突然ですが、「家の絵を描いて」と言われたら、どのような絵を描きますか?
三角の屋根に四角い壁、そこに窓やドアを描く、という方が多いのではないでしょうか。
その絵のような三角の屋根を、「切妻屋根」といいます。
切妻屋根は日本のみならず、外国でもスタンダードな屋根構造です。世界中で古くから愛されているのには、理由があります。
この記事では、切妻屋根の特徴やメリット・デメリット、取り入れるときに気を付けたいポイントなどをご紹介します。
目次
切妻屋根の語源とその特徴とは
切妻屋根は、別名「三角屋根」とも呼ばれています。
本を開いたままひっくり返した形をイメージすると、わかりやすのではないでしょうか。
切妻屋根の「妻」には、「端(つま)」という意味であります。
昔、妻は家の端のほうにいる機会が多かったことから、違う字で同意義があるのだとか。
屋根の端の部分を切ったような形なため、「切妻屋根」と呼ぶとされています。
切妻屋根のメリット
住宅街を歩いているとよく見かける切妻屋根。古くから愛されているのには、それなりの理由があります。
ここからは切妻屋根にすることで得られる主なメリットについて紹介します。
外観・構造がシンプルで価格が安く工期も短い
切妻屋根の構造は非常にシンプルです。そのため、施工もしやすく人件費がかかりません。
また、工事内容が難しくないため工期が短くすみます。
切妻屋根は屋根の基本の形なため、施工ができる業者も多く、見積もり比較が多くできるのも嬉しいポイントです。
小屋裏の通風を確保しやすい
日本の住宅には天井裏・屋根裏といったふうに屋根の下に空洞があります。
屋根裏は、夏は60度以上になることもあり、夜になれば急激に温度が下がって結露が発生する場所です。
換気ができないと屋根裏から家全体に熱が伝わり、各部屋の温度上昇につながります。
また、結露は家にカビやダニを発生させる原因です。
雨漏りのリスクが少ない
雨漏りが発生しやすい箇所は、屋根の面と面をつなぎ合わせた場所です。
「谷」と呼ばれる、突出した屋根とのつなぎ目部分は、とくにその傾向があります。
切妻屋根の接合部分は、屋根のてっぺん(棟といいます)にあたる1か所のみ。
1番高いところにあるため、雨水は流れやすくなっています。
さらにいえば、その棟も棟瓦などで覆われてしまうため、雨水が家屋に侵入することはほとんどありません。
屋根に積もる雪の量は勾配で調節できる
屋根の形が三角形になっているため、雪が積もりにくいのも切妻屋根のメリットです。
勾配をつければつけるほど、屋根の雪が滑り落ちやすくなります。
落ちた雪で事故やトラブルが発生する心配のある方は、屋根材に雪止めの機能がついたものを採用すると良いです。
切妻屋根のデメリット
メリットがあればデメリットもあるもの。
切妻屋根にも2つの弱点があります。
個性が出にくい
三角形の切妻屋根は、日本中・世界中の住宅で用いられている屋根の形状です。
非常にシンプルなデザインは、街並みや家の景観を選ばず、飽きがきません。
しかし、何でも合わせやすいさまが「没個性的」と捉えられる場合も、少なくないようです。
屋根の色や使用する素材、傾斜の角度で個性を演出すると良いでしょう。
ただし、懲りすぎた屋根は工事の時間と費用がかかるため、バランスが大切です。
メンテナンスが必要
切妻屋根は三角形に作られた屋根です。三角の構造が、屋根に雨をためず地面へと流してくれます。
しかし、軒の出が短い住宅は要注意です。軒が短いと、屋根から垂れた雨がそのまま外壁にあたります。
外壁が汚れるのはもちろん、家の劣化の原因にもなるため、メンテナンスが必要です。
切妻屋根を選択する前に知っておきたいポイント
日本の新築住宅の4割以上が切妻屋根だとされています。
それだけ多くの切妻屋根の中でも、とくに機能性と見た目に優れた切妻屋根にするためには、どこに注意をすれば良いのでしょうか。ポイントを見てみましょう。
切妻屋根の勾配はどう決める?
