広々とした開放的で明るいリビング、外の景色が一望できる大開口の窓、天井の高い吹き抜けの贅沢な空間。
「すてきな家を建てたくても、広い土地がない」とあきらめていませんか?
今回紹介するSE構法を取り入れることで、それほど広くない土地面積であっても、理想の間取りを実現できるかもしれません。
この記事では、SE構法という木造住宅の建築技術の特徴やメリットを解説していきます。
こだわりの家を建てたいけど、現実的には難しいと感じている人は、ぜひこの記事を参考にして検討してみてください。
目次
SE構法とは
SE構法とは、高い耐震性を実現した木造住宅の建築技術です。
従来の木造住宅で採用されている在来工法とは異なり、強度のある柱と梁で建物を支える「ラーメン構造」を採用しています。
そのため余計な柱や間仕切り壁が少なくなり、木造住宅でありながら大空間を可能にします。
SE構法の木造ラーメン構法
ラーメン構造とは、鉄筋コンクリート造の中高層マンションや鉄骨造の高層ビルに用いられる構造です。
柱と梁を一体化させるように強く接合することで、建築物の「枠」をつくります。
そのため地震が起きても、一体化したフレーム構造により変形しづらいというメリットがあります。
SE構法では木造住宅にラーメン構造を取り入れることで、極めて高い耐震性をもつ家づくりを実現させました。
SE構法の成り立ち
近年では木材を使った大型建造物の需要が増え、スポーツ施設や医療施設、大型店舗などが建てられています。
木材を使った大型建造物の構造技術を住宅に応用し、SE構法として新たに開発されました。
開発のきっかけは1995年の「阪神淡路大震災」で、木造住宅の多くが倒壊したことでした。

株式会社エヌ・シー・エヌと建築家の播 繁(ばん しげる)氏により、鉄骨造や鉄筋コンクリート造(RC造)に負けない木造住宅の技術が誕生しました。
SE構法の特徴
木造住宅でも鉄骨造や鉄筋コンクリート造に負けないSE構法は、どのような特徴をもつのでしょうか。
ここでは、SE構法ならではの特徴を解説します。
SE金物を使う
木造住宅の在来工法で用いられる「ほぞ」といった木材の穴で柱と梁をつなぐ技術とは異なり、SE構法はSE金物という特殊な金物やボルトによって柱と梁をつなぐのが特徴です。
それにより木材に穴を開ける部分を最小限にし、従来のボルトと比べ2倍の強度を保ちます。
使われている木材(集成材)が経年変化しても、SE金物のボルトは接合部に食い込んで定着します。
集成材を使う
天然木材で起きてしまう反りやねじれ、割れや伸縮などの欠点を克服した構造材が「構造用集成材」です。
集成材は乾燥した木材を、繊維方向を合わせながら重ねて接着します。
集成材は大型建造物や中型木造施設にも使われる建築木材です。
木の状態が安定した集成材を使用することで、強度を把握しながら構造計算ができます。
乾燥による反りや割れが発生しにくいため、長く安全を保てる家づくりを実現できるでしょう。
構造計算を実施
構造計算はビルやマンションなどの鉄骨造・鉄筋コンクリート造の設計では義務づけられていますが、戸建て木造住宅では義務づけられていません。
しかしSE構法では構造計算を用いることで、高い耐震性を保ちながら、自由な設計プランを実現できます。
SE住宅性能保証制度
SE構法で建てた家では、高い安全性を持つ住宅に対して「SE住宅性能保証制度」が適用されます。

引き渡しから10年間の無償保証、10年経過後に指定の検査メンテナンスを行うと、さらに10年間の保証がつきます。
SE構法のメリットは?

