北欧家具デザインのスパイス役!ヴァ―ナー・パントンの半生や代表作を紹介

    「パントンチェア」のデザイナーとして知られるヴァ―ナー・パントン。

    ミッドセンチュリーを象徴する人物の一人であり、色を重視した空間や家具を数多く手掛けました。

    この記事では、ヴァ―ナー・パントンの成り立ちやデザインの特徴、代表作について詳しく解説します。

    色を操るヴァ―ナー・パントンとは?

    「パントンチェア」のデザイナーとして有名な「ヴァ―ナー・パントン」は、1926年にデンマークのガムトフテに生まれました。

    もともと画家志望だったこともあり、優れた色彩感覚をもっていましたが、父親からの反対を受けて建築家を目指すようになります。

    パントンの特徴は、家具単体ではなく照明やテキスタイルなども含め、総合的に空間をデザインするところにあります。

    また固定概念を覆す斬新なフォルムも持ち味。万人受けするものではありませんでしたが、奇抜でポップな作品は北欧家具デザイン界において良いスパイス役となりました。

    デンマークの照明メーカー「ルイス・ポールセン」や家具デザイン会社「フリッツ・ハンセン」からも、彼が手掛けた数多くの作品が発表されています。

    ヤコブセンの事務所でアントチェアの開発に関わる

    パントンはアルネ・ヤコブセンの事務所で働き「アントチェア」の開発などにも関わっています。

    アントチェアの製造を叶えるため、ヤコブセンが粘り強く交渉する姿をそばで見ていたのでしょう。

    メーカーと共に試行錯誤を繰り返しながら、アイデアを実現するために努力を続ける姿勢は、このときに培われたものなのかもしれません。

    チボリチェア公園内に向けた作品が製品化

    チボリ公園内のレストランに向けて手掛けた「バチェラーチェア」と、初の作品となる通称「チボリチェア」が、アントチェアのメーカーで知られる「フリッツ・ハンセン」より製品化を果たしました。

    この2つの作品からはパントンらしい奇抜な作風は、まだ感じられません。

    ヤコブセンの事務所に勤務していたときの影響が残っているのでしょう。

    父の民宿のインテリアデザインを手掛ける

    1958年にパントンは、父親が経営する民宿「KRO(クロ)」の増築工事においてインテリアデザインを担当しています。

    初期の代表作となる「コーンチェア」を手掛け、チボリチェアと共にレストランに設置しました。

    インテリアはパントンが好きな赤色で統一。テーブルクロスから従業員の制服にまで赤が使われています。

    代表作パントンチェアが誕生する

    パントンチェア

    1967年にパントンのシンボルともいえる作品「パントンチェア」が発表されました。

    1950年創業のスイスの家具メーカー「ヴィトラ」の力を借りて念願の製品化を果たします。

    アイデアは長年温めていましたが、当時のプラスチック成型技術で実現させるのは困難だったのです。

    世界初となるプラスチック一体成型かつスタッキング可能な椅子は世界中に衝撃をもたらしました。

    その後、国際的なデザイン賞を多数獲得。20世紀を代表する作品として、現在も多くの人から高い評価を受けています。

    パントンチェアの盗作疑惑騒動

    パントンの代表作であるパントンチェアの発表直後に、盗作疑惑が持ちあがります。

    訴えた人物はデザイナーである「グンナー・オーゴー・アンデルセン」と、当時同僚だった「ポール・ケアホルム」の2人です。

    彼らの試作品からパントンがアイデアを盗んだと主張しました。これに対してパントンは具体的な反論をしなかったため、真相は分かりませんでした。

    けれどアイデアを形にするためメーカーに粘り強く交渉し、製品化を果たしたのはパントンの力であったことは間違いないでしょう。

    「Lidt om farver(Note on color)」を刊行

    1991年に「Lidt om farver(Note on color)」をデンマークデザインセンターから刊行しました。

    「色についての考察」という意味の論文です。

    自身がこれまでに研究した色についての知識や経験をエッセイ風にまとめています。

    トラポルト美術館にて展覧会が開かれる

    パントンが亡くなった1998年9月5日から12日後、現代デンマークの美術・工芸デザインを集めた美術館「トラポルト美術館 」にて「ヴァ―ナー・パントン光と色展」が開催されます。

