新築住宅でオール電化を検討している方は、エコキュートを取り入れたいと考えている方も多いでしょう。
エコキュートで電気代が節約できることは知っていても、具体的な仕組みについては詳しく知らない方も多いはず。
この記事では、エコキュートの仕組みや導入するメリット・デメリット、選ぶときに気をつけるポイントを詳しく解説していきます。
目次
エコキュートとは?
エコキュートとは空気熱を利用してお湯をつくる給湯器で、ヒートポンプユニットと貯湯ユニットのセットで設置します。
ヒートポンプユニットの役割は、屋外の空気熱を自然冷媒(二酸化炭素)に取り込み、熱交換器で高温にすることです。
高温になった冷媒は、貯湯ユニットを経由してきた水に熱を伝えて、お湯にします。
熱が奪われた冷媒は、膨張弁を通って低温になります。
そしてまた屋外の空気熱を取り込みます。
冷媒の力でできた高温のお湯は貯湯ユニットに戻って水と混ざり、設定温度のお湯ができあがります。
エコキュートでは少ない電気でお湯を効率的に沸かし、さらに貯湯ユニットにお湯を貯蔵できるため、環境負荷を大幅にカットしつつ電気代を節約できます。
電気温水器やガス給湯器との違いは?
エコキュートは従来の電気温水器やガス給湯器と、何が違うのでしょうか。
ここではそれぞれの特徴を説明します。
熱源が違う
- 電気温水器
熱源はタンク内蔵のヒーターです。電気ヒーターで貯湯タンクの水を温めます。 - ガス給湯器
熱源はガスバーナーの熱です。配管の水を加熱する「直圧式」、タンクに貯めた水を加熱する「貯湯式」があります。 - エコキュート
熱源は空気熱のため、環境に優しい給湯器です。
お湯の沸かし方が違う
- 電気温水器
貯湯タンク内の電気ヒーターでお湯を沸かします。 - ガス給湯器
ガス燃焼の熱でお湯を沸かします。電気よりもお湯を沸かすパワーがあるので、水圧が安定しているのが特徴です。 - エコキュート
ヒートポンプユニット内で電気と空気の熱を使って貯湯ユニットの水を温め、お湯を沸かします。
設置スペースが違う
- 電気温水器
貯湯タンクひとつを設置するため、幅1,000×奥行き1,000(mm)程度のスペースが必要です。 - ガス給湯器
「直圧式」で壁に取り付けるタイプの場合、幅350×奥行き250×高さ600(mm)程度とコンパクトです。 - エコキュート
ヒートポンプユニットと貯湯ユニットを置くため、幅2〜3,000×奥行き1,000(mm)とかなりのスペースを必要とします。
初期費用が違う
- 電気温水器
本体・設置工事:40万円~60万円程度 - ガス給湯器
本体・設置工事:15万円~40万円程度 - エコキュート
本体・設置工事:60万円~100万円程度
サイズによって費用は異なりますが、初期費用ではエコキュートが一番高額になります。
光熱費が違う
- 電気温水器
年間100,000円程度 - ガス給湯器
年間60,000円程度 - エコキュート
年間24,000円程度
ただし電気温水器の場合、深夜電力だけでお湯を沸かすなどの工夫をすれば電気代を節約できます。
それでも、ランニングコストとしては、エコキュートが一番安くすむでしょう。
10年使用するとなると金額差がかなり大きくなるため、長期利用をするならばエコキュートがお得です。
エコキュート設置の4つのメリット
ここでは、エコキュートを設置することで得られる4つのメリットを詳しく説明します。
1:光熱費が安い
エコキュートを設置しオール電化の家にすることで、光熱費を大幅に抑えられます。
電気料金が安い深夜に稼働させれば、光熱費をより抑えやすくなるでしょう。
電気料金は地域によって異なりますが、ガス料金が必要無くなるため、お湯をつくるランニングコストが1/3〜1/4程度にまで節約できます。
2:停電・断水時などに非常用水として使える
エコキュートの貯湯ユニットのお湯(水)は、停電・断水などの災害時に非常用水としても役立ちます。
貯まったお湯(水)は備え付けの非常用水栓から取り出すことができます。
災害時のライフラインの復旧では、電気がガスよりも早く回復する可能性が高く、電気を使うエコキュートを設置していると安心できるでしょう。
3:省エネで環境負荷が少ない
エコキュートは再生可能エネルギーである空気熱を利用するため、二酸化炭素の排出量も少なく環境に優しい給湯器です。
エコキュートを設置することで、自らエネルギーをつくり出す「創エネ」と消費電力を減らす「省エネ」を実現し、長期的にも地球温暖化防止に貢献できるでしょう。
4:メーカーが豊富で選択肢が多い
エコキュートは多くのメーカーで生産されているため、性能や機能を比較して家庭に合うものを選択できます。
貯湯ユニットのサイズは、家族構成や設置場所の広さによって異なるため、設計段階から設置場所を想定しておくことをおすすめします。
