「三世帯住宅」は家族同士でコミュニケーションをとりながら、楽しい毎日を過ごせる素敵な家です。
しかし間取りに注意しなければ、騒音トラブルなどでストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
そこで今回は、三世帯住宅のメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
合わせて意識したい間取りのポイントも紹介するので、三世帯住宅の建築を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
三世帯住宅とは
「三世帯住宅」とは、3つの世帯が暮らす住宅のことです。
2つの世帯が一緒に住む「二世帯住宅」は、よく耳にしたことがあるかもしれません。
二世帯住宅のほとんどは「親世帯+子世帯」といったパターンですが、3つの家族が集まる三世帯住宅の組み合わせは多種多様です。
どのような世帯が集まるのかによって、配慮しなければならないことも変わるため覚えておきましょう。
二世帯住宅との違いは何?
前述のとおり、二世帯住宅ならば「親世帯+子世帯」の組み合わせが多いですが、3つの世帯が集まるとパターンはさまざまです。
たとえば「親夫婦(70歳)+子ども夫婦(50歳)+孫夫婦(30歳)」の組み合わせも考えられます。
一見みんな血のつながりがある家族のように思えますが、それぞれが夫婦のため、血がつながっていない人の割合が二世帯住宅よりも高まります。
このように三世帯住宅は、一つ屋根の下に複数の他人がいることで、生活において配慮しなければならない点が多くなるのです。これが二世帯住宅との大きな違いといえるでしょう。
三世帯住宅の居住パターンと特徴
次に三世帯住宅における住居パターンと特徴をみていきましょう。
親・子・孫の三世代型
まずは先にも少し紹介した三世代が一緒に住むパターンです。
三世代とは「親とその子ども、さらにその子ども」というように縦のつながりがある家族のこと。
この三世代型は親夫婦、つまり祖父母はすでに70〜80歳の可能性があります。
高齢になった祖父母のためにバリアフリー設備を取り入れたり、近い将来その住宅に住む世帯の構成が変化したりすることも検討しておく必要があるでしょう。
親・子・子の兄弟同居型
「親世帯+子ども世帯(兄・姉夫婦)+子ども世帯(弟・妹夫婦)」のように、兄弟同居型も少なくありません。
この場合、子ども夫婦のパートナーたちはまったく血が繋がっていない赤の他人です。
そのためプライバシーを重視した間取りにする必要があります。
たとえば生活リズムが違っても暮らしに影響がないように、水回りの音が響かないような間取りにしたり、下の階に足音が聞こえないように床と天井に防音素材を取り入れたりといった工夫が考えられます。
建築コストを削りたいからといってプライバシーへの配慮を怠ると、毎日のように聞こえる生活音にストレスを感じてしまうでしょう。
子・親・親の介護型
「子ども世帯+親世帯(夫の両親)+親世帯(妻の両親)」といった介護型の三世帯住宅もあるでしょう。
少子化問題を抱えている日本では、今後一人っ子の家庭も増えてくることが予想されます。
一人っ子同士が結婚して家族を築けば、このパターンの三世帯住宅は目立ってくるかもしれません。
介護型の住居パターンでも、やはりプライバシーに配慮した設計が求められます。
なぜなら、夫の両親と妻の両親は赤の他人だからです。お互いに距離を縮めたいと考えているなら、コミュニケーションを図れるような間取りにするのも素敵ですね。
家族+賃貸併用型
どのような組み合わせであれ、将来的には世帯構成が変化することも考えられます。
たとえば祖父母夫婦が介護施設に入居したり、子ども夫婦が転勤するために引っ越したり、一緒に住んでいた独身の兄弟姉妹が結婚して出て行ったりすることもあるでしょう。
ライフスタイルの変化が生じると、一部の住居スペースを使わなくなります。
そこで空いた住居を賃貸物件として貸し出す人も少なくありません。
これを「賃貸併用型」といいます。
ただし賃貸併用型の三世帯住宅を検討している場合には、間取りを「完全分離型」にすることが重要です。部分的にも共用スペースがあると、プライバシーを守れない間取りなので貸し出すことは難しいでしょう。
三世帯住宅のメリット
ここからは三世帯住宅の3つのメリットを紹介します。
共有部分が多くトータルコストが安い
三世帯住宅の場合、戸建て住宅を並べて3軒建てるよりもトータルコストが安くなる点が最大のメリットといえるでしょう。
三世帯住宅は基礎部分や外壁、屋根などを共有しているためその分費用を浮かせることができます。
また一世帯がすべての住宅コストを負担するのではなく、三世帯で分担できる点も嬉しいポイントです。
子供のお世話や高齢者の介護がしやすい
