新築を検討するときに気になるのが、木造住宅の耐用年数。
しかし不動産業界で使われる耐用年数は、建物の寿命とイコールではないことをご存じでしょうか。
現在の建築技術では、木造住宅でも長寿命の住宅を建築することは可能です。
この記事では、木造住宅の耐用年数や、寿命を伸ばす建築方法について解説していきます。
新築住宅の耐用年数が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
木造住宅の耐用年数とは
木造住宅の耐用年数を図る基準は4つの種類があります。
それぞれ、対象や使う場面も異なります。
法定耐用年数 | 建物を減価償却資産として利用に耐える年数。 住宅ローン審査でも用いられる計算用の数字として使われます。 | 22年 |
物理的耐用年数 | 建物の構造材そのものの物理的耐久性・耐朽性を表します。 | 建物による |
経済的耐用年数 | 市場で売買される価値がある期間を指します。 | 約30年 |
期待耐用年数 | 通常範囲の維持管理をした場合の使用可能な年数を表します。 | 約30〜100年 |
木造住宅の法定耐用年数は22年
木造住宅の法定耐用年数とは、国税庁で公表している減価償却資産が利用に耐える年数のことで、22年と設定されています。
新築の家と築30年の家の固定資産税が同じでは税金の公平性を保てないため、さまざまな建物や付属する設備に基準が設けられています。
新築と築30年の家の住み心地の違いは、その建物のメンテナンス次第です。
木造住宅の耐用年数は一般的に30年
一般的に木造住宅の耐用年数は、約30年程度と認識されることが多いでしょう。
これには、4つの理由が考えられます。
- 築後30年程度で家族構成・生活環境が変わる家庭が多く、間取り変更などのリフォームや、建て替えを検討するタイミングだから。
- 不動産鑑定では、築25年を超えると建物評価額をゼロとし、担保価値がないと見なされる。
- 住宅設備の寿命の多くが、30年程度と設定されているため、設備の交換を検討する家庭も多く、状況によっては大規模なリフォームにつながる。
- 1981年以降の新耐震基準法以前の建物は、耐震性が低いと評価され、建て替えするケースが多いため。
実際は80年以上の木造住宅もある
木造住宅の実際の耐用年数は、建物の状況によってさまざまです。
中には快適に80年以上住まわれている住宅も存在しています。
また、大手ハウスメーカーでは、60年保証の木造住宅や、100年住宅と銘打つ木造住宅なども登場しており、建築技術の向上によって耐用年数は伸びています。
過去には、木造住宅は鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて、耐用年数が低いというイメージがありました。
しかし実際には、一概に断定できません。
国土交通省で調査された木造住宅の耐用年数
2013年に発表された国土交通省の資料(※1)には、耐用年数に対し、長い期間を目安としています。
- フラット35基準程度で50年~60年
- 劣化対策等級3で75年~90年
- 長期優良住宅認定であれば100年超
「フラット35基準」とは、全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」が使える、省エネなどの技術レベルが一定以上の住宅購入の基準です。
そのため、その基準を満たした新築は耐用年数が長いといえます。
「劣化対策等級3」とは、3世代が使い続けられる対策がされた家のことです。
「長期優良住宅」は、長期にわたって快適に住み続けられるための基準を満たした家のことです。
木造住宅でもこれらの条件を満たせば、数世代にわたって快適に住める家を建てられることを示しています。
2022年4月に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されました。
今後、耐用年数の長い木造住宅が増える可能性が高いでしょう。
※1 国土交通省:期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について
日本で木造住宅の耐用年数が短い理由
ではなぜ、これまで日本の木造住宅は耐用年数が短いとされてきたのでしょうか。
日本は新築住宅を求める人の割合が多いため、欧米に比べ耐用年数が短く評価されています。
それには以下の4つの理由が考えられます。
耐震基準の低い家が多かったため
1981年に新耐震基準法が施行されると、旧耐震基準法の建物は危険で、建て替えが必要だという考え方が一般的になりました。
何度かの巨大地震のあと、被害にあった多くの古民家が取り壊され、古い建物は危険で資産価値がないという認識が広まったことも影響しているでしょう。
安価な木材で家が建てられているため
戦後からバブル経済まで、住宅需要が増加したことで、日本では新築住宅への評価が高まりました。
今でも住宅需要は新築ニーズの高い状態が続いています。
そのため、海外からの安価な木材を使った、構造的に弱い低価格の新築住宅が販売されています。
間取りが変更しにくい設計で建てられるため
一般的な在来工法で建てられた木造住宅は、多くの柱を必要とするため、構造的に間取りを自由にできない欠点があります。
他にも水回り設備などの変更が難しい家が多くありました。
