家を建てるにあたり、光熱費を左右するのが断熱材。
しかし、種類が多すぎて何を選べば良いか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、断熱材としてもっとも普及しているグラスウールについて詳しく解説します。
断熱材として優れている根拠やシェア率の多さについて触れているので、断熱材を検討する判断材料にしてください。
目次
グラスウールとは
グラスウールは無機質繊維系断熱材の一種で、主な原料はガラスです。
85%は建築現場や家庭などから資源ゴミとして回収される、リサイクルガラスを使用しています。
ガラスを高温で溶かして遠心力で吹き飛ばし、ミクロン単位の綿状に細かく繊維化して作られます。
グラスウールの主な用途は以下の通りです。
- 住宅
- ビル建築
- 設備機器
- 自動車向け
グラスウールは上記のように、幅広い分野で活用されています。
省エネルギーに貢献しているので、昨今注目度がさらに高まっている素材といえます。
なぜ断熱材でグラスウールが選ばれているのか
日本の約8割の住宅で断熱材として使用されているグラスウール。
実は北欧・カナダ・ドイツなど、寒さの厳しい国での断熱材はグラスウールが主流です。
住宅においてなぜそれほどグラスウールが選ばれているのか、主な理由を2つ解説します。
圧倒的な断熱力
グラスウールの断熱効果は「繊維の細かさ」「空気が動かないこと」がポイントです。
空気は熱を伝えにくい物質で、暖まると上昇して熱も移動します。
しかし、空気の動きがなければそのまま熱が留まることになります。
空気が持つ断熱性能を高めるためには、空気が動かないようにしなければなりません。
そこでグラスウールの繊維が活躍するのです。
グラスウールは複雑に絡み合った細かい繊維の間に空気を閉じ込め、熱の動きを固定する力があります。
高性能なグラスウールだと繊維がさらに細かいので、繊維の本数が増えてより多くの空気を固定できます。
グラスウールは発泡スチロールなどのほかの素材に比べて熱を固定する力が強いぶん、圧倒的な断熱力があるといえるでしょう。
地球にやさしい素材
グラスウールの原料はリサイクルガラスです。
グラスウールは製造時に出る廃材や建物の改修、取り壊しなど不要になったガラスも再生処理して再利用できます。
繰り返し利用できるため、環境保護やゴミの減量にもつながります。
グラスウールは「グリーン購入法」という、循環型社会の形成のために物品購入時には環境に配慮した製品を購入すべきと定めた法にも該当しています。
グラスウールのメリット
グラスウールのメリットは、主に5つあります。
吸音性が高い
グラスウールは繊維系断熱材です。
グラスウールに入射した音は空気振動によってグラスウール内部の空気に伝わり、熱エネルギーに変わって吸音性を発揮します。
そのため、楽器を演奏する方や音楽鑑賞する方にとってはグラスウールで吸音対策するのが一般的です。
吸音性は中音域から高音域まで広い周波数帯域にわたって対応できるので、天井や壁の中に入れることでより高い効果を発揮します。
耐久性が高い
グラスウールはガラス素材であるため、経年劣化が少なく耐久性も高い素材です。
高温多湿の環境であっても収縮や変形、シロアリの腐食も少なく長期にわたって安定して使用できます。
溶剤や薬品がついても、劣化しにくい特徴もあります。
燃えにくい
グラスウールの原料がガラスであることから、燃えることはほぼありません。
ガラス自体不燃性の素材であり、平成12年建設省の「不燃材料を定める件」においてコンクリートやレンガなどとともにグラスウールも定められています。
万が一、火災が起こっても延焼を防ぎ有害ガスや黒炎を発生させることはないといえるでしょう。
健康に影響を与えにくい
「国際がん研究機関(IARC)」により、発がん性リスクが低いと証明されているグラスウール。
天然繊維のアスベストと異なる原料で製造されているため、人体にも安全な人口繊維です。
またグラスウールは、がんなどの呼吸器疾病を起こす危険性はありません。
もしわずかに繊維を吸い込んだとしても、鼻や気管支でほとんど除去されます。
胃に到達することがなく、体内で溶けやすいので短期間で体外に排出されるのです。
したがって断熱材として使われていても、人体への影響はほぼないと考えてよいでしょう。
コストパフォーマンスに優れている
グラスウールはリサイクルガラスでできていることから、材料費が安価です。
また綿状で軽量なのでコンパクトに輸送でき、施工しやすい点がメリットといえます。
コストパフォーマンスが非常に優れているといえるでしょう。
ほかの素材に比べて低価格なので断熱材としての厚みが出やすく、さらに高い断熱効果を実現できます。
グラスウールのデメリット
グラスウールのデメリットは主に2点あります。
水・湿気に弱い
グラスウールの繊維はガラスなので吸水性はありません。
もし繊維と繊維の間にある空気が一時的に水蒸気となると湿気が生じ、断熱効果を失うことになります。
改善策としては「グラスウールを袋詰めの状態で施工」「透湿防水シートによる施工」を行い、湿気を通さない工夫が必要です。
施工技術を要する
断熱材としてグラスウールを使用する際は、密度を落とさずに防湿や施工がしづらい部分を施工する必要があります。
コストパフォーマンスのよい素材ですが、職人の技術や現場監督の細かいチェックが不可欠なのです。
施工の注意点としては以下が挙げられます。
- 隙間を作らない
- 内部の空気層をつぶさない
- 連続した防湿層を確保する
正しい施工技術によって、グラスウールのデメリットは解消できるといえるでしょう。
グラスウールとロックウールの違いとは
ロックウールは、グラスウールと同じ無機質系素材の断熱材。
見た目は非常に似ていますが、決定的な違いは原材料と価格です。
ロックウールは天然の鉱石や鉄炉スラグなどを高温で溶かし繊維状にしてできています。
グラスウールよりも製造の難易度が高いので、その分高価な素材なのです。
グラスウールと同様に燃えにくく、断熱効果のメカニズムも似ていますが、コスト面で比較するとグラスウールに軍配が上がります。
グラスウールは断熱材として優れている素材!
グラスウールはガラスの強さと繊維のしなやかさを兼ね備えた、コストパフォーマンスのよい素材。
人にも環境にも優しい素材なので、あらゆる面から考えても断熱材として優秀だといえるでしょう。
断熱材を何にするかで悩んでいる方は、ぜひグラスウールを検討してください。
断熱材としての仕組みは、綿状になったグラスウールを重ねて、繊維と繊維の間に空気を含むことで熱を伝わりにくくしています。