最近建てられた家を見ていると、四角いキューブ型の家が増えた感じがしませんか?
スタイリッシュでモダンな印象の、四角い家にあこがれる人も多いのではないでしょうか。
これらの家のシルエットを決めているのは、フラットな屋根の形状で「陸屋根(りくやね・ろくやね)」と呼びます。
一般的な「切妻屋根(きりつまやね)」との違いはどこにあるのでしょうか。
この記事では陸屋根の基礎知識とメリット・デメリット、気になる防水対策について解説します。
目次
陸屋根とは?
陸屋根とは勾配のない平らな屋根のことで、別名「平屋根(ひらやね)」ともいいます。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物、マンションなどで多く使われている屋根の形状です。
三角形の屋根が多い木造一戸建て住宅も多い中、陸屋根の住宅は目を引きやすいデザインです。
また、直線的でミニマムな形状から、スタイリッシュな住宅を求めている若い世代に人気があります。
モダンな仕上がり
陸屋根は、住宅の外観を直線的かつスタイリッシュ・モダンな印象に演出できるデザインの屋根です。
最近はキューブ型のデザイン住宅が人気のため、陸屋根を使った住宅が増えてきています。
デザイン性の高い住宅は外壁に使う色を白や黒、グレーなどの単色に絞ることが多く、アクセントとして木目調を組み合わせるなど、外観でも個性を強調することが求められています。
陸屋根を採用して窓や玄関の位置などを計算して設計された家は、近未来的だったり、モダンでかっこよかったり、施主のこだわりを表現しやすいでしょう。
屋上スペースとして活用できる
陸屋根は平らな面を活かして、洗濯物を干す場所や、ガーデニング・太陽光発電などを取り入れる場所として活用している家もあります。
特に都市部の庭をつくるスペースがない住宅では、陸屋根をアウトドアリビングなどに使える「自邸の庭」として活用されています。
日当たりがよい陸屋根をうまく使いこなして、プレミアムなプライベート空間を演出してみてはいかがでしょうか。
陸屋根のメリット
陸屋根にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
具体例をあげながら紹介します。
風の被害を受けにくい
陸屋根は、フラットな形状のため強風にも強い構造を持っています。
一般的な切妻屋根や片流れ屋根などは傾斜があるため、下から強い風が吹いた場合に屋根材がめくり上がることがあります。
台風や竜巻など、強風によって屋根が吹き飛ばされる被害をニュースで見た人も多いでしょう。
風に強い陸屋根は、風の被害における不安がある場合は大きなメリットといえるでしょう。
メンテナンスが簡単・安価
陸屋根は切妻屋根など傾斜のある屋根よりも、1回分のメンテナンスコストが抑えられるデザインです。
表面がフラットで作業員が歩けるため、足場を組まずに清掃や補修などの作業ができます。
10〜20年ごとにかかるメンテナンスの費用を節約できるのはありがたいですね。
屋根材を金属屋根(ガルバリウム)にするとメンテナンスが15〜20年ごとにできるため、さらにメンテナンス回数を減らせます。
室内を広くできる
切妻屋根などの三角形のタイプでは天井に高低差ができるため、低いところを基準にして天井をつくることが一般的です。
しかし陸屋根は天井に高低差がなく一番高い位置に天井があります。
そのため、部屋の中が広い空間となり、天井が高く感じられるでしょう。
最上階の居住スペースに、圧迫感を感じさせない開放的な空間ができ上がります。
陸屋根のデメリット
陸屋根はもともと一戸建て住宅にはあまり見られない屋根の形状で、木造住宅に向いているデザインとはいえませんでした。
近年ニーズの高まりもあり、さらに屋根材や塗装材の進化によって、木造一戸建て住宅でも採用されるようになりました。
それでも傾斜のある屋根にくらべるとデメリットがあります。
デメリットもしっかりと把握して、設計に採用するかを検討しましょう。
断熱性が低い
陸屋根には形状的に屋根と天井の間に空間がないため、日光の熱が天井の温度を上昇させやすい特徴があります。
そのため夏場は特に、最上階の居住スペースが蒸し暑くなる可能性が高いでしょう。
熱を逃がす方法には、屋上を緑化したり、ウッドデッキやタイルを張ったりして、直接屋根材に日が当たらないようにしましょう。
ロフトの設置ができない
三角屋根タイプであれば、天井の高低差を活かして、最上階にロフトや収納スペースを確保できます。
しかし陸屋根では天井の高低差はなく、屋根下の部屋は広い空間としてしか活用できません。
ロフトや収納スペースを確保したい場合は、設計段階から設計者に相談し、別の場所にスペースをつくってもらいましょう。
雨漏りしやすい
陸屋根には全く傾斜がないわけではありません。
雨水を残さないように、わずかに傾斜しています。
それでも一般的な三角屋根タイプにくらべると、水はけが悪くなります。
そのためコケやカビが生えやすく、そこから雨漏りの原因になるため注意が必要です。
メンテナンスをきちんと行うことで、雨漏りによる修繕工事でかかる高額な費用を抑えられます。
メンテナンス頻度が高い
陸屋根に使われる防水加工は、三角屋根タイプの屋根材のメンテナンスに比べて耐用年数が短くなります。
屋根材の寿命は一般的に20〜30年ですが、防水加工の耐用年数は10〜20年のため、メンテナンスの頻度は高くなるでしょう。
ただ、陸屋根はフラットな構造で足場を組む必要がない場合も多いため、1回分のメンテナンス費用は比較的抑えられます。
陸屋根の防水対策は?
