日本ではアルミ製のサッシが主流の中、少しずつ存在感を増している「樹脂サッシ」。
断熱性や気密性が高く、特に寒い冬には省エネ効果を発揮します。
こちらでは、アルミサッシとの違いや、樹脂サッシの代表的なメーカーを紹介します。
アルミサッシとの違いを知って、お家に合ったサッシ選びの参考にしてください。
樹脂サッシ(樹脂窓)って何?
「樹脂サッシ(樹脂窓)」は、プラスチックのひとつである樹脂をフレームに利用したサッシです。
寒さが厳しい地域でも省エネで快適な生活が送れるように、ドイツで開発されました。
断熱性や気密性の高さから、欧米の寒冷地を中心に普及しています。
サッシメーカーでは、断熱性に優れた複合ガラスなどと組み合わせて、より性能の高い樹脂窓を販売しています。
そもそも「樹脂」って何?
樹脂サッシの「樹脂」は、一般的な合成樹脂のひとつで、塩化ビニル樹脂でできています。
軽くて薬品やサビに強く、燃えにくいのがメリットです。
加熱すると加工しやすいため、長靴、バッグ、ラップフィルムなどの日用品から、配管などの建築資材にまで幅広く使われています。
世界各国と日本での普及率は?
樹脂サッシの普及率を見ると、開発されたでドイツをはじめ、イギリス、フランス、アメリカなどは60~69%、韓国では80%と高い水準で使用されているのに対し、日本の全国平均は約20%と大きな違い。
ドイツなど | 韓国 | 日本 |
---|---|---|
60〜69% | 80% | 約20% |
国内で使用率が高いのは、新築戸建で約90%の使用率を誇る北海道、約50%の北東北3県です。
冬の寒さが厳しいほど断熱性にも敏感ということでしょう。
最近では、他の地域でも断熱性が重視されると共に樹脂サッシの種類も増え、今後の普及が予想されます。
樹脂サッシとアルミサッシと複合サッシとの違いは?
アルミニウム合金でできた「アルミサッシ」は、耐久性や軽さ、値段が魅力で、日本の多くの家庭で使われています。
熱を伝えやすく、外気の影響を受けやすいため、夏は暑く冬は冷たくなり、結露も出やすいのが欠点です。
「複合サッシ」は、風雨に当たる外側に耐候性・耐久性の高いアルミ、内側が断熱・遮音効果の高い樹脂でできているサッシです。
樹脂の面の劣化が早く、樹脂だけのサッシよりも断熱効果が低いこともあり、両方の長所を生かしたものの、短所を解消しきれていない部分も多いようです。
樹脂サッシのメリット
断熱性や気密性の高さがメリットの樹脂サッシ。
断熱性は寒暖の差の激しい地域、気密性は台風の多い地域、塩害にも強いために海沿いの地域にもメリットの高い素材です。
でも、メリットはそれだけではありません。
樹脂サッシには他にもどんなメリットがあるのか、ひとつひとつ掘り下げてみましょう。
気密性・断熱性が高い
樹脂サッシの一番の特徴としてあげられる断熱性と気密性の高さは、樹脂そのものの性質によります。
アルミと比較すると、熱伝導率は約1000分の1。
実際に樹脂サッシを設置した家は、アルミサッシの家と比べて室内温度が夏は2度低く、冬は4度高いという結果も出ています。
もっと効果を高めたければ、ガラスとガラスの間の空気層が熱の出入りを防ぐ複層や三層複層のガラスを取り付けると良いでしょう。
結露・カビが生じにくい
断熱性の高い樹脂サッシは、外気が室内に伝わりにくいために結露を防ぎます。
温度差で生じる結露は、冬の寒い時期だけでなく、湿度の高い梅雨の時期も要注意。
カビやダニの発生も招く結露は、木枠やインテリアの劣化に始まり、住宅の腐敗に至ることも。
樹脂サッシで結露を防ぐことができれば、家の長持ちにもなりますね。
防音効果が優れている
樹脂サッシの気密性は、すき間から入る音を抑える防音性能にも影響します。
複層ガラスや厚みのあるガラスを選べば、断熱効果と共に、防音効果もさらに上がります。
屋外の騒音が室内に響きにくくなり、室内の話し声やペットの鳴き声などの隣近所への漏れも少なくなるでしょう。
窓のタイプとデザインの選択肢が豊富
加工しやすい樹脂製のサッシは、成形、着色のしやすさも特徴のひとつ。
色や開閉方法、デザインなど自由自在です。
すべり出し窓、上げ下げ窓、外開き窓など、洋風でも和風でも、個性のある形や色を選べます。
例えば、木調のサッシに和紙に見立てたガラスを入れて、まるで和障子のように使うなど、これまでは考えられなかったようなデザインが出ています。
樹脂サッシのデメリット
アルミサッシと比較すると、樹脂サッシには強度の弱さや劣化の早さなどのデメリットが気になります。
設置を決める前に、設置したい場所に適切かどうか判断するためにも、デメリットをきちんと把握しておきましょう。
