「SE構法は建築費が本当に高いの?」 「コストが高くてもSE構法を選ぶ理由は何だろう?」 SE構法の存在や特徴を知っていても、上記のような疑問を感じる人も多いでしょう。
確かにSE構法は、一般的な在来工法よりも、建築コストは高額になります。
しかし在来工法では実現できないメリットがあります。
ひとつめは高い耐震性能、ふたつめは設計の自由度です。
木造住宅で耐震性能を高める工法はいくつかありますが、設計の自由度やデザイン性の高さにおいては、SE構法が抜きん出ています。
他に同じメリットを持つ建築となると、構造が近い鉄骨造の家でしょう。
この記事では、SE構法が得意な家づくりについて触れながら、鉄骨造と比較していきます。
目次
SE構法が得意な家づくり
ここではSE構法のメリットが最大限活かせる、3階建て住宅や狭小住宅について詳しく解説します。
もちろん2階建てで平均的な土地面積の住宅でも、SE構法を選択すると在来工法とは一味違う、デザインの際立った家づくりができます。
3階建て住宅
3階建て住宅を選ぶ理由には、以下が挙げられます。
- 親世帯と同居したい
- 子供が多い
- 趣味の部屋が欲しい
- ビルトインガレージが欲しい
- 眺望や採光が欲しい
ほとんどが、限られた敷地を最大限利用するのが目的でしょう。
3階建て住宅で心配になることは、耐震性能と空間設計の問題です。
SE構法であれば、木造住宅でも十分な耐震性能を確保できます。
さらに広い空間設計も可能であるため、家族の状況に合わせて間取りを設定できるのも特徴です。
従来の在来工法では設計が複雑になり難しいとされる、3階建て住宅のビルトインガレージやスキップフロアなどもSE構法であれば実現できます。
狭小住宅
都市部などで狭い敷地に建てる住宅の場合、空間確保が課題になるでしょう。
在来工法では上部からの荷重を支えるための柱や壁、筋交いが構造上必要です。
SE構法では、SE金物やSボルトで木造ラーメン構造による建物の「枠」を強化し、さらに耐力壁という強固な壁材をバランスよく配置します。
それにより荷重を受け止める柱や壁を使わずに済み、内部空間を広く使えるため、間取りを自由に配置できるのです。
- 1階より2・3階の床面積を広くするオーバーハング
- 床面積を削る吹き抜け
- 壁面積を減らす大開口の窓
上記のような、木造住宅で耐震性能を失わずに建てるのが難しいとされる設計を、SE構法では実現可能です。
たとえ土地が狭くても広々とした間取り設計ができるため、SE構法は都市部で多く採用されています。
特殊形状の住宅
旗竿地や三角地、うなぎの寝床など、特殊形状の土地に住宅を建てたい場合、SE構法なら広い空間をつくることが可能です。
SE構法は1棟ごとに構造計算することで、その家にあった構造的バランスや適切な資材を割り出します。
ラーメン構造による柱の位置や耐力壁の配置の仕方によって、土地にあった住宅の「枠」をつくり出し、居住空間をできるだけ広く使えるようにします。
特殊形状の土地で問題になるのは、採光や風通しなどです。
SE構法を選択することで、大開口の窓や吹き抜けが可能となり、明るく快適な家づくりができるでしょう。
SE構法が高いといわれる理由
SE構法が在来工法よりも建築コストが高額になるのは、耐震性能を高める特別な仕組みがあるためです。
ここでは、SE構法のどこにコストがかかっているのか、具体的に解説します。
使われる資材が高い
SE構法で取り入れられる特徴的な資材は、SE金物と耐力壁に使われる構造用集成材です。
SE金物はラーメン構造で柱と梁を接合する部分に使われるもので、木材の欠損をできるだけ少なくして接合部分を一体化させる特殊な形状となっています。
構造用集成材とは、JAS特類1級の強度試験をクリアしている堅牢な資材で、在来工法の筋交い壁の3.5倍の強度を持ちます。
含水率が低く、ねじれや膨張が起きにくいため、構造計算には欠かせない資材です。
構造計算費用が高い
SE構法では構造計算を全棟に施すことにより、高い耐震性能を担保しています。
しかし在来工法では義務化されておらず、ほとんどの住宅で構造計算費用はかかりません。
構造計算費用は1平米あたり2,000〜3,000円が相場のため、30坪ではおよそ20〜30万円です。
SE構法では、強度の把握ができる構造用集成材を使うことで構造計算が可能となり、地震や強風に強い頑丈な木造住宅が建てられます。
