寒さの厳しいドイツ発祥の建築方式である「パッシブハウス」。
断熱・省エネ効果に優れた性能を持っていますが、日本で主流の住宅と比べてどんな違いがあるのでしょうか?
この記事では、パッシブハウスの特徴・メリット・建築するときの注意点などについて詳しく解説します。
目次
パッシブハウスとは
パッシブハウスとは、寒さの厳しいドイツで生まれた高断熱住宅のことです。
断熱性能と省エネ性能に優れており、外気の影響を受けにくい高気密空間が大きな特徴になっています。
高性能家電や特定の建築構法に頼るのではなく、基礎的な素材の性能を高めることで高い品質を担保しています。
パッシブハウスの認定基準
パッシブハウスとして認められるには、ドイツにあるパッシブハウス研究所が掲げる認定基準を満たす必要があります。
本家から認定を受けるのは非常に難しく、土地の構造や自然エネルギーを計算に入れた高度な設計と建築技術が必要になります。
寒暖差の激しい日本の住宅では、求められる断熱性がドイツの条件よりもさらに難しくなっています。
フルオーダー設計が必要
パッシブハウスを建てる場合は、注文住宅によるフルオーダー設計が基本になります。
土地の条件に合ったエネルギー効率(断熱・採光・換気など)を細かく計算する必要があるので、中古物件のリフォームなどでは認定基準を満たすのが難しいためです。
また、どんな工務店でも建てられるわけではなく、エネルギー効率の専門知識と高度な設計技術、豊富な施工実績を持つ業者に限られるのも特徴です。
省エネ住宅やZEHとの違い
意味合いが似ている「省エネ住宅」や「ZEH」との違いも確認しておきましょう。
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを略した言葉で、省エネ性能に加えて太陽光発電システムなどの「創エネルギー機能」を備えた住宅のこと。こちらは国が定めた認定基準が存在し、認められれば補助金を受け取ることも可能です。
パッシブハウスに住むメリット
パッシブハウスは通常の住宅と比べてどんなメリットがあるのでしょうか。
特に優れるポイントを3つの側面から解説します。
環境に優しい快適な空間
パッシブハウスの大きな特徴は、高性能設備や家電に頼り切るのではなく、基礎素材を強化して住宅性能を上げていく建築方式であること。
家づくりにおいて環境を破壊するような設備や機器が必要ないため、地球に優しいエコな家に住めるというメリットがあります。
断熱性能が高いのでエアコンの稼働は少なくて済み、暖房器具の配置もほとんど必要ありません。
家自体の強度も高く長持ちしやすいので、心地よい空間で長く暮らしたい人にはおすすめです。
省エネ効果が高く光熱費が安い
家全体の断熱性能が非常に高いので、通常の住宅と比べて省エネ効果が高いのも魅力です。
パッシブハウスの認定基準を満たした家であれば、エアコン1台で住宅の全部屋を快適な温度に保てるほどの性能があると言われています。
広い部屋でも大掛かりな空調設備が必要なくなるので、月々の光熱費を安く済ませることができるのです。
室内の温度差が少なく健康に暮らせる
パッシブハウスは室内の気密性が高く、外気の影響を受けにくいという特徴があります。
部屋内の温度が常に一定になるので、1日を通して気温差の幅が少ないというメリットがあります。
四季によって気温が乱高下する日本では、特に冬の冷え込みが厳しくなりがち。
急激な温度差によって起こるヒートショック現象の予防にもなるので、若い世代はもちろんのこと、健康に気を遣う高齢者にも住みやすい家となっています。
パッシブハウスのデメリットとは?
断熱・省エネ性能に優れるパッシブハウスですが、もちろんデメリットも存在します。
建築費用が高い
パッシブハウスのわかりやすいデメリットは、建築費用が高くなってしまうことです。
ドイツのパッシブハウス研究所が定める認定基準を満たすためには、通常の住宅と比べて約3倍近くもの断熱材を使用する必要があります。
素材の性能を上げれば当然トータルコストも上がるので、多めの予算を確保しておく必要があるでしょう。
また、土地に合わせた緻密なエネルギー設計が必要となるため、設計や土地調査にかかる費用も通常よりも高くなりやすいです。
土地の選定が難しい
パッシブハウスを建てる土地選びも難しいポイントの一つです。
日当たりが良く年間の温度差が少ない土地のほうが当然建てやすいのですが、全ての条件を満たす土地を探し出すのは至難の技。
エネルギー効率に関する専門的な知識が必要になるうえ、土地ごとに異なる計算式で設計を考えなければなりません。
通常の住宅よりも土地を比較・検討するためのデータが多くなってしまうのがデメリットです。
短期的なコスパを重視するなら微妙
パッシブハウスは世代を超えて長期的に住むことを想定した家なので、自分の代だけでコスパを考えるとオーバースペックな性能になりがちです。
親・子・孫と世代を通じて家を引き継ぐならば性能に見合っていると言えますが、住み替えや引っ越しを前提としたライフスタイルならば、もっと安い注文住宅や賃貸を選んだほうが良い場合もあります。
「お得な値段でマイホームを手に入れたい」という目的だけであれば、土地選びや設計の制約を緩くできる別の注文住宅プランのほうが優れているので、コスパと品質のバランスを常に考えていく必要があるでしょう。
パッシブハウスを建てるときに注意すべき3つのポイント
最後に、パッシブハウスを建てるときに注意すべきポイントについて解説します。
良い条件の土地を探す
最初からパッシブハウスを建てる予定なら、なるべく条件の良い土地を探すのが予算を抑えるコツです。
土地の条件に応じて断熱素材の数や採光率を計算するので、厳密にはどんな土地にでも建てることが可能です。
しかし自然エネルギーが少ない土地だと余分に断熱材が必要になるので、トータルの施工コストが高くなってしまいます。
土地の価格が安くても施工費が高くなってしまうと意味がないので、あらゆる条件面を比較しながら、住みたい地域と土地を探してみてください。
十分な予算を確保する
購入する土地の条件によって費用が大きく変動してしまう可能性があるので、予算は余裕を持って組んでおくのがおすすめです。
必要になる断熱材の関係上、土地購入後のコストカットはしにくいので、事前に理想の間取りや暮らしをイメージしておくと便利です。
都心部と田舎エリアでは当然坪単価も異なるので、地域の施工相場も事前に調べておくと良いでしょう。
施工可能な工務店を探す
パッシブハウスを施工できる工務店・設計事務所を探しておくのも重要なポイントの一つ。
いくら良い土地を見つけたとしても、その地域で施工できる建築業者がいなければ建築は不可能です。
パッシブハウスジャパンの公式サイトから地域ごとに施工可能な工務店の一覧を確認できるので、施工業者を探すときの指標にしてみてください。
ただし業者によって技術はピンキリなので、工務店の公式サイトなどで実際の施工実績や建築技術をリサーチしておきましょう。
パッシブハウスで省エネ住宅を実現
この記事では、パッシブハウスの特徴やメリットについてわかりやすく解説しました。
最高クラスの断熱性能を誇る住宅ですが、建築難易度は非常に高く、気軽な気持ちで建てられる家ではありません。
自分が求めるライフスタイルを見極めながら、理想的なパッシブハウスを建てるときの参考にしてみてください。
単に省エネ機能が高い住宅全般のことを指します。明確な定義や認定基準はないため、住宅の家電性能によって省エネの度合いが大きく変わるのが特徴です。