家族構成や生活環境の変化による間取り変更ができないことから、築30年程度で建て替えに踏み切る家庭も多く、耐用年数を伸ばせませんでした。
中古住宅市場が大きく育たないため
日本では新築ニーズが高く、中古住宅市場が大きく育ってこなかったことも大きな要因でしょう。
木造住宅は築25年を超えると、不動産鑑定で建物評価額がゼロとなり、中古住宅の売却にメリットがほとんどありません。
そのため、建物を取り壊して土地のみ売却するケースが目立ちます。
耐用年数の長い長期優良住宅とは
2005年、政府が温室効果ガスの排出ゼロを目指すことを宣言しました。
それに伴い、国土交通省では耐用年数の長い木造住宅建築を推進するため、税の特例措置や補助金制度などを施行しています。
その中で、長期優良住宅が注目されています。
長期優良住宅とは、2009年(平成21年)に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」による基準をクリアして認定を受けた家のことをいいます。
長期優良住宅の具体的な認定基準
新築の戸建て住宅における認定基準は、8つの項目に分かれています。
劣化対策 | 構造躯体などの劣化対策「等級3(3世代75年~90年)」で、床下空間の有効高さ確保および床下・小屋裏の点検口設置などがされている。 |
耐震性 | 地震に対し、継続利用のための改修の容易化が目的。 「耐震等級1〜3」で、住宅品質確保促進法(品確法)の免震建築物に該当する建物。 |
省エネルギー性 | 必要な断熱性能などの省エネルギー性能が確保されている。 断熱など性能「等級5」かつ一次エネルギー消費量「等級6」 |
維持管理・更新の容易性 | 耐用年数が短い設備配管について、維持管理を容易に行えるようにしてある。 維持管理対策(専用配管)「等級3」 |
居住環境 | 良好な景観の形成、居住環境の維持と向上に配慮し、地区計画、景観計画、条例によるまちなみなどの計画、建築協定、景観協定などの区域内にある場合は調和を図る。 |
住戸面積 | 一戸建ての住宅の場合は少なくとも1階の床面積が40㎡以上で、75㎡以上である。 |
維持保全計画 | 住宅の構造耐力上主要な部分、住宅の雨水の浸入を防止する部分、住宅に設ける給水または排水のための設備で、将来を見越して定期的な点検・補修などに関する計画がある。 |
災害配慮 | 自然災害による被害の発生の防止または軽減に配慮されたものである。 |
これらの条件を満たせる新築住宅は「長期優良住宅」と認定され、下記の優遇措置が受けられます。
- 地域型住宅グリーン化事業による補助金制度:140万円(最大)
- 住宅ローンの金利引き下げ
- 登録免許税・不動産取得税・固定資産税で特例措置
- 地震保険料の割引
木造住宅で耐用年数の寿命を伸ばすSE構法
これから建てる木造住宅を、長期優良住宅として認定されたい場合、SE構法で建てる方法があります。
地震に負けない頑丈な木造住宅を建ててきたSE構法なら、耐用年数の長い家を建てられます。
この章ではSE構法の特徴を解説します。
長期優良住宅の設計が可能
SE構法は、木造住宅にラーメン構法を用いて、高い耐震性や気密性、断熱性などを可能にした日本初の工法です。
SE構法の構造躯体は、長期優良住宅の認定に必要な認定基準を十分に満たすことが可能です。
さらに、ライフスタイルの変化に伴う間取りの変更がしやすい構造のため、将来的にも資産価値のある住宅を建てられます。
構造計算で高い耐震性の高い設計が可能
SE構法は構造計算を実施することで、木造住宅でも高い耐震性を可能にした建築方法です。
従来の木造建築よりも、基礎や構造躯体の強度をあげる技術を使うことで、東日本大震災や熊本地震などで倒壊しなかった「耐震等級3」を実現しています。
自由度の高い設計が可能
SE構法は間取りが変更しやすいのも、大きな特徴です。
SE構法でつくる木造住宅は、建物躯体の構造をフレームでつくる「スケルトン&インフィル」の設計手法で、スケルトン状態から内装を設計します。
頑丈なフレームで建物を構成しているので、高い天井や大きな窓など、内装デザインもかなり自由に設計でき、劣化対策「等級3」に対応可能です。
断熱性・気密性の高い設計が可能
SE構法の住宅では高機能の窓を設置することで、断熱性や気密性を高めることが可能です。
SE構法は木造住宅のため、構造躯体の木材は熱伝導率が低く、保湿性や調整機能を持ちます。
SE構法で断熱性・気密性の高い設計を施すことで、省エネルギー性の高い、断熱などの性能「等級5」を実現できます。
SE住宅性能保証書で10年保証
SE構法は登録施工店のみ建築され、10年間の無償保証やメンテナンスも登録店が請け負います。
10年経過後に指定の検査を行えば、さらに10年間の保証が延長されます。
そのため、長い期間において、定期メンテナンスをしやすい環境づくりが可能です。
長く住み続けられる快適な木造住宅をつくろう
ここまで、木造住宅の耐用年数や、寿命を伸ばす建築方法であるSE構法について解説してきました。
今後、エコの視点からも木造住宅は高く評価され、長寿命化が進むことになるでしょう。
長期優良住宅認定を受けられるSE構法の家は、構造を活かして大開口の窓や吹き抜けなどのおしゃれなデザインができることも大きな魅力です。
家を建てるなら、長く快適に住める、こだわりの家を追求しましょう。
そのため法定耐用年数と建物の寿命はイコールとはいえません。