強度が弱い、そのため重くなる
耐久性のあるアルミサッシと比較して、樹脂サッシは強度が弱いため、厚みで強度を出す必要があります。
その分重量が増えて、開閉時はその重さが気になるかもしれません。
この数年は技術の改良が進み、軽量化された製品も販売されています。
劣化が早い
樹脂サッシの材料である塩化ビニル樹脂は、加工や着色がしやすい反面、アルミより劣化が早いのが難点です。
年月が経つと、色あせやひび割れなどが見えてきます。
特に白のサッシを選ぶと、窓枠の黒ずみが目立ちます。
劣化を遅らせるためには、定期的なメンテナンスをおすすめします。
アルミサッシに比べると紫外線に弱い
樹脂サッシの劣化の早さは、紫外線に弱いということとも関係しています。
ただし、これは日本で一般的に使われるアルミサッシとの比較なので、影響がすぐ目に見えるということではありません。
上塗りなどのメンテナンスを行えば、約30年ほどは品質が維持できると言われます。
耐久年数は環境によっても異なるので、紫外線に弱いということを念頭に置いて、設置場所を決めるとより安心です。
価格が高い
樹脂サッシは、アルミサッシよりも価格が高いと言われます。
サッシの種類によっても異なりますが、
- すべて樹脂サッシにした場合、アルミサッシよりも1.5〜2倍
- 樹脂とアルミの複合サッシでも、通常のアルミサッシより1.25〜1.5倍
と言われます。
最近では種類が増え、一般に広がっているために価格が下がり、アルミの価格に近づいてきました。
メーカーや商品、施工会社でも変わるので、種類や業者を色々比較すると良いでしょう。
樹脂サッシの有名なメーカー
樹脂サッシは、専業メーカーから住宅設備の大手メーカーまで、さまざまなメーカーが参入しています。
色やデザインが豊富なことから、各メーカーのカタログやサイトを見ると、それぞれ個性のあるシリーズを展開しています。
樹脂サッシのデメリットを克服するような技術向上にしのぎを削る各メーカーを紹介します。
エクセルシャノン
樹脂サッシの専業メーカーで、1976年に樹脂サッシの製造販売を始めました。
「遮温(断熱)」と「遮音(気密・遮音)」に由来する同社の代表シリーズ「シャノンウインド」は、国内最高クラスの断熱性能を誇ります。
耐久性や防火性の実験も行い、技術の向上をはかるだけでなく、劣化した部品を交換できるようにするなど、メンテナンスにも力を入れています。
リフォームや網戸の取り付け、さまざまなデザインの要望にも応じています。
LIXIL
LIXILは、トイレや風呂などの水回りからインテリア、エクステリアまで扱う住宅設備機器の大手企業です。
窓の開発に携わってきた企業ならではの樹脂サッシ「エルスターX」は、世界トップクラスの断熱性だけでなく、トリプルガラスの軽量化に成功。
断熱効果の高いトリプルガラスで開閉しやすい窓を開発しました。
アルミと樹脂の複合サッシ「サーモスX」は、耐久性のあるアルミと、断熱性、防露性のある樹脂の長所を生かして、両方のデメリットを改良した製品として、業界から注目されています。
YKK AP
アルミ建材をはじめとした建築部材を扱う大手メーカーです。
同社の「APW」シリーズは、グッドデザイン賞をはじめとして、コプロダクツ大賞や地球環境大賞など受賞経験多数。
フレームの強度向上により、従来より薄い製品を実現しています。
無鉛樹脂素材を使用し、外観カラーに紫外線の影響を受けにくいアクリルを使用したり、火災の延焼を予防する防火ガラスなどを採用し、安全性にも配慮しています。
三協アルミ
三協アルミは、住宅のドアや窓、インテリア建材などからビル商品まで扱う建材メーカーです。
樹脂サッシにはめる複層ガラスには、ガラスとガラスの間にガスを注入。
アルゴンガスやクリプトンガスを使い、断熱性能を高めています。
アルミと樹脂の複合サッシシリーズ「ALGEO(アルジオ)」は、日本の厳しい気候風土を考えて開発。
暴風雨などに強く、子供でも安全に開閉できるように工夫がほどこされています。
掃除のしやすさも考えられていて、グッドデザイン賞やキッズデザイン賞を受賞しました。
断熱・防音・デザイン性にこだわるなら樹脂サッシに!
樹脂サッシの特徴やアルミサッシとの違いはおわかりいただけましたか?
断熱性やデザインに優れた樹脂サッシは、重くて紫外線に弱いといったデメリットはありますが、技術向上で、そのデメリットが解消されてきています。
各メーカーが技術向上にしのぎを削るほどにメリットも大きい樹脂サッシ。
断熱や防音、デザインにこだわるなら、樹脂サッシの設置を検討してはいかがでしょうか。