「床下」とは名前の通り、床の下側に設けられたスペースのこと。デッドスペースになりやすい場所を有効利用できることが魅力です。
キッチンの床下の一部を取り外し、漬物や梅酒などの保管場所として使われていた「揚げ板」が始まりといわれています。
この記事では、床下の基本知識や暮らしを快適にする方法、トラブルへの対処法についてご紹介します。
床下の構造はどうなっているの?
普段あまり目にすることのない床下は、どのような構造になっているのでしょうか?
まず建物を支える「基礎」があり、「大引き(おおびき)」という太い角材が渡されます。そこに「根太(ねだ)」とよばれる支柱が取り付けられその上に床、という構造です。
一般住宅における床下の活用法
一般住宅では、床下を収納スペースとして活用するのが最もポピュラーな使い方。
家の中でも特に物の量が増えやすいキッチンに設置されていることが多いです。
この章では、一般住宅における床下の上手な活用法についてご紹介します。
「床下収納」なら場所を取らずにすっきり片付く
床下収納を活用すれば、床の上に置く物が減るので部屋全体がすっきりします。
使用頻度の低い調理器具やイベント用品などのアイテムをしまえば、ほかの収納スペースにゆとりができます。
また、掃除をするときに散らかっている物を移動させる手間がなくなるため、家事の時短にもつながるでしょう。
収納に適した物の条件は、長期保存できて長持ちしやすいこと。床下は湿度が高く温度も一定に保たれないので、傷みやすい野菜などの保管には向いていません。
未開封の缶詰や味噌、ペットボトル飲料など、周りの環境によって状態が悪くならない物を収納しましょう。
食品・日用品のストックや、防災グッズなどの保管にも適しています。湿度や温度の影響を受けにくい洗剤やティッシュは安いときに買いだめし、床下にしまっておくのがおすすめ。
水や非常食など防災グッズの保管場所にすれば、万が一のときも安心です。ただし床下が地震によって壊れてしまっては困るので、耐震補強されていることが前提となります。
また床下は他の収納場所と異なり、かがんで物を出し入れする必要があるため、あまり重たい物を入れないようにしましょう。持ち上げるときに身体に負担が掛かるのを防げます。
使いたいときだけ便利に使える「床下コンセント」
床下にコンセントを設置すれば、必要なときだけ使えるので便利です。
フタを開けて使用する「収納型」はコンセントが隠れるため見た目がすっきり。
「ポップアップ型」は使いたいときに床下からプラグが飛び出すのが特徴的。収納型のように床下に手を入れてコンセントを抜き差しする必要がないことがメリットです。
「床下断熱」で足元から冷気をカット
「床下断熱」とはその名の通り、床下に断熱材を敷き詰めて室内温度への影響を緩和させるもの。
寒い季節には気になる冷気を足元から防いでくれるのが魅力です。
床下断熱には「床断熱」と「基礎断熱」の2種類の方法があります。
- 床断熱
床のすぐ下を断熱するため暖かさが伝わりやすく、暖房の効率が上がりやすいのが魅力的。ただし隙間により断熱効果を下げないようにするため、あらかじめ工事しておく必要があります。 - 基礎断熱
床断熱に比べて、施工が楽で気密性をキープしやすいのがメリット。その反面、床下に結露やカビが発生しやすいというデメリットがあります。また基礎の外側に断熱材を施すと、そこから白アリが土台まで上がってくる可能性も。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で床下断熱を施工し、暖かいお部屋を手に入れましょう。
さらに暖かくするなら「床下エアコン」
通常のエアコンを床下に設置したものが「床下エアコン」です。
温風が直接、身体に当たらず、一台で家全体を暖められるのが嬉しいポイント。
通常のエアコンと同じものなので、設置費用は同等の金額です。
しかし床下エアコンは基本的に24時間付けっぱなしの状態。月々の電気代は高くなるでしょう。
とはいえ家全体が暖かくなるのは大きな魅力。メリットと費用面を天秤にかけ、設置を検討してみてくださいね。
床下で起きやすいトラブルと対処法
床下は頻繁に使わない場所だからこそ、もしものときのトラブルに備えておくことが大切です。
この章では、起きやすいトラブルと対処法について解説します。
床下から音が…その正体は?
「床下から聞こえる音が気になる」という場合、さまざまなトラブルが考えられます。
音は主に以下の4種類。自身が気になっているものを見つけて、原因と対処法を確認しましょう。
- 季節に関係なく聞こえるきしんだ音
床材と床の下地にある隙間が歩くことによって、動いて音を出すケースが多いです。建てて数年経つ場合は業者に相談し、直してもらいましょう。 - タイルを踏んだ時に鳴る音
タイルと下地の接着が完全ではない証拠です。タイルが浮いているため、いずれ剝れてしまう可能性があります。業者に修繕を依頼するのがベストです。 - 水を流したときに床下から聞こえる音
空気の流通か排水管の振動により発生する音だと考えられます。あまり心配しなくても良いですが、どうしても気になる場合は業者への相談をおすすめします。 - トイレの水を流したときに聞こえる音
こちらも空気の流通が原因なので心配する必要はありません。気になるなら一度業者に相談してみましょう。
シロアリやクモが!虫が発生したら?
