家の中でできるヒートショック対策は?温度差を少なくする対策と間取りのアイデアを紹介

    冬場の浴室やトイレで起こることが多いヒートショック。

    「ヒートショックによる死亡は高齢者に起こるもの」と勘違いしている人がいますが、急激な温度差によってはどんな人でも起こりうる非常に恐い現象の一つです。

    そしてその原因には、部屋間の温度差や断熱性能などの住宅機能が深く関係しています。

    この記事では、ヒートショックの特徴や防ぎ方、家でできるおすすめ対策について紹介します。

    ヒートショックとは?

    ヒートショックとは、気温の変化によって血圧が上下に大きく変動し、血管や心臓の疾患が起こることです。

    疾患には、失神・心筋梗塞・大動脈解離・脳梗塞などがあります。

    ヒートショックが起こる原因は、暖房が効いた暖かいリビングから、暖房の効いていない脱衣所に移動し、その後熱いお湯の入った浴槽に入るときなどに起こります。

    暖かいところから寒いところへ移動すると、寒さに対応するために血圧が上昇するのです。さらに、浴槽に入ると体が急に暖まるので血圧が下がります。

    この急激な血圧の上がり下がりが血管や心臓に負担をかけるのです。

    家の中の温度差が激しい場所には要注意

    ベッドルームと隣にあるトイレと浴室

    一般的にヒートショックが起こりやすいといわれるのは、浴室・脱衣所・トイレなどです。

    しかし、家の構造によってもヒートショックは起こりやすくなります。

    例えば、リビング・ダイニング・キッチンが廊下で仕切られている間取りや、浴室・トイレが廊下にある孤立した間取り、各部屋が廊下でつながっている間取りなどは要注意です。

