「半地下住宅の特徴は?」「地下室との違いは?」言葉は知っていても、このような疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。
半地下空間は重宝しそうですが、具体的なイメージは湧きにくいもの。
この記事では、半地下住宅のメリット・デメリット、活用事例を解説します。
さらに半地下住宅を建てる際の注意点もあわせて紹介します。
半地下の基礎知識を理解すれば、必要の有無を判断する材料になるので、参考にしてください。
目次
半地下住宅とは
半地下住宅とは、地下空間の1/3が地中に埋まっている家のこと。
土地の傾斜や段差など、ネックである形状を活かした間取りが特徴です。
室内は、1階のフロアから数段低い構造であり、リビングやダイニングなどほかの空間とのつながりを保てます。
とはいえ、半地下は「おこもり感」を感じる空間でもあり、プライバシーを確保できる点も魅力です。
ちなみに、一般的な地下室との違いは、地中に全て埋まっているか否かということ。
建築基準法において、「全地下」と「半地下」を区別する明確な違いはなく、どちらも「地階」という用語で定義されています。
半地下住宅のメリット
住宅にあえて半地下のスペースをつくるメリットは、以下の4点です。
土地を有効活用できる
半地下住宅は土地を有効活用でき、居住スペースを増やせます。
床下はデッドスペースになりがちですが、半地下住宅であれば無駄のない効率的な間取りが作れるのです。
通常、建物を建てる際は、建築基準法に定められた「容積率」の基準内で建築しなければいけません。
容積率とは、敷地面積に対して建築できる住宅の延べ床面積割合を表したものです。
例えば、敷地面積が100平方メートル、容積率が100%の場合。
一般的な2階建て住宅であれば、建物の延床面積は100平方メートルまで建築可能であり、各階50平方メートルまで建てられます。
しかし、半地下住宅ならば、一定条件を満たせば延べ床面積の1/3を限度として容積率の計算から除外される仕組み。
耐震性が高い
半地下住宅の基礎は、一般住宅に比べて必要に応じた深さに掘り下げて作ります。
そのため、基礎がさらに強固になり、高耐震である点が特徴。
もちろん地上部分も耐震性は兼ね備えていますが、半地下であれば地震の影響が少なくなります。
遮音性・防音性が高い
半地下は、遮音性・防音性に優れています。
部屋全体がコンクリートと土で囲まれており、地上から1/3の空間が埋まっている構造であるからです。
ゆえに、周囲の音を遮り、室内の音は漏れにくい環境。
振動や大きな音を出しても近所迷惑にならず、静寂な空間を生み出します。
気温が安定している
半地下は、夏は外と比べて涼しく、冬は暖かく感じられる環境。
その背景には、土やコンクリートで囲まれている構造が考えられます。
外気温の影響を受けにくく、室内の気温は一定なのです。
半地下住宅のデメリットと対策
半地下住宅にはデメリットもありますが、対策すれば解消されます。
ここからは4つのデメリットと対策を紹介しましょう。
浸水のリスクがある
半地下は地面より低い場所であるため、台風や集中豪雨時に浸水のリスクがあります。
また、場合によっては地下水の水位が上がり、壁から浸水する恐れも。
建設前に地盤調査するため、生活には問題ないと考えられます。
とはいえ、近年の自然災害は想定外の被害も続いているため注意が必要です。
費用がかかる
半地下住宅は、一般の住宅と比べてコストが割高です。
施工費の目安は、一坪あたり50~200万円ほどの幅があり、地盤の状態や周辺の環境に左右されます。
下記は費用内訳の一例です。
- 地盤・地質調査費
- 地盤改良工事費防水工事費
- 掘削・残土処理費
- 図面施工図作成費
- 配筋・打設の工事費
土地探しから始めるのであれば、余計な費用がかからない土地を選びましょう。例えば、軟弱な地盤に建てる場合、地盤改良工事が必要になり、その分コストがかかります。つまり、半地下住宅を建てる前提で土地調査すれば、費用を抑えられるのです。
カビが発生しやすい
半地下は湿度が安定している一方で、外気温の温度差により湿気が溜まりやすい傾向。
つまり、カビが発生しやすい環境であるため換気が重要です。
採光を取り入れにくい
半地下は、自然光を取り入れにくい構造です。
しかし、設計次第で採光は取り入れやすくなります。
防犯が甘くなる可能性がある
半地下の間取りは、地上に比べて人目につきにくいもの。
つまり、空き巣に狙われる可能性があります。
また、ほかの部屋から半地下の空間が目立ちにくく、侵入されても気付かない場合もあるので注意が必要です。
半地下住宅を作る前の注意点
半地下住宅を建てる前に、注意点が2つあります。
前もって理解すればその後の決断もスムーズになるでしょう。
半地下の用途を決める
まずは、半地下の目的を明確にしてください。
半地下は、秘密基地のようなプライベート空間であるため、憧れる方も多いでしょう。
しかし、用途を決めなければ「必要ない部屋だった」と、住んだ後に後悔することも。
半地下住宅はコストがかかるため、無駄な出費をしないためにも用途を熟考しましょう。
半地下住宅を建てられない土地がある
傾斜や段差のある土地を所有している方は、半地下住宅を検討している方もいるのではないでしょうか。
実は、地盤の状況や埋立地などの影響により、半地下住宅が建てられない土地が存在します。
軟弱地盤であれば改良すれば建築できますが、コストアップするため資金計画を見直さなければなりません。
つまり、半地下を建てられない場合があることを理解し、前もって地質調査することが重要です。
半地下の間取り活用事例
ここからは、半地下の特性を活かした事例をご紹介します。
半地下の活用法に悩まれている方は参考にしてください。
趣味のスペース
おこもり感があり、防音効果がある半地下は、趣味を楽しむスペースとして最適。
- トレーニングルーム
- ルームシアター
- カラオケスペース
- 楽器の演奏スペース
勉強部屋や書斎
プライベート空間が魅力な半地下は、お子さまの勉強部屋や在宅ワークスペースとして活用するのが魅力的。
周囲の音や視線を気にせずに集中して取り組めるでしょう。
駐車スペース
住宅密集地や狭小住宅の場合は、半地下のスペースを駐車場として利用するのもよいでしょう。
しかし、注意点は容積率の計算に含まれること。
条件の1つである「住宅として使用する」に当てはまらないからです。
一方で、利点は4つあります。
- 駐車スペース予定の場所に部屋が作れて、居住スペースが広がる
- 雨風や汚れを防げるため、車は常に綺麗な状態を保てる
- 室内には雨に濡れずに入れて、荷物の上げ下げも楽になる
- 工具やスタッドレスタイヤなどの収納としても活用できる
食材の保管庫
半地下は温度が安定しているため、野菜や保存食の貯蔵、ワインの保管場所などに最適です。
その背景には、先代の知恵にあります。
昔は、山の斜面に横穴を掘り、大きな空間を作って貯蔵庫として利用していたのだとか。
半地下と土の中には安定した温度が保てる共通点があるため、食材の保管場所に適しているといえます。
敷地を最大限に活かした半地下住宅で、暮らしの充実度を向上させよう!
半地下住宅は、空間を多目的に使えて、条件を満たせば居住空間を増やせる点が最大のメリットです。
狭小地や段差・傾斜があるネックな土地でも、その特性をプラスに活かせば暮らしの充実度がアップします。
注文住宅であれば、お客様の用途を理解した上で最適な設計や施工が可能です。
ぜひ、新築に半地下住宅を検討してみてはいかがでしょうか。
つまり、最大50平方メートル居住空間が広がり、一般住宅と比べて約1.5倍広い家を建てられます。