床下に食品を入れっぱなしにしておくと、虫が発生してしまう場合があります。
見つけてから対処するのではなく、できる限り防止しましょう。
多湿により虫が付きやすいお米や、傷みやすい野菜などは床下に保管せず、冷蔵庫の野菜室にしまうと安心です。
それ以外の食品を収納するときは、虫が入ってこられない「密閉できる容器」を使いましょう。
またシートタイプの防虫剤を使うのもおすすめです。簡単に取り付けられ、底面の汚れ対策にも効果が期待できます。
床下の湿気・カビ対策は?
床下は湿気がこもりやすい場所。除湿剤を使うなどして、しっかり対策しましょう。
湿気を吸い取る効果がある新聞紙を底に敷くのもおすすめです。
その場合は入れっぱなしにせず定期的に交換してくださいね。
「カビの臭いがする」と感じたら除去する必要があります。床下に入っているものを全て出してから掃除をしましょう。
軽いカビであれば、水で薄めた中性洗剤を使って拭き掃除するだけでもキレイになります。除去したあとは水分が残らないよう、しっかりと乾かすことが大切。
仕上げに消毒用のエタノールを吹きかけると再発防止につながります。
専用の洗剤を使うときは酸素系と塩素系は混ぜないなど、注意書きをよく読み安全に使用しましょう。
床下自体にカビが発生していると、自身で取り除くのが難しいケースもあります。専門業者に相談し、必要であれば作業を依頼してくださいね。
水漏れが起きたらどうする?
もし水漏れが起きてしまったら、施工会社や専門業者に相談しましょう。
自身で対処するのは危険で、破損したり状態の悪化を招いたりする可能性があります。緊急の場合は24時間電話対応してくれる生活サービスを活用しましょう。
床下に湧き水や水溜まりを発見したら?
床下に「湧き水」や「水溜まり」を見つけたら、まずは水が出ている場所を探しましょう。
見つけたら応急処置として、その部分の水をとめます。
そのあとは家を建てた建設会社や設計監理者に相談し、早めに修繕しましょう。
湧き水の場合、場所を特定したり地盤を調査したりする必要があることも。取り急ぎ住んでいる自治体に聞いてみるのも方法の一つです。
床下をリフォームするときに押さえたいポイント
床下を見直すことは建物の耐久性や快適な暮らしにもつながります。
この章では、床下をリフォームするときに押さえておきたいポイントについてご紹介します。
日頃から床下点検口で状態をチェック
床下の状態は建物自体のコンディションにも関わります。
日頃から点検口で状態をチェックしておくと安心です。
点検する内容は主に以下の4つがあります。
- 基礎
ひび割れや欠損、鉄筋の露出などがないかを確認し、必要ならば適切な措置をとりましょう。 - 断熱
床下に断熱材を施している場合、状態を確認しましょう。固定が甘いと脱落につながることも。また、たるみによって隙間ができてしまったり、欠損してしまったりするケースもあります。そこから熱が逃げて暖房効果がダウンするため、修繕を検討しましょう。 - 水道給排水管のチェック
損傷や劣化が原因で水漏れを起こす場合があります。また重要な構造に水分が到達してしまうと、建物の寿命にも影響を及ぼす可能性も。早急に対応が必要です。 - 湿気
湿度が高い状態が続くと、構造材が腐ってしまったり、シロアリが繁殖してしまったりする原因につながります。そこで有効なのが「含水率」の測定。木材を腐らせる「腐朽菌」は20%以下で生息が難しくなるといわれています。含水率がそれ以上であれば、必要に応じた対策をとりましょう。
自身でチェックをおこなう場合、床下は暗いため懐中電灯を用意したり、ほふく前進したりする必要があります。不安な場合は業者に定期メンテナンスを依頼するのも一つの方法です。
断熱処理のDIYはかなり難しい
断熱処理には、かなりの施工技術が必要とされます。
自身でおこなうことも不可能ではありませんが、おすすめはできません。
手間と時間がかかるため、1~2日程度の休みで完成させるのは難しく、まとまった休みをとる必要が出てくる場合もあるでしょう。
仮に自身で取り付けられたとしても、隙間などにより思ったほど効果が得られない可能性も考えられます。
プロに依頼すればそのぶん費用は掛かりますが、手間・時間・仕上がり・安心感などを考慮するとそんなに高くはないはず。DIYをする前に十分検討しましょう。
床下リフォームの相場を調べておく
床下リフォームは原因によって費用が異なります。
「何だか床がフカフカするな」と感じる前に、あらかじめ、どのくらいの金額が掛かるか調べておくと安心です。
接着剤の劣化が原因でリフォームする場合は、新しい床に貼り替える必要があります。6畳あたり約10~15万円が相場といえるでしょう。
また床下を支える根太や大引きが腐っている場合は新しい木材に替えたあと、金物で補強し修繕することが多いです。
床の張り替えに加えて、根太や大引きの交換が必要になるので大体20~30万円が相場となります。
いずれにせよ、まずは業者に見積もりを依頼しましょう。その場合1社だけでなく何社か問い合わせて比較することが大切。
大切な家に関わるリフォームだからこそ、納得のいく内容と価格で比較できるようにしましょう。
正しい知識で床下のメンテナンスを考えよう
床下を有効活用すれば、今の暮らしをより快適で便利なものにできます。
そのためには正しい知識をもち、メンテナンスやトラブルへの対処法などを、あらかじめ知っておくことが大切です。
床下を使うときのポイントをしっかり押さえておけば、自身の暮らしに一層役立てられるでしょう。