切妻屋根は勾配によって印象や機能を変えます。
たとえば、急勾配の屋根はヨーロッパ風のイメージが強くなるでしょう。
機能面では、水はけが良いため雨や汚れがたまらず、耐久性が高いといったメリットがあります。
一方で風の影響を受けやすかったり、メンテナンス時には足場を組む必要がありコストがかかる、といったデメリットも無視できません。
緩やかな勾配の屋根は、尖った印象が少なくなるため、見た目にも温かなイメージです。
屋根の面積が狭くなるため、材料費や塗り替えのコストを削減できます。
一方で、水はけが悪くなったり屋根裏が狭くなったりと、デメリットもあります。
屋根の勾配によるメリットデメリットを比較して、ご自宅まわりの環境・土地に合ったものを選ぶと良いでしょう。
切妻屋根で使われている材質は?
切妻屋根で使われている材質は瓦やスレート・金属やアスファストシングルなどいくつか種類があります。
- 瓦
昔ながらの日本家屋でよく見かけるものなので、イメージしやすいですよね。 - スレート
粘板岩を薄くスライスし加工してできた板です。高級感があり見た目も美しいですが、高価なため日本の住宅ではあまり使われていません。かわりに、セメントと繊維を混ぜた、「化粧スレート」というものが主流となっています。 - 金属屋根
いろいろな種類があり、ガルバリウム鋼板やトタンなどが代表的です。耐火性・防水性に優れており安価ですが、雨音が気になったり断熱性が低かったりといった弱点があります。 - アスファルトシングル
アスファルトとガラス繊維でできた屋根です。欧米でよく使用されています。軽いため耐震性に優れており、雨音が気になりません。施工もしやすく、比較的安価なのも魅力です。一方で、風が吹いたらめくれたりヒビが入ったり、勾配の緩い屋根には不向きといったデメリットもあります。
切妻屋根がダサく見えないようにするには?
シンプルな切妻屋根は、家の外観が平凡になりがちです。
おしゃれに見せるのであれば、窓の位置や大きさを工夫するのがおすすめ。
三角屋根のシンプルなデザインが、窓の存在感を引き立てます。
また、現代風のモダンでおしゃれな住宅に使われる切妻屋根は、軒の出が短いものが多いので参考にしてみてください。
それ以外にも、屋根の左右の大きさのバランスを整えてみたり、妻壁に妻飾りを飾ったり、壁の色を変えてみたり。
このように屋根以外の部分で、屋根を魅力的に見せることができます。
お気に入りのデザインを見つけるための工夫を、施工会社と相談してみてくださいね。
太陽光パネル設置がおすすめ
切妻屋根の形状は、太陽光パネルの設置に向いています。
屋根の勾配部分が東西を向いていれば陽の光が当たりやすくなるため、発電量も増すでしょう。
太陽光パネルには「この屋根にはこれがいい!」というものはありません。
ご自宅の屋根の面積、日光の当たり具合、どれほど電力を作りたいのかなどで決めると良いですね。
屋根の構造と専門用語を知っておこう
屋根の構造は複雑なように思えますが、蓋を開けてみると意外とシンプルです。
とくに切妻屋根は屋根の基本的な形のため、イメージがしやすいでしょう。
- 屋根は「小屋束(こやつか)」と呼ばれる木の柱を立てる。
- ①の上に「母屋(もや)」という長い木材を、水平にとりつける。
- 屋根の端、下部にある「軒桁(のきげた)」と屋根のてっぺんにあたる「棟木(むなぎ)」を繋げるように、「母屋(もや)」の上を通って「垂木(たるき)」を渡す。
- 以上の工程で屋根のベースが完成したら、その上に「野地板(のじいた)」「防水シート」「屋根材」を乗せて完成。
屋根の構造を理解しておくとリフォームや新築を建てるときなど、施工業者と込み入った話ができるようになります。
予定のある方は、ぜひ覚えておきましょう。
コスパがいい「切妻屋根」のおしゃれな家を建てよう
切妻屋根はコスパが良く機能的な屋根です。
見た目のシンプルさが気になる人は、勾配や屋根材にこだわるのがおすすめ。
個性溢れるおしゃれな屋根へと変わります。このような工夫がしやすいのも、切妻屋根の魅力といえます。
ぜひ、こだわりの切妻屋根でおしゃれな家を建ててくださいね。
切妻屋根は屋根裏のスペースを広くとることができるので、その結果、こもった熱を外に排気できる通風口を取り付けやすくなります。