パラペットは、陸屋根(傾斜のない平坦な屋根)などによくある立ち上がり部分で、家を雨水から守ってくれる存在です。
一見便利な存在ですが、実はパラペット自体が家の劣化を早めてしまうケースがあることをご存知でしょうか?
これから設置を検討している人は、パラペットの役割や適切な設置方法を知っておくことが大切です。
この記事では、パラペットの役割やメリット・デメリット、修復方法について解説します。
目次
パラペットの役割とは
パラペットとは、屋根の上に付いている短い立ち上がり部分のことです。
屋根の外側にぐるりと張り巡らせてあるので、転落防止のために存在していると勘違いする人も多いようです。
しかし、パラペットのメインの目的は排水です。
それ以外にも「建物の外観を美しく見せたい」「パラペット部分に看板を取り付けたい」といった目的で、パラペットを設置する場合もあります。
パラペットを取り付けるメリット
パラペットは店舗ビルや一般住宅など、さまざまな建物に設置されています。
パラペットを取り付けるメリットとはどんなものなのか、見てみましょう。
外壁に雨が流れなくなる
パラペットの大きな目的は排水です。
たとえば、真四角の建物が雨に晒されたとします。
屋根に降り注いだ雨は、どこに流れるでしょうか。
屋根からまっすぐ壁を伝って地面に流れていきますよね。すると外壁には、屋根の汚れを含んだ水滴の跡が残ってしまいます。
何年もこれが繰り返されれば、外壁は傷み見た目も悪くなるでしょう。
パラペットが設置されることで、雨が壁に流れるのをせきとめ、雨は雨樋に流れるので壁の汚れや傷みを防ぐことができます。
壁と屋根の接合部分の劣化を防げる
建物には、壁と屋根の接合部分があります。
建物の接合部分は最も劣化しやすく、雨が入りやすい場所です。
パラペットを設置することで結合部分に雨が触れるのを防げるため、劣化するスピードを抑えることができます。
住宅のデザインがおしゃれになる
真四角の屋根の場合、排水目的としてパラペットをつける場合が多いです。
しかし 四角以外の屋根の場合は、目的が排水ではないケースもあります。
モダンデザインの建物として人気なのが、キューブ型タイプの住宅です。
「古い我が家も現代風のキューブ型の家にしたい」というときに、パラペットが役立ちます。
勾配のついた屋根でもまわりにパラペットを立ち上げることで、外から見れば真四角のデザインになります。このように、家の外観を変える目的でパラペットを設置するご家庭も多くあります。
パラペットを取り付けるデメリット
一方で、パラペットの取り付けにはデメリットもあります。
メリットと合わせて確認をして、パラペット設置の必要性をあらためて考えてみましょう。
雨漏りしやすい
パラペットは屋根と壁の接続部分や壁自体に流れる雨を受け止めてくれます。
そのため、これらの箇所からの雨漏りを防ぐ効果は、大いに期待できるでしょう。
しかしパラペットがあるからまったく雨漏りをしなくなる、というわけではありません。パラペットは雨が流れるのをせきとめ、排水口に流します。
しかし排水口周りはたまった水、泥、落ち葉などにさらされやすく、劣化の早い部分です。
排水溝が詰まれば、パラペットに囲まれた屋根には雨がどんどん溜まり、やがては屋根部分を劣化させて雨漏りを引き起こしてしまいます。
さらに、パラペットの笠木部分も雨漏りがしやすい箇所です。笠木とは、パラペットの上部に張り巡らされた金物部分を指します。
パラペット上部の劣化を防いでくれる役割がありますが、つなぎ目やビス穴が弱点です。そこから雨水が侵入してしまえば、雨漏りの原因となってしまいます。
笠木の劣化による雨漏りを想定して、つなぎ目とビス穴にはコーキングを、笠木の下には防水シートが設置されています。
しかしどちらも劣化してしまえば、結局雨漏りを引きおこしてしまうでしょう。
箱樋のつまりに気づきにくい
パラペットの排水経路のひとつに箱樋があります。
箱樋とはパラペットの足元、屋根とパラペットの間に作られた溝のことです。
箱樋の溝は雨水をため、排水口へと流す役割を担っています。
しかし排水溝が詰まってしまえば、箱樋には水がどんどん溜まっていきます。
通常の勾配のついた屋根なら、樋が詰まれば雨水が屋根から直接垂れてくるため、詰まりに気づけるでしょう。
しかしパラペットがついた屋根は、ただひたすら水を溜めていくのみです。
屋根上に登る機会も少ないため、箱樋の雨水の溜まりに気づくのが遅れてしまいます。その結果、気づいたときには屋根が劣化していたなんてことも珍しくありません。
外壁の通気性が悪くなる
パラペットを設置することで外壁と屋根の境界線が塞がれます。
これによってつなぎ目の雨漏りを防止できますが、外壁の通気も同時に防いでしまいます。
外壁通気のない屋内は結露が発生したり、カビやすくなったりと、不具合が発生する確率が高くなってしまいます。
木造住宅の場合は、特に外壁通気や屋根裏通気が大切です。
木材が湿気で傷んでしまえば建物自体の寿命も短くなり、住んでいる人の安全性も確立できなくなります。パラペット用の換気部材などで対策をとるようにしましょう。
コストがかかる
パラペットの設置工事は、通常の屋根工事に追加で施工費がかかってしまいます。
さらにパラペット設置によって、屋根の状態が把握しにくくなるため、定期的なメンテナンスも必要になります。
また、万が一雨漏りをしたときは、パラペットの修理を頼む板金工事会社、外壁リフォームの会社、屋根の修理会社の3つに連絡をしなくてはならない場合もあります。
このように、パラペットの設置は通常の勾配屋根よりも費用が高くなりがちです。
パラペットが劣化したらどうする?
パラペットが劣化した場合、修復工事をしなくてはなりません。
パラペットの修復内容とはどんなものがあるのでしょうか。
コーキング修復
パラペット設置に必要なビス穴が傷んできた場合や胸壁などに亀裂が入った場合、コーキングで修復をします。
さらに接合部分などもコーキングで隙間を埋めます。
箱樋の修復
箱樋の劣化によって雨漏りしてしまった場合、まずは箱樋の修復工事が必要です。
雨樋そのものに問題があるようなら交換工事を、別の問題で詰まりが発生しているようなら発生原因を特定し、除去します。
箱樋の掃除やメンテナンス、詰まりのチェック、腐食を進めないための塗り替えなどを定期的におこなうことが大切です。
笠木の修復
笠木部分はパラペットの頂点部分にあたるため、もっとも雨風にさらされやすい場所です。
劣化によって修復が必要になった場合、コーキングでの割れ目・つなぎ目・ビス穴の処理や、笠木自体の交換工事などをします。
また、笠木下の胸壁部分も笠木の劣化により影響を受ける場合があります。
胸壁部分は塗り替え・つなぎ目のコーキング・素材によっては張り替えやカバー工事が必要です。いずれの修復工事も、状況に合わせて必要な工事内容が変化します。
不安な点があれば、必ず専門の施工会社に相談をしましょう。屋根部分は足場も悪く大変危険なため、くれぐれもDIYで済ませないように注意してください。
パラペットの役割を正しく理解しよう
パラペットは屋根の排水を適切に行うためのものです。
しかしパラペット自体が雨漏りの原因になり、建物の劣化を早めてしまう場合もあります。
特徴をしっかりと理解し、問題が発生した場合の負担も考慮したうえで、パラペットの必要性を考えてみてくださいね。