木造住宅を建てる場合、どのような「工法」であれば、住む人にとって快適な家ができるでしょうか。
木造住宅を建てる「工法」は3種類あり、建物の骨組み、つまり構造のつくり方で分けられます。
- 木造軸組工法(在来工法)
- 木造枠組壁工法(2×4工法:ツーバイフォー)
- SE構法
この記事では、木造住宅の工法とそれぞれの特徴とメリットについて解説します。
家づくりを検討する前に、ぜひ参考にしてください。
目次
木造住宅の工法は3種類
木造住宅は、骨組みとなる構造部分に木材を使った住宅を指します。
日本でも一般的な住宅形式です。
住宅で採用される骨組みの構造は、木造以外に鉄やコンクリート資材を使った鉄骨造と鉄筋コンクリート(RC)造です。
木造住宅は他の構造よりも日本の風土に合い、熱伝導や湿度調整などに優れた効果があります。
また、建築コストも抑えられるため、多くの新築住宅が木造で建てられています。
- 木造軸組工法(在来工法)
日本古来の工法 - 木造枠組壁工法(2×4工法:ツーバイフォー)
明治時代初頭に輸入された工法 - SE構法
1997年から展開する工法
中でもSE構法は耐震性と自由設計を両立させた工法で、木造大型建築物の技術を一般住宅に合わせて開発された新しい工法です。
すでに全国累計25,000棟が建てられています。
木造軸組工法(在来工法)の特徴
木造軸組工法(以下、在来工法)は、柱と梁にほぞと呼ばれる穴やみぞをつくり、交差させて骨組みをつくる工法のことです。
地震や強風などの揺れによる崩壊を防ぐため、柱と柱の間に斜めに木材をはめ込む「筋交い」を設置し、耐震性を高めています。
歴史のある工法のため、ほとんどのハウスメーカーや工務店で建築しており、立地条件や土地の形状などに幅広く対応できる工法です。
柔軟な設計プラン
在来工法は比較的自由に設計できるため、洋風建築にも和風建築にも対応できるメリットがあります。
さまざまな屋根の形状や室内・外壁のデザインも自由に設計できます。
ただし3階建て住宅など、構造的に不安がある建物に対しては、荷重を支える壁や柱を追加することで強度を保つといった工夫が必要です。
そのため壁や柱が多くなり、空間を広く使えなくなる制限があります。
リフォームしやすい
在来工法の柱と梁の接合部は変更可能な構造になっているため、リフォームや増改築にも対応しやすい点が特徴です。
柱と柱の間隔を広くしたり、窓の大きさを調整したりするのも自由です。
数十年・数世代にわたって同じ家に住み続けることを考えた場合、リフォームのしやすさは工法選びの重要な基準です。
また、ライフサイクルに応じて住む人の居住空間を変えていくことで、長く住み続けられるでしょう。
職人の技術が重要
在来工法は古くからの工法のためか、設計プランに曖昧さがあっても、職人の技量次第で完成できてしまう場合もあります。
近年は、工場で木材をある程度加工してから現場に持ち込む、プレカット工法が主流です。
工期がかかる
在来工法は他の工法に比べると規格化されておらず、複雑な加工が必要な場合は職人の熟練度に左右される場合も多く、工期が長期になる傾向にあります。
また設計が自由であるため、プランによっては時間のかかる工程が発生すると、工期が大幅に延長することもあります。
2×4工法(ツーバイフォー)の特徴
2×4工法(以下、ツーバイフォー)は19世紀の西部開拓中にアメリカで開発され、アメリカやカナダの木造住宅で用いられてきました。
日本には明治期に輸入され、職人に頼ることなく大型建築物を建てられるようになりました。
特徴的なのは、壁・床・天井といった面材で箱をつくるように建物を建てるという方法です。
規格化されたツーバイ材という2×4インチの木材で枠をつくり、構造用合板をはって耐力壁とします。
構造がシンプルなため品質や性能を保ちやすく、柱のない空間ができるといったメリットがあります。
ただし面材そのものが強度を保つ構造で形を変更しづらいため、設計の自由度は下がります。
優れた耐震性
ツーバイフォーは六面体構造となっており、耐震性は、在来工法に比べて1.5〜2倍の耐震性があるといわれています。