    廊下を挟むとどうしても部屋から部屋へ移動するたびに暖かい、寒いという温度差にさらされることになり、これがヒートショックを生じやすくなる原因となります。

    ヒートショック対策は家の温度差を少なくすること

    ヒートショック対策の要となるのが、家の温度差を極力少なくすることです。

    注文住宅などで家を建てるときは、どんなポイントに気をつければよいのでしょうか。

    ここからは、ヒートショックを起こさない間取りのヒントについて解説します。

    基本は家全体の断熱性を高めること

    ヒートショック対策の基本は、家の中で温度差を作らないこと。

    そのためには、高気密・高断熱の家を建てるのが理想的です。

    気密性と断熱性が高ければ室内の空気が逃げにくく、しかも外の寒さや暑さの影響も受けにくくなります。

    エアコンをつけても、効率よく暖めたり、冷やしたりできるため、省エネにもつながります。もちろん、光熱費を抑えることができるというメリットもあります。

    間取りは廊下を設けず家全体が一体空間になるように

    吹き抜けのある家

    ヒートショックを抑えるためには、間取りにも工夫が必要です。

    吹き抜けなどの上下に広がりがある構造を採用すると、1階のリビングで暖房をつければ2階の廊下やホールも温まり、家全体の温度差が少なくなります。

    また、廊下を作らずに、リビング・ダイニング・キッチンのほか、洗面所や浴室、トイレが一体空間になるように設計するのも良いでしょう。

    そうすることで、キッチンで使った熱が家の空気を暖める役割を担ってくれます。

    建具は引き戸がおすすめ

    引き戸のリビング

    体空間にすることで、暖かい空気が家中に行き渡りますが、室内には区切りがあるほうがプライバシーや断熱性能の面でよいこともあります。

    空間を仕切る場合は、通常の開き戸よりも引き戸がおすすめです。

    引き戸の場合、少し隙間ができるため、その隙間を暖かい空気が流れ、寒暖差を緩和してくれる効果があります。

    家の中の熱は、窓やドアなどの開口部から放出されることが多いです。そのため、窓やドア、玄関などに使う建具も断熱性の高いものを選ぶとよいでしょう。

    住まい全体の温度管理も重要

    全館空調を取り入れると、住まい全体の温度を管理しやすくなります。

    冷暖房・換気・空気清浄を一括で管理できるようになるため、家の中の寒暖差が少なく、季節を問わず室内を快適な温度に保てます。

    このほか、床暖房を導入するのもヒートショック対策としては有効です。床を暖かくすることで、室温を上げなくても冬の室内で快適に過ごすことができます。

    リビングに設置されていることが多いですが、浴室やトイレ、階全体の床に導入することも可能です。

    玄関ホールを設けることで冷気を遮断

    玄関は人の出入りとともに、外からの冷たい空気が一緒に入ってきます。

    家の中の温度を下げないためには、外からの冷気が入らないようにすることが大切です。

    玄関に扉付きのホールを設置したり、玄関土間やシューズクロークを作れば、外から入る冷気の流れを止めてくれる効果があります。

    窓には二重サッシを取りいれる

    冬の居室で窓に近づくとひんやり寒いと感じることがあります。

    窓などの開口部は冷気を取り入れやすく、熱が逃げやすいもの。

    室内の熱を逃がさないように、窓の断熱性にも気を配りたいものです。窓を小さくすれば、断熱性能は上がります。

    しかしそれでは、採光や開放感もなくなってしまいます。明るく風通しのよい空間を保ちつつ、断熱性も高めたいなら断熱性の高いガラスや二重サッシがおすすめです。

    また、既存のガラスに断熱シートやフィルムを貼ることでも、窓からの受ける外気温の影響を妨げることができます。

    特に注意が必要な浴室やトイレのヒートショック対策

    トイレと浴室

    ヒートショックは家の中で起こりやすい事故ですが、特に浴室やトイレの発生率が高いといわれています。

    家づくりにおいて注意しておきたいポイントをおさらいしましょう。

    浴室は断熱性の高い構造を採用する

    最も温度差が激しくなりやすい浴室は、断熱性の高い構造を採用するのがおすすめです。

    高性能なユニットバスや、フルオーダー設計の浴室を採用し、設備も高性能なものを揃えましょう。

    特に寒さが厳しい地域は朝晩の冷え込みが非常に激しいので、暖房器具・床暖房・全館空調などをフル活用し、温度差を極限までなくしてみましょう。

    手すりなどのバリアフリー設備を設置

    ヒートショック対策において気を付けるべきは、温度だけではありません。

    長湯などをすると心臓に負担がかかりやすくなり、疲労感によって転倒することもあります。

    また、浴槽から急に立ち上がると血圧が急激に下がり、立ちくらみが起きて転倒する危険性があります。

    そんなときのために、手すりをつけておくと万一のときも安心です。


    転倒すると骨折などにもつながりかねません。途中で掴むことができれば、転倒を防ぐことができます。

    暖房器具を設置する

    日本の家の場合、浴室やトイレはどちらかというと北側など寒い場所に設置されていることが多いです。

    そのため、室内との温度差を少なくしても、多少寒さが気になるということがあります。

    脱衣所などに浴室暖房を導入することで、より暖かく、快適で安全なバスタイムを過ごせます。

    また、浴室暖房には、乾燥機能がついているものもあります。カビの繁殖を抑えられるほか、洗濯物を乾かすときにも非常に便利です。

    ヒートショック対策で快適で安全な家をつくろう

    暖かい様子
    Photo by Valeriia Miller on Unsplash

    今回はヒートショックの特徴や対策について詳しく解説しました。

    ヒートショックの発生原因のほとんどは家にあるため、注文住宅の場合は特に最初の設計プランを入念に練り込みましょう。

    多少コストがかかっても、安心して長く暮らせる家を建てたほうが結果的にお得になるケースが多くなります。

    寒さが激しい地域に住んでいる人は、万全のヒートショック対策をして快適・安全な生活を手に入れましょう。