エコキュート設置の6つのデメリット
ここではエコキュートのデメリットについて解説します。
エコキュートの特徴を十分理解したうえで、設置するか検討するとよいでしょう。
1:初期費用が高額
エコキュートは電気温水器やガス給湯器と比べると、設置費用が高額です。
月々の光熱費はかなり抑えられるため、長期間での費用を考える必要があります。
メーカーやサイズによっても初期費用が変わるため、利用人数や設置場所を含めて検討しましょう。
また、自治体によっては助成金制度を設けているところがあります。お住まいの地域で支給があるか調べてみましょう。
2:使いすぎると湯切れする
エコキュートは貯湯ユニットの容量によって利用できる湯量が決まっているため、急な来客や帰省などで利用人数が急に増えると、湯切れを起こす可能性があります。
普段の湯量については家族構成や生活リズムを把握し、適切な貯湯ユニットサイズを選択すれば大丈夫ですが、お正月やお盆時期など利用人数が増えることが予想される場合は、貯湯ユニットのサイズを慎重に選びましょう。
3:深夜に騒音を起こす可能性
エコキュートは深夜にお湯をつくることで光熱費を抑えていますが、その際には40デシベル程度の低周波の運転音がでます。
昼間ではほとんど気にならない程度であっても、夜間ではトラブルになる可能性があります。
接するものがあると共振してしまい、音が大きくなる場合があります。
設置場所を隣家の寝室と離す、防音シートを設置するなど、対策が必要になる場合があるでしょう。
4:シャワーの水圧が弱くなる
水道と同等レベルの水圧があるガス給湯器と比べると、「貯湯式」給湯器のエコキュートは水圧が弱くなります。
貯湯タンクを水道の水圧から守る減圧弁が設置されているためです。
キッチンとお風呂で同時にお湯を使う場合、どちらかの水圧が弱くなります。
シャワーヘッドを交換して水圧を高めたり、エコキュートの高圧力タイプを選ぶなどで対策しましょう。
5:設置場所が必要
エコキュートは電気温水器やガス給湯器に比べて、設置場所を広くとらなくてはなりません。
ヒートヒートポンプユニットはエアコンの室外機くらいの大きさ、貯湯ユニットは利用人数によってサイズ展開がありますが、ヒートポンプユニット程度の大きさがあります。
家族構成によっては大型サイズが必要となるため、設置できる場所をあらかじめ確保しましょう。
6:冬は効率が下がり、光熱費が上がる
空気の熱を利用するエコキュートは、季節の影響も受けてしまいます。
特に寒い冬の時期は空気が冷えて熱伝導率が悪くなってしまいます。
お湯をつくるのに時間がかかるため、光熱費が高くなる可能性があります。
エコキュートを選ぶときに気をつける3つのポイント
ここでは各メーカーの中からどんな基準でエコキュートを選ぶと良いのか、気をつけるべき3つのポイントを解説していきます。
1:さまざまなユニット形状
貯湯ユニットは3種類あり、標準の角型タイプ、マンションにも設置できる薄型タイプ、狭いスペースにも対応するスリム型タイプがあります。
メーカーによってさまざまなタイプが販売されているため、どれくらいのサイズなら設置できるかを調べて検討しましょう。
2:ユニット容量の違い
エコキュートの貯湯ユニットの選択はとても重要なポイントです。
湯切れを起こさないためにも、家族構成や利用人数をしっかりと把握しておく必要があります。
- 4〜5人家族向けは370リットルタイプ
- 5〜7人家族向けは460リットルタイプ
- 7〜8人家族向けは550リットルタイプ
家族の帰省や家族構成の変化が見込まれるならば、ひとつ上の容量を選ぶと安心でしょう。
3:機能の違い
エコキュートには、給湯方式の違いから3種類のタイプがあります。
- 「フルオート」タイプ
ボタンを1回押すと、お湯はり、保温、足し湯を自動でやってくれます。 - 「セミオート」タイプ
ボタンを1回押すと、お湯はりをして自動で停止します。足し湯はその都度ボタンを押します。 - 「給湯専用」タイプ
自分で蛇口をひねりお湯を出し、お知らせ音が聞こえたら、蛇口を閉めます。
「フルオート」はかなり光熱費がかかるため、費用面から考えると「セミオート」「給湯専用」をおすすめします。
エコキュートで光熱費を節約しよう
ここまで、エコキュートを導入するメリット・デメリットや、選ぶときに気をつけるポイントを詳しく解説してきました。
エコキュートは初期費用が高額ですが、環境に優しく、光熱費も大幅に節約することができます。
設置から10年が寿命といわれているので、利用期間中はこまめなメンテナンスも必要となるでしょう。
それらを見越したトータルコストやメリット・デメリットを十分理解して、エコキュートの導入を検討してみてください。
ただし、本体の交換の金額も考慮に入れると、本体寿命の長い電気温水器がお得ともいえるでしょう。