なぜSE構法が大型・中型の公共施設だけでなく、木造住宅でも人気が高まっているのでしょうか。
ここでは、SE構法の主なメリットを解説します。
地震倒壊0の高い耐震性
SE構法で建てられた住宅は、数々の地震で倒壊を免れています。
新潟中越地震・東日本大震災・熊本地震でも1棟の倒壊もないという実績を出しました。
これは、綿密な構造計算の実施による安全性の高さを表すといえるでしょう。
自由度の高い設計
SE構法は高い耐震性と安全性を保ちながらも、非常に大胆かつ自由な設計プランを可能にします。
従来の木造住宅にはない大空間設計ができるSE構法は、理想の家づくりにこだわりたい人にとっては嬉しい技術です。
「枠」を使用する構造は、間取りを大きく変えるリフォームにも対応できるため、将来的にも価値のある家を建てられるでしょう。
工務店への信頼性
SE構法は、一定の技能があると認められた「SE構法施工管理技士」が在籍する「SE構法登録施工店」のみが建築できる特殊な構法です。
登録された工務店は構造計算を全棟に対し行い、高い技術力で木造住宅を建築します。
そのため信頼性があり、安心して任せられるでしょう。
SE構法ならではの設計とは?
SE構法で建てられた家では、木造ラーメン構造で作り出された「枠」を使った間取りが可能になりました。
ここではSE構法だからこそできる、あこがれの設計プランをご紹介します。
大空間・大開口

SE構法で建てると、木造住宅では難しかった30坪の大空間リビングが実現可能になります。
床面積の広さだけでなく、天井を高くした空間も設計できます。
これまで在来工法でネックになっていた、構造上どうしても必要な壁や柱は大幅に減り、開放的な大空間をつくれます。
さらに、壁面すべてに大きな窓を設置することも可能です。

SE構法でしっかり構造計算されるため、耐震性の高く安全な構造で、スタイリッシュな間取りが手に入ります。
吹き抜け・スキップフロア

天井を高く設計できるため、吹き抜けやスキップフロアを採用してはいかがでしょうか。
床面積を減らす吹き抜けは、従来の木造建築では耐震強度を保つのに難しい構造とされてきました。
SE構法であれば、構造計算により構造の強度を落とさず、大きな吹き抜けをつくることも可能です。
天井のない大空間の上部に窓を配置するなど、明るく開放的な空間づくりが実現できるでしょう。
ビルトインガレージ

月極駐車料金が高い地域では、ビルトインガレージのニーズが高まっています。
今までは建築費用が高額な鉄骨造で建築する方法や、ガレージ部分だけ特殊なフレームを使用することが一般的でした。
しかし、SE構法であれば木造住宅でも設計できるようになりました。
ラーメン構造を採用したSE構法では、ガレージ内に構造上必要な柱や壁を必要としないため、それほど広くない敷地でもビルトインガレージをつくることが可能です。
ルーフバルコニー

都市部など自邸に庭を設置するのが難しい地域では、屋上に広いバルコニーを設置し、屋上庭園のように使いたいと考える人も増えています。
屋根材以上の負荷がかかるルーフバルコニーも、SE構法であれば実現できます。

ルーフバルコニーがあると、休日に友人たちとバーベキューをする場所や子どもの遊び場、家庭菜園などの空間を実現できるでしょう。
3階建て住宅・狭小住宅
SE構法の長所をもっとも発揮できるのは、3階建て住宅や狭小住宅の木造建築です。
都市部では特にニーズが増えているタイプの住宅ですが、在来工法では構造上難しいことも多くありました。
3階建て住宅では耐震強度、狭小住宅では構造上外せない柱や壁などの問題があり、広々とした空間づくりが困難でした。
しかしSE構法はそれらの問題を解決します。
構造計算で高い耐震性を保ちながら、木造ラーメン構造の「枠」を使った間取り設計により、広い空間づくりを可能にします。
SE構法で安全性の高いおしゃれな家づくりを実現

ここまで、SE構法という木造住宅の建築技術の特徴やメリットを解説してきました。
SE構法であれば、木造住宅でも耐震強度が保証された広い空間がつくれます。
近年流行しているワンルーム型間取り設計や、狭小住宅でも開放的でおしゃれな家を建てたいという夢を持つ人は、SE構法での家づくりを検討してみてはいかがでしょうか。
SEとは、Safety Engineering(Engineering For Safety)の略で、「工学的に安全な構法」という意味です。