世帯の組み合わせによっては、子どもの世話や高齢者の介護がしやすいこともメリットです。
たとえば「親世帯+子ども世帯(兄・姉夫婦)+子ども世帯(弟・妹夫婦)」の組み合わせの場合、兄・姉夫婦の子どもの面倒を弟・妹夫婦が見てあげることができます。
もちろんその逆もあるでしょう。
また「親世帯+子ども世帯+孫世帯」で暮らす場合には、親の介護を孫世帯も担うことよって、日本で問題となっている老老介護を避けられるのです。
コミュニケーションをとりやすい
同じ家に住んでいることで、当然コミュニケーションをとりやすくなります。
別々の家で暮らしていると、どうしても話す機会が減ってしまいますよね。
しかし三世帯住宅にすれば、物理的にも距離が近くなり、ちょっとした挨拶や会話をしやすくなります。
家族間のコミュニケーションをより大切にしたいと考えている場合、三世帯住宅は適しているといえるでしょう。
三世帯住宅のデメリット
続いて、三世帯住宅のデメリットを3つ説明します。
これらの課題も理解したうえで検討していきましょう。
土地購入費・建築費が高い
三世帯住宅は3つの家族が一緒に住むわけですから、当然それなりの広さが必要になります。
1軒の戸建て住宅よりも広い土地が求められるため、必然的に土地購入費用が高くなるでしょう。
またプライバシーを考慮したつくりにするためには、先にも説明したように防音素材を取り入れたり、間取りを工夫したりしなければなりません。
そのため建築費が高くなる傾向があります。あらかじめ三世帯で予算について話し合っておくとよいでしょう。
売却するときに買い手がつきにくい
戸建てよりも二世帯住宅のほうが売却しにくいといわれていますが、それよりも世帯数が多い三世帯住宅は、さらにニーズが少なく買い手がつきにくいでしょう。
もしも売却することを少しでも考えているのなら、共用スペースがない完全分離型を検討しておくのも一つの手段です。
また建物や土地を共有名義にしている場合、全員の同意がなければ売却できません。こうしたことからも三世帯住宅は売却しにくいといえるでしょう。
居住者の入れ替わりが多い
居住者の入れ替わりが多い点もデメリットの一つです。
家に住んでいる人数が多い分、ライフスタイルの変化が起こりやすくなります。
たとえば介護施設への引越しや死亡、離別、結婚などです。
人が入れ替われば住宅に求めることも変わってしまう可能性があるため注意しましょう。
三世帯住宅における間取りのポイントを解説
最後に、三世帯住宅を建てるときに意識しておきたい間取りのポイントを解説します。
プライバシー重視なら完全分離型がおすすめ
プライバシーを重視しているなら、「完全分離型」の間取りがおすすめです。
門扉は一つですが玄関ドアは3つ存在し、居住スペースにはキッチンやお風呂、リビングなどがそれぞれに備わっています。
あるいは玄関は全員で共用し、3階建てにして各階で世帯を分けているケースもあるでしょう。
まるで一つのマンションのなかで三世帯が暮らしているかのような間取りになります。
ただし庭やバルコニーなどは共用部分になる可能性が高いため、リビングの窓の位置を工夫しなければ、庭から室内が丸見えになってしまうこともありますので注意しましょう。
共有スペースを増やして毎日の会話を楽しく
これまでにも述べてきたとおり、お互いのプライバシーを守る間取りも重要です。
しかし共有部分がまったくない設計にしてしまうと、マンションやアパートなどと変わらなくなってしまいます。
そこで庭やテラス、屋上などといった共有スペースを増やしてコミュニケーションが図れるようにしておくのがおすすめです。
お互いの心の距離が近くなければ育児や介護をサポートすることもできず、三世帯で暮らす意味がなくなってしまうからです。
毎日の会話を楽しくできるように、うまく共有スペースを検討していきましょう。
フロア型の場合は防音対策を完璧に
狭めの土地に3階建ての「フロア型」三世帯住宅を建てる場合は、壁だけでなく上下床材の防音も徹底しておきましょう。
賃貸住宅やマンションなどでもよくある音トラブルは、三世帯住宅でも注意しなければならない問題です。
コストをケチらず、防音対策は完璧にしておくことが大切だといえるでしょう。
将来を見据えてバリアフリー設備を施工
祖父母と一緒に暮らす場合、将来を見据えてバリアフリー設備を取り入れましょう。
たとえば廊下や階段、浴室などに手すりを設置したり、玄関には段差解消のためのステップを取り付けたりです。
三世帯住宅を建てる場合には、そこに住む全員にとって住みやすい環境になるような配慮を心がけましょう。
後悔しない三世帯住宅を建てよう
今回は三世帯住宅の居住パターンやメリット・デメリットについて解説しました。
赤の他人と暮らすことになる三世帯住宅では、お互いの希望を取り入れながら誰にとっても住みやすい家づくりを目指すことが大切です。
間取りのポイントを意識しながら、後悔しない三世帯住宅を建ててくださいね。