ここでは具体的な陸屋根の防水対策について解説します。
これらを把握することで、陸屋根を長持ちさせられるため、ぜひ参考にしてください。
防水工事が必須
構造上水はけが悪くなりやすい陸屋根。
防水効果が切れた途端、雨漏りが発生することもあります。
陸屋根にはわずかな傾斜によって流れてきた水を雨どいに流すための排水溝が設置されていますが、清掃が行き届かず詰まって水たまりができると、そこから防水加工が劣化してしまいます。
メンテナンスを欠かさず行い、劣化が進まないうちに防水加工を施しましょう。
防水工法は3つ
防水工法は主に3つの工法があります。
防水材を塗る工法、防水シートを貼る工法、アスファルト工法です。
種類 | 特徴 | 耐久年数 |
---|---|---|
ウレタン防水工事 | ・一番主流な工事。 ・継ぎ目のない完全防水層で耐熱性が高い。 ・工程が単純で安価、工事日数も少ない。 ・乾燥に時間がかかる。 ・歩行OK。 | 12年前後 |
FRP防水工事 | ・ガラス繊維強化プラスチック(FRP)を使用。 ・継ぎ目のない完全防水層。 ・強度、耐久性がある。 ・紫外線や衝撃に弱い。 ・臭いがある。 ・歩行OK。 | 10年前後 |
種類 | 特徴 | 耐久年数 |
---|---|---|
塩化ビニールシート防水工事 | ・色や模様がプリントされたものもあり、意匠性が高い。 ・紫外線・熱・オゾンに対して耐久性がある。 ・工事の難易度が高い。 ・強風に弱い。 ・軽歩行OK。 | 13年前後 |
ゴムシート防水工事 | ・合成ゴムを使用。 ・安価で工事日数も少ない。 ・応急処置として部分的補修(ひび割れなど)に向いている。 ・工事の難易度が高い。 ・歩行OK。 | 13年前後 |
合成繊維不織布にアスファルトを含んだシートを貼り重ねていく工法。
種類 | 特徴 | 耐久年数 |
---|---|---|
トーチ工法 | ・アスファルトシートをトーチバナーであぶり 液状化することで、継ぎ目を貼り付ける。 ・シート同士を隙間なく接着可能。 ・煙や臭いが発生。 ・歩行NG。 | 20年前後 |
常温工法 | ・液状のアスファルト材でシートを張り合わせていく冷工法。 ・接着技術が必要。 ・熱による煙や臭いはない。 ・歩行NG。 | 20年前後 |
トップコートの塗り替えは5年に1度
防水工事が終了したら、その上にトップコートを塗り重ねることで、紫外線から防水層を守ります。
トップコートが剥がれると防水加工が劣化しやすく、陸屋根の特徴である断熱性の低さから室内が暑くなってしまいます。
陸屋根に施した工法をできるだけチェックして色あせや剥がれをいち早く見つけて、トップコートを塗り替えましょう。
基本的には5年に1度を目安としてください。
陸屋根を採用しておしゃれでモダンな住宅をつくろう
ここまで陸屋根の基礎知識とメリット・デメリット、気になる防水対策について解説してきました。
陸屋根はおしゃれでモダンな外観を実現してくれる屋根として、新築住宅で人気が高まっています。
しかし長く快適に暮らすためには陸屋根にあったメンテナンスが必要です。
陸屋根ならではの特徴を理解し上手に活用することで、スタイリッシュでモダンな家を実現しましょう。
近年はデザイン性やコスト面においてメリットを感じる人が増え、木造一戸建て住宅でも採用されるようになりました。