注文住宅を計画しているときに、施工会社から図面を見せられて、「廊下幅はこれくらいでいいですか?」と聞かれたことはありませんか?
初めてだと、図面を見ただけではそれが実際にどのくらいの幅なのかや、その幅で本当に十分なのかなど、イメージが沸かないことも少なくありませんよね。
そこで今回は、住宅の廊下幅の決まりや一般的な廊下の幅、後悔しないための廊下幅の決め方などをご紹介します。
目次
廊下幅ってどのくらい必要?
そもそも一般的な廊下の幅はどのくらいなのでしょうか。
法律上の決まりやライフスタイルに合わせた最適な廊下幅について解説します。
法律上の決まり
建築基準法では、住宅の廊下幅は避難規定で定める「避難経路の有効幅」によって決められています。
戸建て住宅の場合は、下記2つの条件を満たしている時に、最低限の廊下幅を設定する必要があります。
- 3階建て以上、または採光の基準を満たす部屋がある階
- 居室の床面積の合計が200平方メートルを超える階
ただし、一般的な戸建住宅ではこの条件を満たすケースは少ないので、廊下の幅を自由に設計できることがほとんどです。
一般的な廊下の幅
一般的な住宅では、「尺モジュール」という寸法が採用されるケースがほとんどです。
この尺モジュールの基準が910mm。
そこから壁や柱などの厚みを除くと75〜80cmほどになり、これが一般的な廊下幅となります。
さらに、廊下を利用する人がすれ違うのに必要な通路の幅は最低78cmと言われています。
車椅子が通れる廊下の幅
車椅子の幅はJIS規格で定められており、手動式車椅子で63cm以下、電動式車椅子で70cm以下となっています。
この数字を見ると、一般的な廊下幅である75〜80cmあれば十分のように感じられるかもしれません。
しかし、車椅子で廊下を進むには、車椅子の幅ギリギリに壁があると、なかなかスムーズには行きません。
車椅子でスムーズに廊下を進むためには、90cm以上の幅が望ましいとされています。
後悔しない廊下幅の決め方
家を建てて、住み始めてから廊下の幅が狭かったり逆に広すぎたりと、後悔してしまうことも少なくありません。
そこで、後悔しないための廊下幅の決め方をご紹介します。
家具や家電が通るかどうかを検討する
大きな家具や家電製品を搬入するときに、廊下の幅が狭いと心配になってしまうものですが、ほとんどの家具や家電製品は78cmほどの幅があれば問題なく搬入できます。
大型の冷蔵庫やテレビなどであっても問題になるケースは少ないので、最低限の幅を確保できていれば、そこまで慎重に検討をする必要はないでしょう。
家族構成やライフスタイルに合わせて選択する
家族構成やこれからのライフスタイルに合わせて廊下の幅を選択しましょう。
今現在高齢の家族や車椅子ユーザーの家族がいる場合、車椅子がスムーズに通れる幅の確保や、手すりを設置できるだけの幅の確保が必要です。
ゆとりのある家づくりが可能な土地があるケースでは、廊下を単なる通路として捉えるのではなく、廊下の壁を活用して収納を確保したり、廊下の一角を広く取りワークスペースを設置したりといった使い方もできます。
廊下幅を広げるメリット・デメリット
廊下幅を広げることには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
それぞれ詳しく解説します。
廊下幅を広げることのメリット
廊下幅が広いと、ゆとりのある広々とした印象の家になります。
さらに、すれ違いや車椅子での移動もスムーズになるという点も大きなメリットです。
将来的に廊下に手すりを設置したいと思ったときにも、廊下の幅が極端に狭くなるのを気にすることなく取り付けができます。
廊下幅を広げることのデメリット
廊下幅を広げることの大きなデメリットは、リビングなどの居室に使う面積が少なくなってしまうことです。
敷地面積や建物面積にゆとりがある場合にはさほど問題ありませんが、スペースに限りがある住宅の場合は、廊下幅を広くすることで窮屈な印象の家になってしまう可能性があります。
廊下幅を狭くするメリット・デメリット
逆に、廊下の幅を狭くすることで生じるメリットやデメリットを見ていきましょう。
廊下幅を狭くすることのメリット
廊下幅を狭くすることのメリットは、廊下以外のスペースを広く使うことができる点です。
廊下以外の居室スペースを広くすることで、ゆとりのある広々とした大空間を作ることが可能です。
最近の住宅では、廊下を設置せず居室に使える空間を広く設けるケースも増えてきています。
住宅自体の機能性が高くなってきていることもあり、昔のように廊下で空間を区切る必要が無くなったことが理由と考えられます。
廊下幅を狭くすることのデメリット
廊下を狭くすることのデメリットは、すれ違いがしにくくなる点です。
朝の支度で家族みんなが忙しい時間帯に廊下の幅が狭く、上手くすれ違えないとそれだけでストレスになってしまうもの。
これでは快適な住環境とは言えません。
廊下の幅を極端に狭くすることで、将来手すりを設置することも難しくなってしまう可能性もあります。
今の暮らしだけでなく、将来のことも考えた設計を検討しましょう。
廊下に手すりをつけるときの注意点
今は必要なくても、将来的に手すりが必要になる可能性は誰にでもあります。
いざ手すりをつけようと思ったときに後悔しないためにも、設計段階からしっかりと考えておきましょう。
手すりの内側からの幅が廊下幅と捉えられる
手すりを設置する廊下は、壁と壁の間ではなく、手すりの内側の幅を廊下幅として捉えます。
そのため、手すり部分を含めた幅で設計をする必要があります。
車椅子自体の幅と手すりの幅を考慮した場合、壁と壁の間に90cm程度の幅があればほぼ問題ないでしょう。
最初から手すりについて考慮した設計にする
「いつか手すりを設置する必要が出てくるかもしれない」と考えて設計をすることも大切なポイントです。
手すりについて全く考慮せずに設計した廊下にいざ手すりを設置しようと思っても、狭すぎて設置できないなんてことも。
廊下幅を広げるために大掛かりなリフォーム工事が必要になってしまう可能性もあります。
さらに、手すりだけでなく車椅子が必要になったときには、さらに広い廊下幅が必要になることがある点も頭に入れておきましょう。
ライフスタイルに合わせた廊下幅を計画しよう
長い年月を過ごすマイホーム。その中で家族構成やライフスタイルは大きく変化していきます。
家の廊下幅は、今現在は広く取る必要はないと思っていても、いつか車椅子や手すりが必要になる可能性もあります。
そんなときに後悔することがないように、設計段階から将来のことも考慮した計画を立てることが大切です。
最近では、廊下のない間取りの戸建住宅も増えています。
暮らし方や家族構成などに合わせた最適な間取りを検討してみましょう。