車や電車の音に悩まされたり、家の中の子どもの声や生活音が漏れたり、日々悩まされる騒音。
それが原因で健康を害したり、近所とのトラブルになることもあります。
毎日の騒音を防いで快適な生活が送れるように、防音対策をしておくと安心です。
防音の種類、壁、床、窓などの防音対策について見ていきましょう。
目次
「防音」とは?
外からの音が入ったり、中の音が外に漏れるのを防ぐ「防音」には、「吸音」と「遮音」のふたつの方法があります。
「吸音」は音を吸収して音の反射を防ぎ、音が外に漏れたり室内の音の反響を防ぐ方法。
「遮音」は空気中で伝わる音を跳ね返して、音が外に伝わるのを遮断する方法です。
吸音性が高すぎると反響音がなくなり、遮音性が高すぎると必要以上に音が反響して聞きにくくなるので、それぞれの度合いを調整しながら対策をすべきです。
防音・遮音性能を示す指標単位
家の中で防音性能を高めたい時に指標となるのは、「Dr値」「T値」「L値」。「Dr値」はドアや壁などが騒音を遮断する性能を表し、数値が大きいほど遮音性もアップします。
日本建築学会では、集合住宅でDr-45あれば許容範囲としています。
「T値」は、主にサッシの遮音性能を表します。T1からT4まで遮音性が高くなるほど値も上がります。
「L値」は、主に床を通して上の階の衝動音が下の階で伝わる床衝撃音の防音レベルで、等級が小さいほど性能が上がります。
「L値」には重いものが落ちる音の遮音性を示す「LH値」と軽いものの遮音性能を示す「LL値」があります。
防音材は4種類で分ける
「防音」には「吸音」と「遮音」の2種類の方法があるとご説明しましたが、実際に防音対策をする時には、吸音材、遮音材の他に、防振材と制振材を組み合わせます。
ひとつの素材だけでは特定の周波数にしか効果が得られなかったり、室内の音が聞きにくくなるなどの弊害が生じることもあります。
素材を組み合わせることで、さまざまな騒音を防ぐことができます。
吸音材
吸音材とは、空気中に伝わる音の振動を吸収して、音を軽減する素材のこと。
狭い部屋で話したり楽器を演奏する時、音がこだまして聞きにくい場合に、反響音を沈める効果もあります。
素材は、グラスウールやロックウールなど、中・高音域の吸収性に優れた多孔質材料がよく使われます。
他には石綿とセメントを原料とした石綿板、羊などの繊維をシート状にしたフェルトやウレタンスポンジなどもあります。
繊維でできた吸収材は湿度も吸収しやすいので注意が必要。
温度差のある場所や湿度が高い場所での設置には気をつけましょう。
遮音材
音を吸収することで音のエネルギーを調整する吸収材に対して、遮音材は、音を跳ね返して遮音するというもの。
面積密度や質量があるほど効果があります。
コンクリートや鉄板などは性能が高いですが、コストなどの面から、遮音シートや防音マット、石膏ボードなどと組み合わせて遮音機能を高めます。
必要以上に遮音すると音が反響しすぎて、元の音が聞き取りにくくなることもあるのでご注意ください。
防振材
吸収材や遮音材が空気中に伝わる音を防ぐのに対し、防振材は、振動の防止を目的としたもの。
生活する中で隣や下の階に響いてしまう振動を伝えたくない時などに使います。
スポンジやフェルトなど、柔らかい素材は振動を抑えるのに優れていても、重いものを置く床には不向き。
重いものにはゴムなどでできた防振効果のある遮音マットなどもあります。
制振材
洗濯機や冷暖房の室外機、AV機器などの揺れを緩和するのが制振材です。
機械の下にマットを敷いたり、浮いた構造で振動を抑えるなど、その方法はさまざまです。
吸音材として有名なウレタンは、制振材としても効果を発揮します。
その他に、鉛シートやゴムマットなども制振材として売られています。
冷蔵庫のコンプレッサーの中にはすでに制振材が入っていて、引越しなどで移動させた時に外れて振動がひどくなることもあります。
壁の防音対策
マンションや団地などの集合住宅では、壁を通じた騒音に悩まされることが多いでしょう。
家具などを置いて隣との距離を開けるだけでも少し違いますが、騒音は壁全体から入ってくるため、全面吸音材と遮音材をつけるのが最も効果的。
こちらでは、防音壁の材質から簡単に取りつけられる防音シートまで、どんな防音対策ができるか見ていきます。
防音シートを壁に貼る
さまざまなタイプが販売されている防音シートは、自分で簡単に貼れるお助けアイテム。
家電などに貼れる小さなものから大きなサイズまであります。
床に貼る時は、保護用シートを貼りつけてから、その上に防音シートを両面テープで固定する必要がありますが、壁に貼るなら、保護用シートを貼らずに直接防音シートを貼れます。
防音には「吸音」の機能があり、「遮音」には遮音シートというものが存在します。
遮音シートも貼る時は、防音シートの下に貼りましょう。
壁にグラスウールなどの吸音材を使う
グラスウールは、ガラスを繊維状にして、接着剤で成形した素材です。
断熱性と吸音性に優れ、不燃性。安価なので、屋根、天井、床、壁の建築材料として使われます。
ホームセンターなどで入手できるので、DIYで使ってみたいという方も多いことでしょう。
グラスウールを選ぶ基準のひとつに、密度を表す「K値」があります。