    生前パントンは、この展覧会のためにテーブルランプ「パンテラ ミニ」の8色を用意しました。

    レッドやイエロー、グリーンなど鮮やかなカラーを用いて、光と色彩の融合を表現しようとしたのです。

    この展覧会は追悼展となってしまいますが、彼の母国デンマークで改めて功績が称えられる機会となりました。

    ヴェルナー・パントンを代表する作品

    パントンが手掛ける作品は枠にとらわれない斬新なデザインと、インテリアの主役になる大胆な色使いが特徴です。

    ここからは、代表的な照明や家具をご紹介します。

    パントンを象徴するパンテラ

    パンテラシリーズ

    パントンを象徴する照明シリーズ「パンテラ」。

    半球形のシェードは存在感があるため、消灯時もオブジェのように目で見て楽しめます。

    眩しくないけれど、必要な場所を明るく照らす快適な光からは「ポール・ヘニングセン」のランプデザインの影響をうかがえます。

    • 代表作である「パンテラ フロア
    • 3種類のサイズから成る「パンテラ テーブル
    • 充電式で屋外でも使用できる「パンテラ ポータブル

    使用する場所や用途に合わせて、豊富な種類から選べるのが魅力的です。

    個性を感じるフラワーポット

    フラワーポットのある空間

    半球形を合わせたようなデザインが目を引く「フラワーポット」シリーズ。

    パントンの個性を感じるペンダントライトやテーブルランプは、ミッドセンチュリーのアイコン的存在となります。

    1960年代後半、ベトナム反戦を望む「フラワーパワー運動(武器ではなく花を)」の象徴となり、注目を集めました。

    自身の名前が付いたパントンチェア

    パントンチェアのある空間

    「パントンチェア」は彼の代名詞的作品で、ミッドセンチュリーデザインの象徴にもなりました。

    大きく湾曲したフォルムと、プラスチックならではの艶がモダンな雰囲気。

    単体で配置しても、複数並べても絵になります。継ぎ目がなくスタッキングできるのも特徴です。

    パントンは手頃な価格でプラスチック製の椅子を販売することを目標にしていました。

    彼の願いを実現させるため、時代に合わせて樹脂素材を変えながら製造されています。

    ポップなシルエットのコーンチェア

    コーンチェア

    その名の通りコーンをひっくり返したようなデザインが印象的な「コーンチェア」。

    目を引くポップな色使いと、上品さが漂うスチール製のベースのバランスが絶妙です。

    一体化したアーム部分と背もたれにより、快適な座り心地を実現しています。

    アート作品のようなリビングタワー

    リビングタワーのある空間

    1968年に発表された家具「リビングタワー」は、まるで芸術作品のよう。

    パントンらしい遊び心あふれる仕上がりになっています。バーチ材を使ったフレームは高さ2m以上。

    安定感があり、全体にはクッションと布張りが施されているため、自由な体勢で寛げます。

    家族や仲間と座ったり寝転んだりして、コミュニケーションを図るときにもぴったりです。

    ポップなカラーが主役のヴィジョナ スツール

    ヴィジョナスツールのある空間

    「ヴィジョナ スツール」は1970年にケルンで開催された展覧会「ヴィジョナ展」に向けてデザインされた作品です。

    腰掛けるのはもちろんオットマンとして、足を乗せてリラックスするのにも向いています。

    円柱形のシンプルなフォルムに、ちらりと覗く黒いベースがアクセント。

    色のバリエーションが豊富なので、インテリアとのコーディネートも楽しめます。

    布製のカバーは取り外しができ、お手入れしやすいのも嬉しいポイントです。

    和モダンな印象のタタミチェア

    「タタミチェア」は1993年に京都の「興石(こうせき)」に向けて作られた低座椅子。

    積層合板を曲げる技術を使ったカーブが印象的です。パントンの隠れた名作といえるでしょう。

    和とモダンが融合したデザインは日本の住宅に最適で、和室にも良く似合います。

    デザイン界のスパイス役となった人物

    色への探求心が強く独自の世界観をもつ、ヴァ―ナー・パントン。

    かつてない斬新さから波紋を呼ぶこともありましたが、北欧家具デザイン界の良いスパイスになりました。

    インテリアの主役になる作品の数々はミッドセンチュリーの象徴となり、現在も多くのファンを魅了し続けています。