「化粧梁」や「あらわし梁」とは、本来は天井裏に隠れている梁(はり)をあえて見せるインテリア手法のこと。
ダイナミックに梁が横切る吹き抜けや、梁が見えるほど高い天井に憧れる方も多いのではないでしょうか。
この記事では化粧梁の特徴を詳しく解説し、梁を見せる効果や相性のいい間取りも合わせて紹介します。
これから家づくりをする方は、ぜひ最後まで読んで化粧梁の知識を深めてください。
目次
化粧梁とは?あらわし梁との違いはあるの?
梁とは、柱に対して横向きに渡す構造部材のこと。
柱と柱をつないで固定し、屋根や2階を支える役目があります。
梁は、普通は天井の中に隠れて見えません。
それをあえて見せたものを「化粧梁」と言います。
「あらわし梁」と呼ばれることもあります。
「あらわし梁」は構造上の梁を見せる仕上げ
「あらわし梁」は、構造部材の梁をそのまま見せる仕上げ方のこと。
吹き抜け空間を横切るように梁全体を見せるほか、天井に沿わせるように梁をつけて、梁の一部を見せる方法もあります。
太い梁が露出しているので、空間がダイナミックに感じられます。
「化粧梁」は構造とは関係ない装飾のための梁
一方「化粧梁」とは、構造とは関係ない「装飾のための梁」のことです。
例えば、梁の素材が鉄骨や集成材の場合、そのまま露出するとかえって見映えが悪くなります。
そこで、梁の表面に無垢板や木目シートを張って仕上げます。
インテリアの雰囲気と合わせる「お化粧」をほどこすイメージです。
また、構造上は梁が必要ない場所に設置する化粧梁もあります。
1階の高い天井に梁を見せたい場合、2階を支える梁は2本で十分でも、デザイン的にはちょっと物足りない。
そこで梁を模した部材を3本追加し、バランスよく5本の梁をデザインすることがあります。
この追加した梁が化粧梁です。
梁を見せるとどんな空間になる?
化粧梁やあらわし梁を住宅に取り入れると、空間に次のような魅力が生まれます。
天井が高く開放的になる
梁を見せる部分には、天井板を張りません。
天井裏がないため、天井が高くなって開放的な空間に。
部屋が広く感じられる効果も期待できます。
室内に奥行きが生まれる
化粧梁を設けると、天井に凹凸ができます。
そこに太陽や間接照明の光が当たると、上品な陰影ができ立体感が強調されます。
フラットな天井に比べると、室内に奥行きが生まれ、まるで歴史ある古民家やラグジュアリーホテルのような高級感のある雰囲気が味わえます。
構造のダイナミックさが感じられる
屋根や2階を支える梁は、太くてどっしりとした部材です。
吹き抜けの広がりが太い部材で強調され、ダイナミックな構造を楽しめます。
何があっても大丈夫という、安心感もありますね。
個性的でインパクトのある空間を演出できるでしょう。
化粧梁と相性のいい間取りは?
「化粧梁」は存在感のあるインテリア手法なので、間取りによっては十分に効果を感じられないこともあります。
化粧梁と相性のいい間取りを知って、適切に取り入れましょう。
吹き抜け
化粧梁が最も似合うのは、天井の高い吹き抜け空間です。
2フロア分の高さがある吹き抜けは、天井の高さや開放感が魅力。
リビングやダイニングキッチンなど、広い空間でよく使われます。
構造上、梁を見せざるを得ないことも多いため、インテリアに合わせやすい化粧梁はぴったり。
梁の表面の素材や色を空間に合わせ、統一感のあるコーディネートにまとめます。
勾配天井
屋根の角度に合わせて斜めにした天井が「勾配天井」です。
天井の高さや斜めの角度によって、空間の広がりが楽しめます。
せっかくの開放感を楽しむには、立体感を強調することがポイント。
白い壁や天井では、その立体感がつかめません。
そこで、役立つのが化粧梁です。
勾配に沿って化粧梁をつけたり、吹き抜けを横切るあらわし梁を使ったりします。
折り上げ天井
「折り上げ天井」は、天井の中央だけを一段高く仕上げた天井のことです。
天井の低い部屋でも、開放感が生まれ空間を広く見せることができます。
一段高く仕上げるため梁を見せやすく、化粧梁とは好相性。
梁が空間のアクセントとなり、天井の高さを強調してくれます。
