住宅設備の中ではかなり贅沢な部類に入る「床暖房」。
最近では省エネ・低コストを謳ったプランも多く販売されていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
この記事では、床暖房を導入するメリット・デメリットや、床暖房の種類、導入を検討するときに見ておきたいポイントについてまとめてみました。
目次
床暖房とは?まずは仕組みを知ろう
床暖房とは、床下に敷いた熱源を温めることで温度上げる暖房設備の一種です。
床暖房の種類を大きく分類すると、温めたお湯を循環させる「温水式」と、発熱体に電気を流す「電気式」の2種類があります。
よく勘違いする人がいますが、床暖房は床だけが暖かくなるわけではありません。
床下から直接伝わってくる「伝導熱」と、床から空気中に放出される「ふく射熱」の2つの効果により、徐々に部屋全体を暖まるメカニズムなのです。
床暖房にしたい!でもメリットやデメリットは?
床暖房はメリット・デメリットがはっきりしているので、生活スタイルや予算を考慮して導入を検討することが大切です。
部屋の断熱性が十分でないと効果を感じにくかったり、施工費や電気代がかかりすぎてしまうことがあります。
重要な項目をおさらいして、導入に適しているかをチェックしてみましょう。
床暖房のメリット
床暖房のメリットの一つは、足元が暖かいことです。
通常の暖房設備では部屋の下の方に溜まった空気を温めにくいため、冷え性の人にとっては悩みの種になっていました。
床暖房なら足元に加えて部屋全体も均一に暖めてくれるので、常に快適な温度を保ちやすい特性があります。
暖房やストーブのように空気熱を使わないため、乾燥対策に強いのも嬉しいポイント!
掃除がフローリングだけで済むので、日々の掃除を楽にこなせるのも特徴です。
床暖房のデメリット
床暖房のデメリットは、主にコスト面の高さです。
床暖房の種類にもよりますが初期の導入コストはかなり高く、部屋全体を床暖房に変えると数百万円以上が必要になる場合もあります。
エアコンと比べて電気代も高くなりやすく、月々の維持コストが膨れ上がってしまう恐れもあります。
他の暖房設備と比べて立ち上がりが遅く、部屋の十分に温めるためにはある程度の時間が必要。
日々の掃除は楽ですが、タイプによっては定期的なメンテナンスも必要になります。
床暖房の費用や電気代は実際どのくらいかかるの?
床暖房で月々にかかる費用は、一般的な暖房設備と比べて割高です。
使用回数や温度環境、使い方によっても異なりますが、温水式タイプは1日8〜10時間の使用で7,000〜8,000円、電気式は10,000〜13,000円程度となります。
電気式は設置コストが低めなぶん、月々の電気代が高くかかってしまうのが特徴。
同条件で比較したエアコンでも月々5,000〜6,000円程度で済むことを考えると、床暖房の維持コストは全体的に高めです。
7種類の床暖房とその特徴を解説
床暖房は温水式・電気式でそれぞれ数種類のタイプが存在し、メリット・デメリットが微妙に異なります。
生活スタイルや家の間取りに適した床暖房を選べるように、各タイプの特徴をおさらいしておきましょう。
電気ヒーター式の電熱線式床暖房
電熱線式の床暖房は、床下に敷き詰められた電熱線に電気を流して熱を放射するタイプの暖房設備。
電気ヒーター式床暖房の中では導入コストが比較的安く、小さなスペースから大規模な部屋まで幅広く対応しています。
部屋を温める速度がやや遅いのがデメリットです。
電気ヒーター式のPTCヒーター式床暖房
PTCヒーター式とは、自己加熱抑制機能を備えた電気式床暖房のことです。
熱を自動で感知して無駄な発熱を抑えてくれるため、省エネ効果が非常に高いのがメリット。
メンテナンスもほぼ不要で、立ち上がりも比較的早いです。
大きな部屋や複数部屋への対応は難しいため、一部分のみに採用するのが好ましいです。
電気ヒーター式の蓄熱式床暖房
蓄熱式は夜間に蓄熱した熱を活動時間帯に自然放出させるタイプの床暖房。
夜間は電気代が安いため、省エネ効果が高いです。
放熱時間が長いため温度が安定しやすく、常に快適な温度を保てるのがメリット。