住宅用であれば10K以上が標準的。数値が高いほど密度が高く、断熱性、吸音性も高くなります。
使う時には、袋詰めにしたり防水シートで保護して使いましょう。
使い方を間違えると、グラスウールを成形する接着剤にカビが生えたりして、機能低下の原因となります。
自分でも手軽にできるワンタッチ防音壁
ワンタッチ防音壁は、職人が壁のサイズや形に合わせて作ったものを自分で取り付けられる防音壁です。
2人以上であれば、DIYに慣れない女性でも比較的簡単に取り付けることが可能。
壁に傷をつけずに突っ張り棒、両面テープなどを使って貼れるので、賃貸マンションにも使えます。
手作りなので自分の部屋に合ったカラーを選べるにも関わらず、業者に工事を依頼するより安いのも魅力。
感じ方は個人差があり、設置条件によっても変わりますが、防音効果は3〜6割と言われます。
サイズは基本的に900×900ミリメートルで、それ以上になると料金は割増となりますが、本格的に安価に簡単に取りつけられる防音壁は選択肢のひとつとして覚えておくと安心ですね。
床と天井の防音対策
マンションでは上や下の階の騒音に悩んでいる方も多いことでしょう。
振動は、直接上階の床から下の階の天井を伝って響くため上から下に、空気の振動を通して伝わる音は下から上に響きます。
上の住人の足音やドアを開ける音、トイレの水を流す音など、上からの音が気になる一方で、自分たちも、話し声や音楽などが上の階に聞こえないように気をつけなければいけません。
リフォームなどでできる本格的な防音方法の他に、DIYで手軽にできる制振材もご紹介します。
二重天井にする
二重天井とは、上階の床を支える板状のコンクリートに下地枠を吊り下げ、天井ボードを貼りつけた構造のこと。
音だけでなく、振動も抑えられます。
二重天井にすると、後から天井裏の電気配線を組み替えたい時に変更しやすくなります。
マンションでは、「住宅品質確保促進法(品確法)」が施行された2000年から二重天井と二重床が取り入れられるようになりました。
最近のマンションでは、支持ボルトに防振ゴムをつけることで防音効果を高めています。
天井裏にグラスウールボード
天井の防音効果を高めたい時に、天井裏に吸音効果と遮音効果のあるものを入れることもできます。
すでにご説明したグラスウールは、安価で軽いので、天井裏にもおすすめ。
板状のグラスウールボードは吸音材としてだけでなく、遮音、断熱にも役立つ優れもの。
DIYで吸収材や遮音材を敷き詰める時は、天井板の上を歩かず、梁の上をつたっての移動が基本です。
また、結露やシロアリ対策も考えた上でボードを敷きましょう。
制振材・制振シートを貼るだけ遮音も可能
振動を制御する制振材も、音の種類によっては効果的。
振動エネルギーを熱エネルギーに変換して発散させます。最近では、振動が気になる部分だけに貼ると、遮音と制振ができる制振シートも開発されました。
他にも粒状など、天井の衝撃音を抑える制振材は、さまざまなタイプが出ています。
窓の防音対策
少なくとも13cm以上の厚さのある壁に対して、数ミリメートルの窓は圧倒的に音を通しやすい場所。
窓の防音には、吸音でなく遮音が必要です。
遮音は質量に比例するので、ある程度重量のあるものに効果があると言われますが、光を遮断しない防音シートなども販売されています。
お家に合った窓用の防音アイテムを探してみましょう。
防音シートを貼る
窓からの自然光や眺望を妨げずに防音対策をしたい時は、「窓用防音透明シート」がおすすめ。
屋外の騒音を3分の1位まで抑えると言われます。
網入りガラスやガラスが二重になったペアガラスは、窓に直接防音シートを貼ると表面の温度差でガラスが割れることがあるため、窓の周りのサッシに貼る商品もあります。
防音シートを買う時には、ガラスのタイプを確認してから選んでください。
防音カーテン使う
防音カーテンは、カーテンをかけるだけで効果が得られる便利なアイテム。
防音を徹底するには、糸の密度が高くて重く、窓より大きいサイズのヒダなしカーテンと、カーテンレールカバーを取りつけること。
でも、カーテンレールが耐える重量や毎日の開け閉めを考えると、重すぎるのも問題です。
光を通して防音もしたければ、レースタイプの防音カーテンもあります。
防音カーテンは楽器や子犬の鳴き声、女性の声などの中高音域は遮りますが、電車や工事などの低音域(固体伝播音)には不向きなので、騒音の種類によっては効果がありません。
二重窓や防音ガラスを取り付ける
もともとついていた窓に内窓を設置することでできる二重窓は、二層の窓の間にできる空気層が音の伝わりを通しにくくします。
防音効果のある膜を窓の中に挟み込む防音ガラスは、騒音で起きる振動を熱に置き換えて音の波を消す効果があります。
どちらも空気を通して伝わる騒音に効果的で、車の通過する音、動物の鳴き声、工事の音などを和らげる効果があります。
防音対策で自由な暮らしに!
密集した地域や、線路、道路の近くに住む人にとって、騒音は深刻な問題ですが、簡単にできる防音対策が増えてきています。
家の中にも外にも響く騒音の中でも、どんな騒音、振動に悩まされるか考えて、そのタイプに合った対策で静かな生活を取り戻しましょう。