新築住宅を建てるとき平面図や断面図、立体図は知っていても、矩計図は知らない方は多いのではないでしょうか?
矩計図は、これさえあれば家が建つ!といわれるほど重要な図面です。
この記事では、矩計図の役割と施工主としてチェックすべき点を解説していきます。
新たな知識を身に着けて、家を建てるときに役立ててください。
目次
矩計図の基礎知識
矩計図とは建物の一部を垂直に切断して部材の接合部分や取付け部分、寸法などを細かく記載した図面のことで、断面図よりも詳細な情報が記されています。
20分の1から50分の1の縮尺で書かれており、「詳細断面図」と呼ばれることも。
主に建築現場で使われていて、計画と施工の誤差が生じないようにするための図面でもあります。
これまで家づくりの経験がない人にとっては馴染みの薄いことばですよね。
矩計図に書かれている内容
建物の性能やグレードを確認できる矩計図。
主な内容は以下7点です。
- 基礎の形状や配筋(地面から床下)
- 断熱材の仕様、厚み
- 仕上げ材の仕様、寸法
- 屋根の仕様
- 躯体など(コンクリートや鉄骨など)の材料の厚み、仕上げまでの取り合い、寸法、納まり
- 各部屋の構造(床、壁、天井)の取り合い
- すべての高さの寸法
矩計図の特徴
矩計図の特徴は「設計者の思いを明確にする図面」「一覧性が高い図面」だといえます。
矩計図は住宅の品質などを建物に反映させた図面のため、施工主がこだわったポイントや隣家が火事になったとき延焼を防ぐためなど、もしものことまで明確に記載されています。
さらに内装の仕上げ方や納め方、外装に絡む要素までも同時に表現されていることから、一覧性が高い点もほかの図面にない特徴だといえるでしょう。
主に誰が使うもの?
矩計図は施工の際に現場監督や職人が使う図面です。
しっかりとした矩計図であればあるほど丁寧な工事ができるもの。
矩計図がなければ家が建たないといっても過言ではありません。
矩計図の3つの役割
矩計図の役割は3点あります。
主に建築現場で使われる図面ですが、施工主にとっても欠かせない図面なのです。
住宅のすべての高さがわかる
住宅には地面から屋根裏までの事細かな高さが存在し、矩計図には主に6つの高さが書かれています。
- 基礎の深さ
- 地面から立ち上がりの高さ
- 土台の高さ
- 1階、2階の床の高さ
- 屋根の軒の高さ
- 建物の最高の高さ
住宅の性能や住みやすさがわかる
矩計図は事細かな詳細が書かれているので、設計士や現場監督が見れば、住宅の性能と住みやすさが一目瞭然です。
例えば断熱材の素材や厚みが分かるので、建物の断熱性能がすぐに理解できるでしょう。
床の厚みや鉄骨の太さなども記載されているため、構造上の強度やぜいたくに使われていることも判断できます。
さらに窓の配置や床から天井の高さ、日差しの入り方もイメージできるので住み心地も想像できる、万能な図面なのです。
トラブルを防ぐ役割がある
矩計図は職人や施工主とのトラブルを防ぐ役割があります。
建築現場で起きる可能性がある、「高さの寸法が合わない」「設備などの納まりが悪い」というようなトラブルを未然に防げるのです。
また矩計図があれば素材の性質などを理解しやすいツールにもなるので、職人と施工主とのトラブルにも対応できます。
例えば、近年人気の珪藻土や無垢材などを使う場合、自然素材は住み始めるにつれて膨張や収縮、反りが生じます。
住宅の設計は1ミリ単位で行われますが、自然素材はそれらの特徴を見込んで、施工の誤差が3ミリ以内を許容範囲にしている場合もあります。
矩計図はそういった設計者や職人の綿密な計画と施工主に行き違いがないようにするための大事な図面です。
矩計図を見るときのチェックポイント
施工主が矩計図を見るタイミングは、契約後に間取りや仕様などのプランが確定したあとです。
初めて家づくりをする人にとっては、矩計図は専門的すぎて難しいこともあるでしょう。
しかしチェックするポイントを押さえておけば、気になる点を設計者からその場で説明してもらえるため、理解が深まります。
基礎や断熱材を確認
住宅の性能を左右する基礎や断熱材が、要望通りになっているかを確認することは重要です。
例えば基礎の高さを確認できます。
数字で見ただけでは、空間のボリュームがイメージしにくいこともありますが、矩計図だとわかりやすいでしょう。
断熱材についても、矩計図を見ながら設計者に具体的な説明を求めることで、住み心地は期待どおりになっているかを確認できます。
屋根裏や床下の点検方法
屋根裏や床下は定期点検をしなければいけません。
めったに使うことはないとはいえ、どこから入り、どこまで点検すればいいのかなど矩計図があれば確認できます。
生活する前に事前に知っておけば、いざその時が来たら手間取ることもないので、設計者に聞いておくと良いでしょう。
階段の勾配
住宅性能表示制度では、「高齢者などへの配慮に関すること」という項目で階段の基準が設けられています。
これは階段の勾配と、階段1段分の高さと踏む上板面の割合が一定以下である必要性を示すものです。
シニア世代と生活する場合や老後に向けて階段下にトイレを設置する場合は、設計段階で階段の勾配や幅などの細かな要求を伝えていることもあるでしょう。
矩計図を見ることで、階段の勾配が思い通りになっているかもチェックできます。
住宅でこだわった箇所
注文住宅の場合は特に、設計の段階で自分のこだわりポイントがある人が多いのではないでしょうか。
こだわりポイントの大小問わず、しっかり反映しているかは矩計図で必ず確認しておきましょう。
あとから「こんなはずではなかった…」と後悔することを防ぐためにも重要です。
例えば、防音室の防音素材や厚みへのこだわり、和室の小上がり部分の畳下に設けた収納スペースや天井の高さなど、細かい部分も必ずチェックしましょう。
自分がこだわったポイントを設計者や職人にしっかり理解してもらうためにも、矩計図に反映しているかを確認しましょう。
矩計図は必ず保管しましょう!
竣工後に矩計図を含めすべての図面を渡されたら、必ず保管しましょう。
将来的にリフォームする場合に必要になります。
もし紛失してしまうと下記のような問題が生じることがあります。
- 断熱材の素材などが不明なら、床や天井の一部を壊すことでしか分からない
- 床下や天井裏など、最初から調査
- 計測しなければならない
- 家全体の高さや天井の高さがわからなければ、工事費の見積りはすぐ出ない
これらはいずれも手間や費用もかかるものです。
矩計図を見返す頻度は少ないとはいえ、保管しておけば将来役に立つでしょう。
矩計図は住宅のすべてがつめこまれた図面。トラブルを未然に防ぐツールです
初めて家づくりをする人にとっては聞き慣れない矩計図ですが、住宅の性能や住み心地、トラブルを防ぐなど、さまざまな役割がある万能な図面といえるでしょう。
矩計図の内容を理解しておけば、イメージ通りの住宅に仕上がり、満足のいく家づくりができるでしょう。
情報量が多くて分かりにくい部分があれば、設計者や専門家に説明してもらいながら理解していくことをおすすめします。
読み方は「かなばかりず」「くけいず」と読みます。