蓄熱という特性上、日中に細かい温度調整ができないため、生活スタイルによっては効果を100%発揮できない可能性があります。
温水式の電気床暖房
電気床暖房は、温水を電気で温めるタイプの暖房設備。
省エネ効果が高い「エコキュート式」「ヒートポンプ式」を採用している商品が多くあります。
複数部屋に設置が可能で、維持コストも安め。
使いやすさと快適性から一般層の導入率も高くなっている床暖房です。
温水式のガス床暖房
ガス床暖房は、温水をガスで沸かして循環させるタイプ。
立ち上がりスピードがかなり早く、維持コストも比較的安いです。
温度のムラが少なく、部屋を均一に温めてくれるのもメリット。
導入に際してガス設備が必要なので、住宅環境によってはコストが高くなる可能性があります。
温水式の灯油床暖房
灯油床暖房は、灯油を利用して温水を温めるタイプの暖房設備。
ほかの温水式と同じく複数の部屋に設置が可能で、電気代が比較的安く済むのがメリットです。
定期的に給油をする必要があるため、若干メンテナンスの手間がかかりやすいという特徴があります。
温水式の電気・ガスハイブリッド式床暖房
「エコジョーズ」などに代表されるハイブリット式は、高い省エネ効果が期待できる床暖房です。
立ち上がりのスピードがかなり早く、日中の細かい温度調節も容易にできます。
電気代が安く済む反面、使用にはハイブリット給油暖房器が必要になるため、導入コストは高くなりがちです。
床暖房を選ぶときに注意すべきポイントとは?
床暖房を選ぶときは、どのようなポイントを見るべきなのでしょうか。
特に注意しておきたいチェックポイントを厳選して紹介します。
専用の床暖房フローリングが必要かどうか
床暖房には、床材と暖房設備が一緒になっている「一体型」と、フローリングと温熱設備が分けられている「分離型」の2つがあります。
どちらを選ぶかによって、導入できる床暖房の種類やタイプも異なってくるので、生活環境や住宅の仕様と合わせて確認しておくのが良いでしょう。
一体型タイプは選べる床材の種類が少ない変わりに、温熱効果が高いのが特徴です。
分離型はフローリングだけでなく、畳やカーペットなどの素材でも床暖房にできるので、インテリアの自由度が非常に高くなります。
そのぶん立ち上がりに時間がかかるタイプも多いです。
家の場所と断熱性も考える
住んでいる地域や住宅設備、部屋の断熱性なども考慮して床暖房を選びましょう。
住宅環境によっては別途温熱機器の導入が必要になる場合も多く、想定よりもコストが高くなってしまうことがあります。
また、部屋の断熱性が低いと床暖房がうまく機能せず、宝の持ち腐れになってしまうことも…。
居住地域によってはエアコン一つでも十分な場合もあるので、日当たりや平均気温などを考慮して、生活スタイルに最も適したタイプを選ぶのが得策です。
設置する場所と使用時間帯
全室床暖房にするのか、部分的に導入するかどうかも迷いポイントの一つ。
寒さが厳しい地域などは、キッチン・トイレ・脱衣場などで部分的に床暖房を導入するケースも多く見られます。
大部屋・小部屋でそれぞれ適した床暖房タイプが変わるので、活動時間帯と合わせて決めるのがベスト!
特に蓄電式などの細かい温度調節ができないタイプは、使用時間帯によっては無駄になってしまうことも多いです。
導入予算と月々の電気代
床暖房の長期的な利用を考えるなら、一回限りの導入費用よりも、月々の電気代に着目して選ぶのが得策です。
材料費だけでなく、工事費用・月々の電気代・メンテナンス費用などを全て考慮して、ベストな床暖房を選びましょう。
どの部屋に導入し、どれくらいの頻度で使うのかが分かれば、ほかの暖房設備との比較が可能になります。
そもそも家の状況によっては、床暖房にかかる費用を、断熱性や気密性などの住宅性能に投資したほうが効果的な場合もあります。
全体的な予算と合わせて、一度相談してみるのも良いかもしれません。
快適な床暖房で寒い冬も暖かく過ごそう
今回は床暖房について、基本的な性能や仕組み、メリット・デメリットなどを解説しました。
費用面で導入を迷っている人が多い床暖房ですが、住宅の種類や生活スタイルによっては快適な住環境を得ることができます。
せっかく導入するなら特性をしっかりと理解して、生活にぴったり合った床暖房を探してみてくださいね。