン構造の特徴である「枠」構造によって、一般的な木造住宅では必要となる構造上外せない柱や壁がなくなり、縦にも横にも広々とした空間設計ができます。

    そのため、自由な間取りプランを採用できる点が魅力です。

    SE構法8つのデメリット

    SE構法を検討する際には、どういったことが問題になるのでしょうか。

    ここでは、SE構法のデメリットを8つ紹介します。

    1:限定された工務店

    SE構法で木造住宅を施工できるのは、「SE構法施工管理技士」が在籍する「SE構法登録施工店」のみです。

    登録された工務店は全国に約600店以上あります。

    ただし、登録施工店はそれぞれ技術力の差があります。問題の解決方法に対する提案力、技術力などに違いがでるため、登録施工店は慎重に 選択しましょう。

    また、登録施工店の多くが大都市圏に集中しているため、地域によっては登録施工店が見つけられないこともあるでしょう。

    2:建築コストが高い

    SE構法のデメリットでも懸念されやすい点が、一般的な在来軸組工法(以下在来工法)に比べると建築コストが高いことです。

    工事費用はハウスメーカーによって異なるため一概にはいえませんが、坪単価で約5~7万円程度高くなる可能性があります。

    30坪で計算すると、概算でも約150〜200万円の差が生じます。

    しかし耐震性を重視して鉄骨造を選択した場合は、在来工法よりも坪単価20〜30万円程度価格がプラスされます。

    SE構法の建築コストは、およそ鉄骨造と在来工法の中間の価格帯です。

    3:輸送コストが高い

    SE構法の建築材は、指定のプレカット工場でSE金物を接着した状態のまま運送します。

    そのため運搬物のカサが増えてしまい、運送費用が高額になる傾向があります。

    在来工法の場合は運送トラックに木材を隙間なく積みますが、SE構法ではさまざまなボルトや金物を取り付けるため、効率の悪い運送方法や保管方法しかありません。

    そのため運送費は、約2倍程度増加することが多いでしょう。

    4:材料費が高い

    SE構法で使われる構造用集成材は、3方向からの強度試験が義務付けられているJAS特類1級の木材です。

    対して在来工法で使われる構造用集成材は、一方向からの強度試験が義務付けられているJAS特類2級の木材です。

    そのため在来工法と比べてSE構法の資材の方がハイグレードになり、その分価格が増額されるでしょう。

    5:基礎工事費が高い

    SE構法の基礎は、地面側の耐圧部で在来工法と比べて20%程度、横の立ち上がり部では13%ほど厚みが出るようにつくられるため、在来工法と比べると費用も高額になります。

    この太くて強い基礎によって安全性が増し、さまざまな圧力にも耐えうる構造が実現します。

    6:構造計算費用がかかる

    SE構法では建物の規模に関係なく、全ての住宅で構造計算を行います。

    構造計算費用は1平米あたり2,000〜3,000円が相場のため、30坪として計算すると20〜30万円程度かかります。

    在来工法の2階建て住宅には構造計算の義務はないため、その分費用は安く済むでしょう。

    7:耐久性の実績が少ない

    SE構法の歴史は浅く、1995年の「阪神淡路大震災」がきっかけで誕生しました。

    そのため、経年変化や劣化の証明については実績が少ないといえるでしょう。

    しかしSE構法に使われている集成材は120年前から使用され、100年以上経過した建築物にも使われています。

    SE構法の試験では、優れた耐震性を示す結果がでています。

    8:シックハウスの問題

    集成材の接着には化学物質ホルムアルデヒドが使用されています。

    新築住宅で問題となるシックハウス症候群が心配な人もいるでしょう。

    SE構法の生産工場では、化学物質を極力微量に使ったJAS規格最上位の材料が使用され、24時間自動換気システムが義務づけられています。

    このような建築資材の化学物質によるシックハウス症候群の問題は、SE構法に限ったことではありません。

    体質的に化学物質に過剰反応する場合は注意してください。

    SE構法でできること

    SE構法の家

    ここまで、SE構法を検討するときにネックになるデメリットを紹介してきました。

    しかしSE構法だからこそ可能になる「住宅のカタチ」があります。

    ここでは、SE構法により実現できることをご紹介します。

    設計プランの自由度の高い

    SE構法の家

    SE構法による木造ラーメン構造は建物のフレーム部分を強力に接合することで、在来工法で必要だった柱や間仕切り壁が必要なくなりました。

    そのため、鉄筋コンクリート造のマンションのような広々としたワンルーム型の空間設計や、さまざまなデザインを取り入れた間取りプランが可能になりました。

    自由な設計が可能になったことで、住む人のライフスタイルにあった間取りを創造できるでしょう。

    耐震強度の高い家づくり

    SE構法の家

    木造ラーメン構造でつくられた木造住宅は「中越地震」「東日本大震災」「熊本地震」で倒壊件数0という実績をつくりました。

    ラーメン構造で接合されたSE構法の家は、構造計算に裏打ちされた綿密な構造のため、地震の揺れに対して強さを発揮します。

    大地震で負荷のかかる基礎と柱のつなぎ目にも、SE構法ならではの特殊な金物で直接連結させることで大きな揺れによる柱の引き抜きを防ぎ、耐震性を向上させています。

    梁を見せるデザインも可能

    SE構法の家

    木造建築では高い天井に天井ボードをはらず、あえて太い梁を見せる「現し仕上げ」という技法があります。

    SE構法は柱との接合部分にSE金物が使われ、木材の中に埋め込まれる形状で見た目がスッキリしているため、「現し仕上げ」に向いています。

    木造住宅ならではの「現し仕上げ」を採用して、大空間に変化をつけてはいかがでしょうか。

    構造計算で検証

    鉄骨造や鉄筋コンクリート造のビルやマンションでは、義務化されている構造計算。

    SE構法では全ての木造住宅において構造計算することで、1棟ごとの安全性を確認しています。

    住宅内部の仕様はそれぞれの家によって異なりますが、その家ごとに合わせて専門の構造設計士が全て計算します。

    また建物部分だけでなく基礎部分も構造計算するため、高い安全性が保証されます。

    特殊な形状の土地に対応

    SE構法の家

    狭小住宅や3階建て住宅、特殊な形状の敷地に建てる住宅も、構造計算によって耐震性のある家を建てられるのがSE構法の特徴です。

    それぞれの住宅事情に合わせて空間設計ができるため、制約がある土地でも限りなく自由なプランを実現できます。

    長期優良住宅認定で住宅ローン控除を受ける

    新築住宅が長期優良住宅に認定されると、住宅ローン控除といった税制上のメリットがあります。

    SE構法を採用して耐震等級3級などの条件をクリアできれば、地震保険の割引や金利優遇、住宅ローン控除の拡充などが見込めるため、建築コストが高額になった分と相殺できる可能性があります。

    SE構法ならではの土地にあった家づくり

    SE構法の家

    今回は、SE構法を検討する前にぜひ知ってもらいたいデメリット8つと、SE構法でできることを解説しました。

    SE構法は一般的な在来工法に比べると建築コストが高額になりますが、耐震性強度と大空間を求めて鉄骨造を検討するならば、比較的安く済みます。

    それぞれメリットとデメリットがあるため、どの建築方法も特徴をしっかり理解し、検討することをおすすめします。