梁に天井と同じクロスを巻いたり、床フローリングと同じ色の板を張ったりして仕上げます。
化粧梁を設置する場合の注意点
さて、魅力たっぷりの化粧梁ですが、実際に採用するなら知っておきたい注意点もあります。
こんなはずじゃなかったと後悔しないよう、事前に知っておくと安心です。
梁の上を掃除しにくい
吹き抜けで梁全体を見せる化粧梁とする場合、梁の上にはどうしてもほこりがたまってしまいます。
シーリングファンの動きや窓から入る風で、そのほこりが落ちてきてしまうのは避けたいですね。
とはいえ梁の高さは、1階の天井くらいの位置。
伸縮式のモップがあれば、台に乗らずとも掃除できますので、それほどデメリットに感じる必要はないでしょう。
照明の影になることがある
吹き抜けを横切るように化粧梁を設置したり、勾配天井の傾斜に沿って化粧梁をつけたりする場合は、照明との兼ね合いに注意しましょう。
化粧梁は天井に陰影が生まれるのが魅力ですが、梁の位置や厚みで照明の光が届かないことがあってはよくありません。
最終図面で、照明の位置もチェックし、問題ないことを確認しましょう。
防音性や断熱性が下がることがある
化粧梁を設置した部屋では、天井裏が小さくなります。
そのため、上下階の遮音性や室内の断熱性に影響する可能性があります。
しかし、近年の注文住宅は高い気密性や断熱性を備えています。
化粧梁にしたために階下がうるさくなる、クーラーが効きにくいというほどの影響が出ることはないため、あまり気にしなくても大丈夫でしょう。
あらわし梁は位置を変更できない
「あらわし梁」は、構造上の梁をそのまま見せる方法です。
そのため、デザイン的なバランスを理由に位置を変更することは難しいもの。
位置によっては、空間の広がりを損なうこともあるため、設計者とともによく確認しましょう。
模型やパースを活用すると、安心して計画を進められます。
装飾のための「化粧梁」を選ぶメリット
構造上の梁をそのまま見せる「あらわし梁」ではなく、デザイン性を高めるために使う「化粧梁」を選ぶケースも増えています。
「化粧梁」を選ぶメリットを改めて整理しておきます。
梁の位置や太さを自由に設計できる
装飾のために使う「化粧梁」は、位置や太さに構造的な制限がありません。
通常の梁は、2階や屋根を支えて地震に耐えるために、太さや位置を計算して設置します。
そのため、デザイン上のバランスを理由に細くしたり位置を変えたりすることは、基本的にできません。
デザイン上の理由で天井に梁を見せたい場合は、柔軟に対応しやすい化粧梁を選びましょう。
ツーバイフォーや鉄骨造でも設置できる
建物の構造によっては、梁の部材そのものがない、見せる梁に向いていないケースもあります。
例えば、パネル状の構造部材で建てるツーバイフォーでは梁がありません。
また、鉄骨造の梁は鉄骨できているので木目を使ったインテリアにはなじみにくい心配があります。
そんな時も、化粧梁なら対応可能です。
梁を模した部材を天井につけたり、鉄骨の梁を無垢板や木目シートで装飾したりして、梁を見せる仕上げを楽しめます。
省令準耐火構造にしやすい
一般的な木造住宅でも「化粧梁」を採用するメリットがあります。
あらわし梁としてそのまま梁を見せると、建築基準法上の耐火性能を満たせないことがあります。
その場合は、梁に耐火性のある石膏ボードなどを張って仕上げる化粧梁にすると、耐火性能を満たせます。
一定の耐火性能を満たす構造を「省令準耐火構造」と良い、火災保険などの割引が適用されることもあるため、木造でもあえて化粧梁を採用することがあります。
上手に化粧梁を取り入れて開放感のある空間に
吹き抜けの開放感や高天井の広がりを強調し、奥行きのあるインテリアを演出してくれるのが「化粧梁」の魅力です。
存在感のある部材なので、メリット・デメリットを踏まえ効果的に取り入れたいもの。
間取りとの相性を見極め、インテリアや構造ともバランスを取りながら計画することが大切です。
TIMBER YARDは、デザイン性の高いインテリアを数多く提案しています。
ぜひお気軽にご相談ください。
「化粧梁」と「あらわし梁」の違いを知っておくと、どう取り入れるか選びやすくなるので、少し解説しておきますね。