SE構法と鉄骨造:施工コストの比較
SE構法が開発される前は、鉄骨造で耐震性能と空間設計の問題を解決していました。
近年、建築技術の向上により、鉄骨造の家でしかできなかったことが木造住宅でもできるようになりました。
ここでは、SE構法と鉄骨造の比較をしながら、SE構法のメリットを解説します。
材料費用
鉄骨造は形鋼(かたこう)・鋼板・平鋼(ひらこう)などの鋼材が使われています。
鋼材の輸入価格が高騰傾向にあり、SE構法に使われる構造用集成材に比べると、費用は高額になります。
ただし耐用年数は鉄骨造の方が税法上でも長く設定されているため、資産価値が高いといえるでしょう。
建物の施工費用
SE構法の施工方法は規格化されており、柱と梁をつなぐSE金物を取り付ける工程は、施工者による差異が少ない技術で施工されます。
それに対して鉄骨造は接合部を溶接によって接着するため、強固ではありますが、職人の技量によって強度が変化する可能性があります。
鉄骨造は施工する職人の数が必要にもかかわらず、慢性的に職人不足の問題を抱えているため、SE構法に比べると人件費が高くなることが予測できるでしょう。
基礎の施工費用
SE構法の基礎は、木造住宅の場合は在来工法より大きくなるものの、鉄骨造の基礎はさらに大きくなります。
鉄骨造では基礎施工で排出される残土の量も多くなり処分費用も加算されるため、基礎施工費用だけでもSE構法よりコストがかかります。
SE構法と鉄骨造:設計自由度の比較
次にSE構法と鉄骨造の設計内容について比較していきます。
SE構法と鉄骨造の構造は近いものですが、木造と鉄骨という素材の違いからくる差異は、どのように影響するでしょうか。
大空間・大開口
結論としては、鉄骨造の方が頑丈な構造のため、大きな造形に対応できます。
しかし、SE構法でも構造上の工夫によって、大空間・大開口が可能です。
SE構法では構造集成材の梁の長さや耐力壁の長さを変更したり、構造材を追加したりすることで、広さや高さのサイズを調整していきます。
SE構法は構造計算で全体のバランスを計算しているため、鉄骨造とほとんど変わらない設計内容に対応します。
耐震性能
構造計算をもとに設計されているSE構法と鉄骨造は、同様の耐震性能を持ち合わせているのが特徴です。
違いは揺れ方に現れます。
鉄骨造は純ラーメン構造のため、鋼材の粘りが揺れる力を吸収することで、建物の倒壊を抑えます。
そのため、揺れが大きくなります。
SE構法は木造特有の柔軟性と柱と梁の接合部の強さで揺れを受け止めますが、鉄骨に比べて建物の重量も軽いため、受け止める揺れ自体も小さくなります。
その結果、同じ震度でもSE構法の家の方が揺れを感じにくくなるでしょう。
基礎の大きさ
鉄骨造は建物全体の荷重が重いため、基礎も大きくなります。
そのため地盤改良工事も杭の長さもSE構法に比べると大規模になり、費用も工期もかかります。
SE構法は木造住宅のため、在来工法よりは基礎が大きくなりますが、地盤改良工事も従来の工期で行われる可能性が高くなります。
木造と鉄骨造の内装
内装デザインについては、SE構法と鉄骨造で大きく異なります。
鉄骨造は柱や梁が太く、断熱効果が低い傾向にあります。
大きな梁が露出する空間となるため、それを踏まえた間取り設計となるでしょう。
SE構法の木造住宅は、しなやかな意匠性や断熱性にメリットがあります。
広くすっきりとした空間になるため、こだわりのデザイン設計が自由自在にできるでしょう。
さらに、木材は再生産が可能な循環型資材であり、何より日本の風土にあった建築という魅力があります。
SE構法は3階建てや狭小住宅でも耐震とデザイン性を両立できる
今回は、SE構法が得意な家づくりについてと、構造が近い鉄骨造との比較を解説しました。
SE構法は木造住宅としては建築コストがかかりますが、それ以上に耐震性能と空間設計が優れています。
木造建築の良さを持ちながら、鉄骨造に負けない構造を持つSE構法。
内装デザインでは武骨な鉄骨造より、柱や梁の大きさが小さいSE構法の方が、デザイン性の高いモダンでスタイリッシュな家になる可能性を秘めています。
狭小住宅など空間に制限がある場合は特に、SE構法のメリットを感じられるでしょう。
家づくりはほとんどの人にとって、一生に一度きりです。
SE構法を選択して、性能もデザインも納得のいく家づくりをしてみませんか。