建物の工事が完了したあとに行う「完了検査」。
「工事が完了したのにさらに検査をするってどういうこと?」と疑問に思う方や、どのような検査内容か知らない方が多いのではないでしょうか。
実は、完了検査に建築主が直接関わることはありません。しかし完了検査の重要性を知っておくことで、後々トラブルになりにくくなります。
この記事では、完了検査の内容や流れ、重要なポイントを分かりやすく解説していきます。
目次
完了検査とは
完了検査とは、建築基準関係規定に適合しているかを検査することです。
工事完了日から4日以内に申請する必要があり、建築基準法の第7条第1項によって義務付けられています。
完了検査に合格しなければ、建築完了していても建物を使用することはできません。
以下は大切なポイントをまとめているので、ぜひ参考にしてください。
完了検査は誰が行う?
完了検査は、建築主事または指定確認検査機関の確認検査員が担当します。
検査者は現在、建築主事が約6.5万件、指定確認検査機関が約50万件となっており、指定確認検査機関の対応件数は全体の約9割を占めています。
また戸建住宅など小規模な建築の完了検査の場合、検査は1人で行います。
所要時間は30分~1時間程度なので、ポイントをおさえて行う検査です。
完了検査の内容
完了検査は、建物の構造や設備、敷地などの法令に適合しているかなどをチェックします。
詳しい検査内容(チェックするポイント)の例は以下の通りです。
完了検査の内容は、約25ページにもわたる検査項目があります。
完了検査に必要なもの
完了検査の申請は、通常ハウスメーカーや工務店が代理で行います。
したがって建築主が特に何かを用意する必要はありません。
代理者による申請なので「委任状」に記載する程度です。
代理者は「完了検査申請書」「検査時に必要な工事の写真」「委任状」などの書類を一式そろえることが必要になります。
なぜ完了検査が必要なのか
完了検査は法令に定められており、義務です。
完了検査をクリアすることで安心して建築物を使用でき、「検査済証」が交付されます。
実は「検査済証」は今後とても大切なもの。
その重要性について詳しくご説明します。
検査済証の重要性について
建築物が設計図通りに施工されていることが確認できた場合交付される「検査済証」。
検査済証は建築物を建てた後さまざまな場面で必要です。
具体的な例を3点ご紹介します。
- 住宅ローンを金融機関に申し込む場合
- 不動産を売却する際、建築基準法に適合した建物である証明
- 住宅のリフォームや増築の際
上記では必ず提示することを求められるので、検査済証は必ず大切に保管しましょう。
完了検査をしないとどうなる?
完了検査を受けていないと、あとから違法建築物であることが判明した場合は、建築主に対して建築物の使用禁止や是正命令が出されます。
もしくは住宅金融公庫などの融資が受けられなくなることも。
また違法建築物を是正することなく使用した場合は、懲役または罰金が科せられます。
さらに建築物に関わった業者も、業務停止免許取り消しなどの処分を受けることがあります。
例えるなら、車検に合格していない車で運転することといえるでしょう。
建築物も同様です。工事完了した際も検査済証を持っていることは当たり前なのです。
完了検査の流れ
工事完了後4日以内に完了検査の申請を行い、完了検査が始まります。
大まかな流れのポイントを交えながら解説しますね。
1:工事完了
建築主(代理人)が建築物等の工事完了を確認し、完了検査の申請を提出します。
2:申請
- 申請者:建築主
一般的には建築を請け負っているハウスメーカーや工務店が代理として申請するケースが多い - 申請先:各地方自治体の特定行政庁、指定確認検査機関
- 手数料:各地方自治体、中間検査を行ったかによっても手数料は違います。
*お住まいの地方自治体ホームページから確認してください。
30平方メートル以内 | ¥9,900 (中間検査あり) | ¥11,000 (中間検査なし) |
30~100平方メートル | ¥11,000 (中間検査あり) | ¥12,000 (中間検査なし) |
- 期 間:工事完了から4日以内に完了検査を申請
災害等、やむを得ない理由の場合を除く
3:検査
完了検査の実施は、申請を受理した日から7日以内に行うことが建築基準法で定められています。
検査方法は目視や測定、動作確認など。
設計図通りに施工されたかを書面等と照らし合わせながら行います。
検査時には工事監理者(現場監督者)の立会いが必須です。
4:検査済証の交付
建築物が、申請内容に間違いがなく設計図通りに施工されたことが確認できたあと「検査済証」が交付されます。
交付されるまでは建築物の使用はできないので注意しましよう。
5:不合格だった場合
完了検査で不適合と判断された場合は、是正または計画変更の手続きを行い、再度完了検査をする必要があります。
また、建築基準関係規定に適合することを説明する書類(追加説明書)の提出を求められることもあります。
その場合は追加説明書を提出した後、適合していることが確認できれば「検査済証」が交付されるので安心してください。
どちらの場合であっても「検査済証」が交付されるまでは建物の使用はできません。
コロナ禍で変化!完了検査の今後
建築技術法制定時(昭和25年)から義務づけられた完了検査。
2020年コロナ禍により完了検査の方法、現場監督者の立会い方も柔軟に変化しつつあります。
例えば1点目、完了検査の方法です。
今までは目視で検査を行っていましたが、「確認検査員が高所の確認などのためにドローン等を活用してよいか」という議題があがりました。
これに関して、現在は写真や計測機器も活用していることから、ドローンなど新しい技術を適切な方法で使用することは可能としています。
また、2点目は完了検査の現場監督の立会い方です。
今までは現場監督の現地立会いは必須でした。
しかしコロナ禍がきっかけで、現地に補助者がいればデジタル技術(Zoom、Facetimeなど)を用いて完了検査の立会いをしてもよいことになりました。
理由は現場監督に対し
- コロナ禍で現地に立ち会うことができない
- 移動する時間・負担を減らす
- 効率化や働き方改革につながるように期待されるため
だからです。
完了検査を終えると新しい暮らしのはじまり
完了検査は、建築基準法で定められた義務であり、工事完了後に建築基準関係規定に適合しているかを判断する最後の検査。
無事に適合が認められ検査済証が交付されたら建築主へ引き渡し、新しい暮らしのスタートです!
暮らしの要である住宅が、違法な建物ではないと証明されることほど安心感はありませんよね。
そして今後、リフォームや増築する際なども検査済証は必ず必要です。
今後の未来を創り上げていく証なので大切に保管してください。
間取り、階段の寸法、開口部の位置など