耐力壁とは?種類や配置方法、家づくりへの影響について解説

    家づくりを検討していると「耐力壁」という言葉を耳にすることがあります。

    なんとなく「耐震性の強い壁のことかな?」とイメージできるかもしれませんが、具体的にどのような役割のあるものなのか知らない方も多いのではないでしょうか。

    そこでこの記事では、耐力壁について種類・配置方法など詳しく解説します。

    家づくりをする際にどのような影響があるのかも説明しますので、ぜひチェックしてみてください。

    耐力壁とは?

    筋交いのある住宅

    「たいりょくかべ」「たいりょくへき」などと呼ばれる「耐力壁」は、垂直方向・水平方向から加わる力から建物を守る役割を果たしています。

    一戸建てや商業施設などの高層ビルには、さまざまな方向から「力」が加わっています。

    例えば、建物の荷重自体による垂直方向の力や、地震による横揺れや台風などの強風によって横から加わる水平方向の力などです。

    COVA

    耐力壁はこれらの力によって建物が倒壊することがないように、補強するために設置されています。

    耐力壁は筋交いや面材で作られる

    耐力壁には、筋交いを通す「木造軸組工法」や、面材を使う「2×4(ツーバイフォー)工法」などの種類があります。

    また、鉄筋コンクリート造の建物の場合は、耐力壁と非耐力壁を組み合わせて設計することもあります。

    それぞれの特徴や違いを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

    木造軸組工法の耐力壁

    「木造軸組工法」は、木造一戸建てなどに用いられることの多い工法です。

    ほとんどの一般住宅では、この木造軸組工法による耐力壁が設置されています。

    木造軸組工法(在来工法)で代表的なのは「筋交い」を通した耐力壁です。

    筋交いとは柱・梁(はり)・土台・床で構成された四角い枠組みに、斜めに組み込まれる強化材のことをいいます。

    街中で建設中の木造住宅を見ると、壁部分に斜めに組み込まれた木材を見かけることがありますよね。

    この木材が筋交いと呼ばれるもので、柱・梁だけでは耐えられない水平方向からかかる力から住宅を守る役割を担っています。

    壁や梁だけで十分な強度があれば筋交いを通す必要はありませんが、それ以外の場合は筋交いを入れて強度を高めるよう「建築基準法」(※1)によって定められています。

    木造軸組工法による耐力壁は、筋交いを斜めに1本通す「片筋交い」と、2本クロスするように通した「たすき掛け」の2種類です。

    また、筋交いではなく「MDF(木質中質繊維板)」や「構造用合板」による面材を使うケースや、「耐力壁ブレース工法」と呼ばれる、鋼製の柱と梁でできた四角い枠組みに、金属製の筋交いを通す方法もあります。

    ※1:建築基準法とは、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途について、その最低基準を定めた日本の法律のことです。

    2×4(ツーバイフォー)工法の耐力壁

    「2×4(ツーバイフォー)工法」は木造枠組壁工法とも呼ばれています。

    2インチ×4インチの角材で作られた面材と木製パネルを用いて壁・床・天井を作り、箱のように囲う工法です。

    面材のパネルで囲うことで水平方向からの揺れに強くなり、地震による横揺れや台風などの強風から住宅を守ります。

    鉄筋コンクリート造の耐力壁

    鉄筋コンクリートの建物の場合、耐力壁と非耐力壁が混在している場合が多くあります。

    耐力壁と非耐力壁は見た目では違いが分かりませんが、鉄筋量や厚みが異なるという特徴があります。

    筋交いと耐力面材はどちらが良い?

