家を建てる際には、土地の状態を調べる「地盤調査」を行う必要があります。
地盤調査は地盤沈下や家が傾くリスクを軽減し、安全に長く暮らせる家を建てるためには欠かせない調査です。
ただし、「必ずしも地盤調査をしなくてはならないのか」「調査にはどれだけの期間・費用がかかるのか」に疑問を感じる方もいるでしょう。
この記事では、地盤調査の必要期間・費用・調査方法などの基礎知識と、調査の結果に応じて必要になる地盤改良について詳しく解説します。
家づくりを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
地盤調査とは?知っておきたい基礎知識を解説
地盤調査とは、建物を建設する前に土地の状態を確認する調査のことです。
地盤の強度や、硬軟の偏り・土質・地下水位などを調査します。
万が一、地盤調査を行わずに軟弱な土地に住宅を建ててしまうと、地盤沈下や家が傾くなどのリスクが高くなってしまいます。
安全に暮らせる住宅を建てるためには、地盤調査の結果に合わせて最適な建設プランを立てることが重要です。
なお、地盤調査は新築建設時だけではなく、建て替え時にも行う必要があります。
建て替えの場合でも、地盤が安全な状態とは言い切れず、建築する場所によって状態が異なる可能性があるからです。
地盤調査に必要な期間
地盤調査は調査方法によって異なるものの、半日から数日程度の調査時間がかかります。
- 「スクリューウエイト貫入試験」の場合は半日から1日程度
- 「表面波調査」の場合は半日程度
- 「ボーリング調査」の場合は1日から数日程度
上記の調査期間は大まかな目安で、調査方法や調査範囲によって必要な時間は異なります。
地盤調査でかかる料金相場
地盤調査でかかる料金は調査方法によって異なります。
もっとも一般的な「スクリューウエイト貫入試験」は5〜10万円程度、「表面波調査」はそれよりもやや高めで、「ボーリング調査」は20〜30万円程度が料金相場です。
地盤調査の方法は土地に合わせて専門業者が選択するため、費用を抑えたいからと自分で選択することはできません。
また、地盤調査の結果に応じて地盤改良工事が必要な場合、追加で50〜100万円程度の費用がかかる可能性もあります。
地盤改良の必要性は調査が終了するまで分からないので、費用は余裕を持って準備しておくことが大切です。
地盤調査は必須?調査の必要性を解説
地盤調査は費用がかかるため、できればやりたくないと考える方もいるでしょう。
ただ、地盤調査の実施は法律で義務付けられており、必ず行わなければなりません。
また、「瑕疵担保保険加入」の条件のひとつにも地盤調査があるため、住宅建設時には必ず実施する必要があります。
なぜ地盤調査が必須とされているのか、法律面・保険面から解説します。
建築基準法によって義務付けられている
地盤調査は建築基準法によって義務付けられています。
建築基準法とは建物を建てる際に最低限守らなければならないルールのことで、2000年の建築基準法改正時に「建物を建てる際に地耐力を調べること」が定められました。
- 建築基準法施行令第三十八条
建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。 - 建築基準法施行令第九十三条
地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力は、国土交通大臣が定める方法によつて、地盤調査を行い、その結果に基づいて定めなければならない。
引用:昭和二十五年政令第三百三十八号建築基準法施行令
建築基準法は自身の住宅の安全はもちろん、周辺の建物や道路などの安全確保のためにも必ず守らなくてはならない法律です。
「お金をかけたくないから」と自己判断で地盤調査を行わないことはできません。
瑕疵担保保険加入のために必要
「瑕疵担保保険」加入のためにも、地盤調査が必要です。
2000年に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、住宅の受け渡しから10年以内に設計・施工ミスによる欠陥が見られた場合や雨漏りなどが発生した場合は、施工業者が責任を負うよう定められています。
瑕疵担保保険はこの際にかかる修理費用などを保証してもらえる制度です。
施工会社にかかる負担を減らすためにも、地盤調査を実施し瑕疵担保保険に加入するのが一般的とされています。
地盤調査3種類の調査方法を解説
地盤調査には3種類の方法があります。
- スクリューウエイト貫入試験
