天空率で住宅デザインの幅が広がる?天空率について詳しく解説

    建物を建築する際には、間取りや外装・内装のデザインの他に、外観規制や耐震構造など、さまざまな条件を満たす必要があります。

    なかでも建物の高さ制限や日影制限などの規制は、建物のデザイン自体に大きく影響するものでした。

    そんななか、2003年に「天空率」という新たな制度が施行され、これまで制限が多かった「高さ制限・斜線制限」がかなり緩和されました。

    今回は、この天空率について詳しく解説しますのでチェックしてみてください。

    天空率って何?

    天空率とは、任意の測定ポイントから魚眼レンズを空に向けた時に、建物が写る面積を除いた「空が見える割合」のことを言います。

    天空率を導き出すための計算式は以下の通りです。

    天空率RS(%)=円の面積(As)-建物投影面積(Ab)/As×100

    天空率を計算した際に、斜線制限による計算結果と同じ、またはそれ以上に空が見えるのであれば、通風や採光の確保ができると認定され建築が可能になります。

    天空率は2003年に定められた新たな規則

    天空率は2003年年1月、建築基準法改正時に新たに定められた規則です。

    建築基準法第56条の7項目「高さ制限」に定められました。

    建築基準法|第五十六条

    7 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。
    引用:電子政府総合窓口 建築基準法

    天空率の適用で住宅デザインの幅が広がる

    天空率を適用すると、それまでは斜線制限により高い建物が建てられなかった土地でも、希望の高さの建物が建てられるようになります。

    街の中で、建物の上部が斜めにカットされたデザインをみたことはありませんか?

    これは、斜線制限を回避するために建てられたもの。

    新しく建てる建物が、周辺の道路・通路・建物の採光・日照を奪わないために、高さを制限してデザインされています。

    不自然に上部がカットされた建物は、デザイン的に違和感を覚えるだけでなく、居住性の面から見ても難があるため、斜線制限を回避するためにデザインすることは実情と結びついていないとされていました。

    一方、天空率を適用して敷地を有効活用すると、住宅デザインの幅が広がるだけでなく、住みやすさの面から見てもメリットを得られるようになります。

    天空率を適用すると何が緩和できる?

    天空率は建築基準法第56条の「高さ制限」に定められたものです。

    すなわち「道路斜線・隣地斜線・北側斜線」の3つを緩和できます。

    天空率が適用されるまでの高さ規制では、新しい建築物の周辺の

    • 道路
    • 通路
    • 建物の通風
    • 採光
    • 日照

    を確保することに引き換え、全ての建物が同じ高さ・勾配の制限を受けてしまっていました。

    ただ、これでは建物の規模や周辺の空き地環境などが考慮されないまま制限を受けることになってしまうため、それを緩和するために天空率が適用されました。

    天空率の適用で緩和されないものとは?

    天空率の適用で緩和されないのは、「道路斜線・隣地斜線・北側斜線」の3つ以外です。

    建物の高さを決める際には、上記の3つ以外にも「日影制限・高度斜線規制・絶対高さ制限」などの守らなければならない規定があります。

    これらの規定は、天空率を適用しても緩和されません。

    天空率の判定基準とは?計画建築物と適合建築物を比較して判定

    天空率は上記にも記載した通り、「天空率RS(%)=円の面積(As)-建物投影面積(Ab)/As×100」の計算式から導き出します。

    ただ、天空率の計算はとても難しいため、簡単に計算することはできません。

    天空率の計算は「Jw-cad」や「AutoCAD」など、天空率の計算に対応しているCADソフトや、天空率を解析するソフトを使って行います。

    計画建築物を測定

    天空率を計算するためには、建築予定の土地を指定のポイントから測定することから始まります。

    まずは計画建築物(これから建てる予定の建物)の前側の道路反対側に道路巾2分の1以内の間隔で測定器を設置。

    空に向けて魚眼レンズや全天空カメラで撮影します。

    ここで算出された計画建築物の高さと適合建築物の高さを比較して、天空率適用の合否を判断します。

    計画建築物と適合建築物を比較して合否を判定

    適合建築物とは、その土地で建てられる最大サイズの建物のこと

    天空率適用可否は、この適合建築物と計画建築物の大きさを比較して算出します。

    合否の判定基準は、計画建築物が適合建築物の大きさより小さいこと。

    計画建築物のサイズが小さければ、天空率を適用することができます。

    天空率と適用するメリットとは?

    天空率について解説しましたが、難しい点が多くよく分からないという方も多いでしょう。

    実際に天空率の計算や、適用の合否について自分で判断することはないので、難しい計算法を覚える必要はありません。

    住宅を建てるにあたって、「天空率というものがある」ということを頭に入れておく程度でいいでしょう。

    ここでは、住宅を建てるに当たって知っておきたい、天空率を適用するとどのようなメリットがあるのか解説します。

    高さ制限が緩和され住宅デザインの幅が広がる

    斜線制限を回避するために建てられた建物は、不自然に建物の上部がカットされることがあるとお伝えしました。

    それまでの高さ規制では、周辺の空き地状況や建物の高さなどに関係なく規制がかかっていたため、道路に面した部分では不自然なデザインが採用されています。

    ただ、天空率を適用すると、周辺の建物・道路・通路の採光空間をある程度確保すればいいという基準で建物を建てられるようになったため、従来と比べて希望のデザインに近い家づくりができるようになりました。

    不自然に建物上部をカットする必要がなくなっただけではなく、建物の規模に合わせて奇抜なデザインにすることもできるようになったのです。

    利便性・快適性の高い間取りをデザインできる

    天空率の適用はデザインの幅を広げるだけでなく、住宅の利便性・快適性も高めます。

    上記にも記載した、上部が斜めにカットされた建物は、デザイン性に違和感を感じるだけでなく、暮らし安さの面でも劣る部分が多くありました。

    一方、天空率を適用した住宅は、希望に近い間取りやデザインにすることができ、利便性や快適性の高さも叶えることができます。

    天空率による斜線制限除外を受けるには?

    天空率適用に夜斜線制限除外を受けるためには、上記で解説したような算出データをもとに、天空率申請を行わなくてはなりません。

    ただ、天空率の適用はマンションやオフィスビルなどの建物を中心にしており、一般住宅で適用されるケースは少ないのが現状で、行政機関によっては取り扱い方法が異なる場合があります。

    天空率適用は、適合建築物の区分けの適正・測定ポイントの配置の正確性・天空率の計算結果の正確性などのチェックポイントで判断されます。

    重要な必要書類のひとつである「天空図に対する求積図」は、審査期間によって規定が異なるので事前に確認しておくことが大切です。

    天空率の適用は住宅デザインの自由度をあげる

    新築戸建て

    今回は住宅を建てる上で知っておきたい「天空率」について解説しました。

    天空率を適用することで、従来の建物よりデザインの自由度を高め、利便性・快適性の高い住宅造りをすることができます。

    ただ、複雑で分かりにくいことが多い内容でもあるので、よく分からないという方はハウスメーカーや工務店で相談してみてくださいね。