住宅の空調管理を1台のシステムで行うのが「全館空調」というシステムです。
全ての部屋の温度・湿度・給気・排気をコントロールし、快適で過ごしやすい温度に保つのが大きな特徴。
新築住宅においてはあまりポピュラーな選択肢ではないものの、年々性能とコストパフォーマンスが向上しており、導入を検討する家庭が増えているのが現状です。
今回は全館空調システムの特徴や魅力、注意点、価格帯などについて分かりやすく解説します。
全館空調って何?
全館空調とは、住宅内の温度管理を全て1台のシステムで行う空調設備のことです。
屋根裏などに大型の空調設備を配置して各部屋への通気システムを開通。
冷暖房や除湿といった空調管理を24時間全自動で行ってくれるのが大きな特徴です。
全館空調を取り扱うハウスメーカーは?
住宅における全館空調は、導入コストの高さから一般層にはあまり普及していません。
しかし近年では研究開発が進んでおり、比較的低コストで導入できる一般住宅向け商品が豊富に揃ってきました。
全館空調を取り扱うハウスメーカーは、
- パナソニックホームズ
- ダイキン
- 三菱地所ホーム
- ヤマト住建
- セキスイハイム
などが有名。
老舗のハウスメーカーはもちろん、空調・家電メーカーなども積極的に事業参入しているのが現状です。
メーカーによって特徴・性能・価格帯・施工実績などが大きく異なるので、実際に導入するときは入念にリサーチをしてからメーカーを選ぶようにしてください。
全館空調を導入するメリット
住宅に全館空調を導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
特によく言われるメリットについて簡単に解説していきます。
家のなかで温度差を感じない
全館空調は、住宅内の温度がどの場所も常に一定になるのが最大の特徴です。
部屋ごとに暑い・寒いなどの温度差がないので、寒暖差で体調を崩しやすい人とっては過ごしやすい空間になります。
急激な温度変化で起こるヒートショック現象や、猛暑日に起こる室内熱中症などの予防にも効果が高いです。
夏は涼しく冬は暖かく適温調整される
全館空調では設定した温度を守って冷暖房を稼働させるため、部屋ごとに細かい温度調節をする必要がなくなるのもメリットです。
夏は冷房に加えて除湿も行ってくれるため、オールシーズンで過ごしやすい温度になります。
外出時や留守中の温度管理もしやすく、エアコンのタイマーを使わなくても24時間適温に保たれます。
開放的な間取りにしても大丈夫
通常の住宅では部屋が広くなるほど冷暖房効率が落ちてしまいますが、全館空調であればどの空間もまんべんなく適温に調整されます。
間取りの制約がないので、どんなデザインの部屋でも設計することができるのです。
スキップフロアやロフトの温度も適温になる
全館空調は上下空間の広がりにも強いという特徴があります。
同じ階の中で空間に段差をつけるスキップフロアやロフト構造でも、常に快適な温度で過ごすことが可能になります。
特にロフトは通常のエアコンだと温度調節がしにくいため、全館空調との相性が良い構造になります。
エアコンが目立たずインテリアがすっきり見える
全館空調は独自の送風システムを設置するので、どの部屋にもエアコンを付けないのが特徴です。
エアコンがないだけでも開放的な空間になるので、すっきりとしたインテリアを実現できるのが魅力!
室外機を置く必要もなくなるので、外観デザインを楽しみたい人にもおすすめです。
家中に綺麗な空気が循環される
冷暖房だけでなく給気・排気も自動的にやってくれるのが特徴です。
空気清浄機のような効果があるので、家中に新鮮な空気が供給されます。
自分で換気をする必要がないため、部屋数が多くても快適に過ごしやすいのがメリットです。
全館空調のデメリット
一見便利に見える全館空調ですが、もちろんメリットばかりではありません。
導入するにあたって注意するべきポイントをチェックしておきましょう。
初期費用やメンテナンスなどにお金かかる
全館空調は導入コストや初期費用がかかりやすいというデメリットがあります。
全ての部屋に空気の通り道を開通する必要があるため、通常のエアコン設置よりも高い費用がかかってしまいます。
また、空調設備の掃除やメンテナンスも定期的に行う必要があります。
こちらは専門業者しかできないので、固定の維持費として計算するのが一般的。
メンテナンスを怠ると故障の原因や性能劣化につながります。
電気代が高い
電気代は通常のエアコン環境よりも高くなりやすいのが特徴です。
全館空調は24時間フルで空調設備を動かしているので、どうしても維持コストが高くつきやすいのです。
電気代は1万円前後で収まる場合から数万円程度かかってしまうケースまで実に様々。
住宅の断熱性・機密性・地域の気候・家の広さなどたくさんの要因が絡むので、一概に「高い」「安い」と判断できるものではありません。
あくまでも目安として覚えておくのが良いでしょう。
室内が乾燥してしまう
全館空調は常に空気を循環させているため、住宅全体が乾燥しやすい傾向にあります。
特に冬場は乾燥が激しくなるため、加湿機や部屋干しなどで上手く対策する必要があります。
また少し高価にはなりますが、加湿機能が備わった全館空調も存在します。
一部の部屋だけ温度調整するのが難しい
住宅全体を一定の温度に保つ特徴があるので、特定の部屋の温度のみを変化させるのは苦手です。
設定を変えると部屋全体の温度が変わってしまうため、適温が家族とズレてしまうと非常に厄介。
扇風機やヒーターなどを導入して、個別空間の温度を調節する対策が必要になります。
故障すると全室の温度調整ができなくなる
送風ダクトが単体で故障した場合は問題ないですが、仮に空調管理システムが故障してしまうと、全室の温度設定ができなくなります。
すぐに修理を呼べない場合は空調なしで長時間過ごすことになるので、非常にストレスが溜まります。
大規模リフォームが必要になる可能性がある
全館空調は家の裏側に設備やダクトを施工する必要があるので、新築物件向きの空調設備です。
リフォームなどで後付けをする場合は、家の構造によっては高額な施工費用がかかってしまうことも。
また、備え付けのエアコンや室外機の撤去費用も余計にかかってしまうので、よく考えてから決断するようにしましょう。
種類が多彩!多機能な全館空調を紹介
全館空調は取り扱いメーカーによって様々な商品が販売されています。
今回はその中でも多機能でユニークな特徴を備え持った商品を2つ紹介します。
部屋ごとに温度調整できるタイプ
三菱地所ホームと三菱電機が共同開発した「エアロテック」は、独自の制御技術で部屋ごとに温度を変えられる全館空調です。
各部屋に設置されたコントローラーを設定することで、空間ごとに細かい温度を調節することが可能。
部屋全体の適温を保ちつつ、自分に合った温度調節もできる便利なタイプです。
除湿・加湿機能付きのタイプ
デンソーが展開する「PARADIA(パラディア)」は、オプションで加湿機能を付けられる全館空調です。
換気・冷房・暖房・空気清浄・除湿・加湿と6つの機能を持っており、その日の気温変動によって細かく温度を調節してくれます。
全館空調のデメリットである乾燥問題を克服した多機能タイプです。
全館空調で一年中快適にお家で過ごそう
24時間自動で快適な温度を保ってくれる全館空調は、寒暖差が苦手な人や留守中の温度管理が面倒な人には特におすすめしたい設備です。
メリット・デメリットがはっきりしているので人を選びますが、興味がある人は一度相談してみるのが良いでしょう。
事前に温度設定をやっておけば、どの部屋・どの場所でも常に過ごしやすい温度に保ってくれます。