特に地震の横揺れによるねじれの圧力に強く、力を分散させる働きがあります。
1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大地震でもツーバイフォーの家は地盤以外、地震の揺れが原因となる全壊・半壊の被害は数件しかなく、優れた耐震性を示しました。
規格資材で短工期
ツーバイフォー工法は工程が規格化されているため工期が短く、その分コストダウンが見込めます。
資材はほとんどが工場で加工され、面材のパネルを現場で固定する工法のため、品質が左右されることもありません。
ハウスメーカーや工務店によっては、得意不得意があるため、施工を依頼する会社はしっかり検討して選びましょう。
職人の技量に左右されない
施工する工程も効率よく作業できるようにシステム化されているため、建物の品質は携わる職人に左右されません。
増改築しにくい
ツーバイフォーに使われる天井・床・壁の6面そのものが、耐震性能を担保しています。
そのため設計デザインを変更しにくく、リフォームや増改築には向いていません。
ただし、全くできないわけではなく、建築基準法の範囲内でのリフォームは可能です。
SE構法の特徴
SE構法は木造建築の技術の発展からできた、木造住宅の新しい工法です。
もともと大規模な木造建築物で採用された工法で、1998年の長野オリンピックのスケート場でも使われました。
その後スポーツ施設や教育施設、大型店舗などにも使われています。
2000年代初頭、一般住宅にもその技術を応用し、SE構法が開発されました。
精密に規格化された工法のため、施工できるのは認定制度に合格した工務店だけとなっています。
構造計算による高い耐震性
SE構法では木造ラーメン構法を採用しており、接合部を特殊なSE金物で接合することで建物のフレームを作り出しています。
さらに構造計算を建築する住宅全棟で行うことで、耐震性能を高めるための最適な構造設計を実現。
資材全ての荷重を計算し、必要な柱や壁の位置などを割り出すことで、地震や強風に対する高い耐震性を保っています。
東日本大震災以降の大きな地震でも倒壊件数0の実績があります。
自由度の高い設計が可能
ラーメン構造や構造計算で強固な建物フレームをつくるSE構法では、鉄骨造でしかできなかったデザインが実現可能です。
SE構法で建てられた家は、建物の内側を自由に設計できる「スケルトン&インフィル」の設計手法が可能です。
マンションのリノベーションのように躯体以外の壁や柱を自由に変更できるため、利便性が高い家づくりを実現できるでしょう。
狭小住宅や3階建て住宅が可能
1階への荷重がかかる3階建て住宅や、狭く制限の多い狭小住宅でも、SE構法でなら自由な設計と高い耐震性を両立させることが可能です。
在来工法などでは難しいとされるビルトインガレージやスキップフロアなど、制限のある住宅だからこそ採用したいデザインも構造計算により実現できます。
SE住宅性能保証で安心
SE構法では、全棟に対し「SE住宅性能保証書」が発行されます。
基礎や構造躯体と、それらを構成する金物が原因で住宅に損傷が生じた場合、SE構法登録施工店を通じて保証してくれます。
完成引き渡しから10年間は無償保証となり、10年経過後には指定された検査メンテナンスを実施すると、さらに10年間の保証が延長されます。
割高な工費
SE構法では、SE金物と耐力壁に使われる構造用集成材といった特殊な資材を使用し、全ての住宅で構造計算も行うため、在来工法に比べて建築費用が高額になります。
その分、木造住宅ではSE構法以外では難しい、優れた耐震性能や自由設計を実現できるのがメリットです。
SE構法なら木造住宅でも優れた構造強度を実現
今回は、木造住宅の工法とそれぞれの特徴について解説しました。
SE構法は、長く住む家の安全と快適さ、未来を見据えた間取りづくりができる、木造住宅の最新技術です。
これから住む家をイメージしながら、SE構法を取り入れた家づくりを体験し、どんな家に住みたいかを自由に想像する楽しみを味わってください。