現在のデザイン界が注目するセシリエ・マンツ|歴史や代表作を紹介

    セシリエ・マンツは、現在のデンマークデザインを代表する女性デザイナーです。

    作品のバリエーションは幅広く、日本のインテリアブランドからも多数の製品が発表されています。

    この記事では、セシリエ・マンツの成り立ちやデザインの特徴、代表作について詳しく解説します。

    自由な発想が魅力のセシリエ・マンツとは?

    1972年にデンマークで生まれたプロダクトデザイナー「セシリエ・マンツ」。

    手掛けるデザインのジャンルは家具だけに留まらず照明や陶器、ガラス、テキスタイル、バッグ、オーディオ製品、インテリアアクセサリーなどバラエティに富んでいます。

    セシリエは多くの北欧家具デザイナーと異なり、家具職人としての経験がありません。

    それが固定概念にとらわれない斬新なアイデアに結びついているのでしょう。

    陶芸家の両親のもとに生まれる

    セシリエの両親「リチャード・マンツ」と「ボディル・マンツ」は陶芸家でした。

    幼少期は母親と共に有田・波佐見地区で生活した経験をもち、親日家としても知られています。

    芸術が身近にある環境もあってか、小さい頃から絵を描くのが好きで画家を目指していました。

    高校卒業後は王立芸術アカデミーの美術学校とデザインスクールを受験しますが、第二志望のデザインスクールに進学が決定します。

    入学当初は通っていて合わなければ、退学も視野に入れていたようです。しかしデザインに魅力を感じ、デザイナーを志します。

    自身の事務所を設立し注目を集める

    セシリエは交換留学制度を利用し、フィンランドのヘルシンキ芸術デザイン大学でも学んでいます。

    1997年に卒業した翌年には、コペンハーゲンに自身の事務所を設立。

    仕事が軌道にのるまでは、先が見えない状態でした。

    そんな状況のなか、ハシゴと椅子を組み合わせた「ラダー」や、長さの異なる木材を使ったハンガー「クローズツリー」、分解できる円形テーブル「ミカド」などの個性的な作品を生みだし、世間から注目を集めるようになりました。

    照明器具やガラス製品のデザインで成功を収める

    セシリエの名が世間に広く知られるようになったきっかけは、家具ではなく照明器具でした。

    ベルを思わせるフォルムが特徴の「カラヴァッジオ」は、カラーやサイズのバリエーションが豊富なことから、商業施設を始め一般家庭にも取り入れられました。

    2006年にはデンマーク王室も御用達の老舗ブランド「ホルムガード」より、吹きガラス製のシリーズを複数発表しています。

    そのなかの一つである「ミニマ」がデンマーク「デザイン・アワード」を受賞し、高く評価されました。

    セシリエ自らホルムガードのガラス工房に通い、職人から成形技術や特性を学んだ努力の証といえるでしょう。

    オーディオメーカーとのプロジェクトが転機となる

    セシリエの最大の転機となったのが、デンマークの高級オーディオ・ビジュアルブランド「バング&オルフセン」とのコラボレーションです。

    2012年にポータブルスピーカー「ベオリット12」を手掛けてから、毎年新作を発表。

    どの作品も音楽プレーヤーと接続できるスピーカーとなっています。

    1970年代頃の同社製品によく使われていた「アルミニウム」を用いて、現代風にリ・デザイン。

    本体に有孔アルミニウム、ストラップにはレザーという性質の異なる素材を合わせ、新しいけれど懐かしさを感じるデザインに仕上がっています。

    斬新なデザインが話題を呼び「バング&オルフセン」を象徴するアイテムの一つとなりました。

    金沢21世紀美術館のイベントの企画を担当する

    セシリエは2017年に金沢21世紀美術館で開催された「日々の生活 – 気づきのしるし」展にも関わっています。

    日本とデンマークの外交関係樹立150周年記念となるイベントであり、日本のキュレーターと共同で企画を担当しました。

    両国の日常にある家具を通して普段の暮らしについて考察し、デザイン展示の新しい様式として注目を集めることになります。

    セシリエ・マンツの手掛ける代表的な作品4選

    細部にまでこだわりを感じるセシリエの作品たち。

    優しさを感じるデザインと、現代の暮らしに馴染む使い勝手の良さが魅力です。

    ここからは、代表作を4つご紹介します。

    細部にもこだわりを感じるカラヴァッジオ

    カラヴァッジオ

    「カラヴァッジオ」は、流れるようなラインが美しいペンダントライト。

    セシリエらしいミニマルかつ高度な技術を用いながらも、柔らかさを感じる佇まいが印象的です。

    当時テーマカラーとして、黒の本体に落ち着いた赤のコードを組み合わせたタイプが発表され、メディアでも話題になりました。

    マットな質感のシェードが、空間にモダンな雰囲気をプラス。

    コードには編み目状の模様が施されており、点灯すると浮きあがって見えるのもポイントです。温かみが増し、消灯時とは違った表情に。

    すっきりとしたフォルムは場所や用途を選ばないため商業施設や職場、自宅など幅広く活用されています。

    ガラスの美しさを活かしたミニマ

    ミニマ

    無駄がないデザインによって、透明のガラスの美しさが引き立つ「ミニマ」。

    冷蔵庫のポケットに、ぴったり収まるボトルです。

    密閉性が高いフタが付属しており、飲み物の鮮度を保てます。

    牛乳やジュース、液体調味料を保存するのに最適。

    購入時のペットボトルやパックから移すだけで庫内が整います。プレゼントとしても人気があるアイテムです。

    四角形のレッグが主役のエッセイテーブル

    エッセイテーブル

    2009年にデンマークの家具メーカー「フリッツ・ハンセン」から発表された「エッセイテーブル」。

    直線的なラインがスタイリッシュな印象です。

    無垢材を使用し高級感あふれる仕上がりになっています。デザインの象徴となる四角形のレッグが、上品かつモダンな雰囲気を演出。

    天板と脚がつながる部分には黒い金属のパーツを使い、軽やかさをプラスしています。

    細かいところまで妥協しない、セシリエの職人気質が感じられる作品です。

    2009年にデンマークのインテリア・ライフスタイル雑誌「BO BEDRE(ボーベダー)」より、その年を象徴するデザインとして賞が授与されました。

    丸みのあるフォルムが特徴的なプフ

    プフ

    丸みを帯びた柔らかいフォルムが印象的な「プフ」。

    座る場所が足りないときや、リラックスしたいときのお供に最適です。

    「ポール・ケアホルム」のキャンバス地と、デンマークのテキスタイルメーカー「クヴァドラ社」のリミックス地を組み合わせたり、境目にレザーのパイピングを施したりなど、細部にまでこだわりを感じます。

    柔軟な発想の持ち主セシリエ・マンツ

    セシリエ・マンツさんトークショー

    過去のデザインに敬意をはらいつつ、現代の暮らしに合わせて新しいものを生みだすセシリエ・マンツ。

    幅広いアイテムを手掛けながらも軸はブレません。

    枠にとらわれない柔軟なアイデアによって誕生した作品は、近年のデザイン界において多くの人から注目を集めています。