- 表面波調査
- ボーリング調査
それぞれどのような調査方法なのか、どれだけの費用・調査期間がかかるのか解説します。
スクリューウエイト貫入試験|一般的な調査方法
スクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)は、一般住宅で用いられることの多い、もっとも主流な調査方法です。
先端がスクリュー状になった鉄のロッドにおもりを付け、回転させながら地盤にねじ込み、回転数やおもりの重さから地盤の硬さを調査します。
ロッドがスムーズに沈んでいった場合は地盤が軟弱で、沈むのに時間がかかった場合は地盤が硬いと判断されます。
戸建て住宅の場合は、住宅の四隅と中心部の計5箇所で調査を行い半日程で完了します。
スクリューウエイト貫入試験のメリットは、ほかの調査と比べて費用が安いこと。
一方、規模が大きい土地の場合は正確な調査結果が出にくい点がデメリットです。
表面波調査|戸建て住宅建設時に採用
表面波調査は、スクリューウエイト貫入試験と同様、戸建て住宅建設時に採用される調査方法です。
地面に振動機と受信機を設置し、振動の伝わる速さで地盤調査を行います。
調査スペースが狭く、敷地内の複数箇所で調査が可能です。
表面波調査は地中10m程度の調査をでき、スクリューウエイト貫入試験に次いで安く調査を行えます。
ボーリング調査|大型建築物・特殊間取りの住宅建設時に採用
ボーリング調査は、ボーリング機械を使って地盤に穴を掘り、そこにハンマーを落とすことで強度を測る調査方法です。
スクリューウエイト貫入試験と比べると地層の状態も調査でき、より明確な結果が出ますが、費用が20〜30万円程かかるというデメリットがあります。
そのため、一般住宅の地盤調査で用いられることはあまりなく、規模の大きい建物やマンション建設時に採用されます。
調査結果に問題あり!地盤改良の3種類の工法を解説
地盤調査によって地盤が軟弱であると判断された場合、地盤改良工事を行う必要があります。
地盤改良の工法は3種類です。
- 表層改良工法
- 柱状改良工法
- 鋼管杭工法
それぞれどのような方法で工事を行うのか解説します。
表層改良工法
表面改良工法は、地表から2m程の土を掘り、そこにセメントを注入することで地盤を固める工法です。
軟弱な層が地表から2m以内と浅い場合に採用される工法で、建築面積20坪あたり50万円程の工事費用がかかります。
3種類の工法の中では比較的費用を抑えて工事ができますが、軟弱な層が浅い場合にしか対応できないのがデメリットです。
柱状改良工法
柱状改良工法は、軟弱な層が2〜8m程に渡る場合に採用される工法です。
地盤に直径60cm程の穴をあけ、その中にセメントと水を注入して土と攪拌させることで地盤を補強します。
表層改良工法より深い部分の軟弱層に対応できますが、建築面積20坪あたり100万円程と高額な費用がかかる点がデメリットです。
鋼管杭工法
鋼管杭工法は、柱状改良工法同様、地盤に直径60cm程の穴を開け鋼管で補強する工法です。
柱状改良工法と工法や費用はほとんど変わりませんが、地下30m程まで対応できるという特徴があります。
地盤改良業者は自分で選べる?ハウスメーカー提携業者が一般的
地盤改良は工法によって費用が大きく異なるため、自分で選択した工法を採用したいと感じる方は多いでしょう。
また、地盤改良はその後の住宅建設に大きく関わるため、自分で選んだ信頼できる専門業者に任せたいと感じる方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、改良工法や地盤改良業者を自分で選ぶことはできません。
一般的には、ハウスメーカーや工務店と提携している業者が、地盤調査と改良工事を合わせて行います。
地盤調査には住宅の建設内容の情報が必要なため、ハウスメーカーや工務店と連携して行う場合がほとんどです。
万が一、自分で選んだ地盤改良業者にお願いしたいという場合は、事前に相談する必要があります。
地盤調査を行なって安全な家づくりをしよう
今回は住宅建築時に欠かせない地盤調査について解説しました。
地盤調査は安全に長く暮らせる家づくりをするために必要な調査です。
万が一、地盤調査を行わずに建築した場合、頑丈な家を建てても地盤沈下や傾きなどが発生してしまう危険性があります。
安心して暮らせる家にするためにも、地盤調査を必ず行うようにしましょう。
地盤調査について疑問点・不安点がある場合は、まずは工務店などに相談してみてください。