    筋交いと面材による耐力壁は、どちらの方が良いと一概にはいえません。

    理由は、建物の条件や配置位置によって適している工法が異なるからです。

    耐力壁の強度を表す数値として「壁倍率」というものがあります。

    この壁倍率の数値が高いほど強度が高く、水平方向からの力にも耐えられるという特徴があります。

    筋交いと耐力面材それぞれの壁倍率をまとめました。

    筋交いの壁
    名 称30×90筋交い45×90筋交い45×90筋交い
    種 類片筋交い片筋交いたすき掛け
    壁倍率1.524
    耐力面材の壁
    名 称構造用合板ダイライトMS
    種 類厚さ7.2mm以上厚さ9mm
    壁倍率2.52.5

    筋交いの壁と耐力面材の壁は、併用することでより強度を高めることもできます。

    ただ、その分壁の厚みが出てしまうため、住居スペースが狭くなるというデメリットがあります。

    耐力壁を設置する上で大切なのは、必要な場所に必要な量の壁を配置することです。

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    住宅設計の知識がないと耐力壁の配置位置を決めるのは難しいことなので、ハウスメーカーなどと相談する必要があります。

    耐力壁の設置は量とバランスが大切

    水平方向からの力に強い耐力壁ですが、やみくもに設置しても意味がありません。

    耐力壁の効果を発揮するためには、配置する量とバランスが大切です。

    どういうことかを詳しく説明します。

    耐力壁の設置量

    耐力壁を設置する量は、「壁量計算(へきりょうけいさん)」「構造計算(こうぞうけいさん)」という式から導き出せます。

    これらの計算式は、台風や地震による横揺れで、建物がどのようにねじれたり、どのように力が加わるのかを知るためのものです。

    一般的に、2階建てまでの木造住宅では壁量計算を使い、鉄筋コンクリートの建物や回数の高い建物では構造計算が使われます。

    この計算式によって導き出された結果をもとに、どのくらいの耐力壁を設置すればいいのか導きだします。

    耐力壁の設置バランス

    耐力壁は配置するバランスがとても重要です。

    なぜなら、建物は垂直・水平などさまざまな方向から力が加わっているため、耐力壁のバランスが取れていないと建物に強い力が加わったとき崩れやすくなってしまうからです。

    耐力壁があると家づくりにどんな影響がある?

    重要な役割を担う耐力壁は、家づくりをする上ではどのような影響があるのでしょうか。

    耐力壁を設置すると開口部や窓の設置に制限がかかる場合があります。

    家づくりを検討する上で知っておきたいポイントを解説していきます。

    開口部や大きな窓の設置に制限がある

    耐力壁の中でも「2×4(ツーバイフォー)工法」は面材を利用するため、開口部や大きな窓の設置に制限がかかる可能性があります。

    なぜなら、耐力壁を設置しても、大きな扉や窓を作ってしまっては壁の効果を発揮することができないからです。

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    木造軸組工法の場合は2×4(ツーバイフォー)工法と比べると自由度は高くなりますが、それでも大きな窓を設けた場合は、ほかの壁で強度を高めるなどバランスを取る設計にしましょう。

    リフォーム時に耐力壁を移動することは可能

    一戸建て住宅をリフォームした場合、耐力壁は移動できるのでしょうか。

    結論から言うと、リフォーム時に耐力壁を撤去したり、壁部分に大きな窓を設けたりすることは可能です。

    ただ、その分ほかの壁の強度を高める必要があるため、追加工事が必要になりコストがかかってしまう可能性があります。

    また、新たな場所に耐力壁を設置する場合、その土地部分の基礎工事が必要になる場合もあるため、費用が多くかかります。

    これらのコストがかかることを把握した上で、リフォームが必要なのか判断することが大切です。

    耐力壁を設置して地震・台風に強い家づくりを!

    戸建

    今回は耐力壁について解説しました。耐力壁は垂直・水平などさまざまな方向から加わる力から住宅を守るために必要な壁です。

    一般的な木造住宅では筋交いによる耐力壁を設置しますが、面材を利用するケースもあります。

    耐力壁を設置する上で大切なのは、どこにどれだけの量の壁を作るかということです。

    住宅設計の知識がないと耐力壁の設置方法を決めるのはとても難しいことなので、ハウスメーカーなどから設計について説明を受けながら検討するとよいでしょう。