「海中を泳ぐホッキョクグマ」ポール・ニックレン
ゆたかな暮らしと住まいを提案してきたTIMBER YARDで、この度第3回目となるナショナル ジオグラフィック写真展を開催することとなりました。
世界には美しく心を打つような写真がたくさんあります。しかし、日本ではアートとしての写真を飾るという文化がまだ根付いていないように感じます。
本展では1枚1枚にストーリーの込められた写真をくつろぎの空間でご覧いただき、写真というアートをもっと身近に捉え、インテリアとしてご提案していきたいと私たちは考えています。
創刊から131年を迎える月刊誌『ナショナル ジオグラフィック』は、地球上のさまざまな事柄を綿密に取材した記事と各分野の第一線の写真家たちによるダイナミックな写真で読者に伝える世界的なビジュアルマガジンです。これまでに41のローカル版が創刊され、世界180ヵ国で840万人の読者に親しまれています。1995年に英語以外の、初の外国語版として発行された『ナショナル ジオグラフィック日本版』は、今年創刊24年を迎えました(詳細はナショナルジオグラフィック公式HPに記載)。
本展ではナショナル ジオグラフィックのフォトコレクションから、探検家の活動記録、大自然や野生動物の生態、そして人類の歴史文化などから「地球のいのち」をテーマに選りすぐりの傑作写真を20点展示します。
世界最高峰の写真家たちが捉えた迫力あふれる写真を通して、美しい地球の素晴らしさを改めて実感していただく機会となれば幸いです。
「アフガン難民の少女」スティーブ・マッカリー
ナショナル ジオグラフィック 日本版
会期中、展示写真の販売を実施いたします。プリントはすべて、富士フイルムが運営するプロラボサービス「クリエイト」による銀塩プリント(高精細印刷)です。木製またはアルミ製のフレーム付で、ご家庭をはじめ店舗やオフィスでの展示に最適です。ナショナル ジオグラフィックの写真が販売される特別な機会!是非この機会にお求めください。
なお、会場ではご予約の受け付けのみとなり、商品は後日発送致します。お届けは、ご注文状況に応じて2019年12月末頃と2020年1月末頃を予定しています
。会期中、展示作品20点の特別受注販売を行います。プリントはすべて、富士フイルムが運営するプロラボサービス「クリエイト」による銀塩プリント(高精細印刷)。作品はフレーム付きで、ご家庭や店舗、オフィスでの展示にも最適です。ナショナル ジオグラフィック屈指の名作写真を購入できる貴重な機会、ぜひ皆さまお誘いあわせの上ご来場ください。
*作品によりマットの大きさが若干異なりますので、あらかじめご了承ください。
2019年12月24(火)までに直接ご来店いただくか、またはお電話(043-242-1980)にてお問い合わせください。
日経ナショナル ジオグラフィック社の編集者をお招きし、展示作品の解説、ナショジオ写真の魅力についてのトークショーを開催いたします。数々の写真を知り尽くした編集者の方のお話を聞くことのできる貴重な機会。是非この機会に足をお運びください。
日経ナショナル ジオグラフィック社の書籍編集者の尾崎さん(写真右)と葛西さん(写真左)
TIMBER YARD
今回、ナショナル ジオグラフィック写真展をTIMBER YARDで行うこととなり、私自身とても楽しみです。そもそも一般的なギャラリーではなく、TIMBER YARDで写真展を行うことになった経緯をお話ししたいと思います。きっかけは2017年の夏に開催した井上浩輝さんの写真展でしたね。
葛西さん
そうですね。その時にTIMBER YARDさんへ初めて伺いました。とても心地よい空間だと感じて、この場にナショジオの写真が飾ってあったらどうだろうと、想像してみたんです。
尾崎さん
その話を聞いて、僕も会場にお邪魔しましたが、すごく良いなぁと思いました。今度ナショジオの写真を飾ってみたらどうでしょうと雑談的な感じでご相談したところから、今回の写真展のお話が始まっていきました。
TIMBER YARD
前回の写真展が写真を買える場であったという点も、今回の写真展を開催する理由になったのでしょうか?
尾崎さん
ナショジオのイメージって、皆さん色々お持ちなんですね。自然とか動物であったりとか、世界のいろんな面白いことを取り上げてますよねと言われたりとか。それぞれのイメージを持たれているんです。でもその中でひとつ皆さん共通しておっしゃるのが、写真が綺麗ということなんですね。それは中にいる僕らも思っていて、写真が本当に綺麗なんですよ。その写真の背景に悲しいストーリーがあったとしても、それでも写真としてはとても綺麗で美しいんです。
絵画を飾っている家は結構あると思うんですけど、クオリティーの高い写真は絵画にまけないくらい気持ちが良いです。今までギャラリーと呼ばれるような場所では写真展を何回も開催してきたんですが、飾るということに特化して写真を見せることはなかったんです。家具屋さんは自分の家のインテリアをつくるという意識で訪れる場所だから、そういう眼で今回展示する写真を見るとまた違った気持ちで写真を見られるんじゃないかなって思うんです。
TIMBER YARD
家具と一緒に見せることで、実際に飾ることを想像できますよね。
尾崎さん
そうなんです。そのインテリア感っていうのがぴったりじゃないかなと思って。
葛西さん
ナショジオの写真展というと、世の中のことを知ろうとか、写真を勉強しようとか、そういう何らかの“学ぶ”意識を持っていらっしゃる方が多いと思うんです。でも、TIMBER YARDさんみたいな場所だと、写真がインテリアになるんですよね。写真がすごく身近なものになるし、垣根も下がる。写真への向き合い方が“学ぶべき対象”というものから“好きなものを選ぶ対象”に転換するというのは、新しいナショジオの写真の見せ方になると思いました。いつもと違う、くつろぎのある場所でやるというのは、見る人の意識も全く変わるんじゃないでしょうか。
TIMBER YARD
写真が“学ぶべき対象”という風に捉えられていることは、普段から感じられているのでしょうか?
葛西さん
写真を飾ることは、まだそれほど身近ではないと思います。写真自体の歴史も絵画や書に比べればまだ浅いですし、アート作品としても手を出しづらいという認識なのではないでしょうか。パソコンやスマホの壁紙のように、お気に入りの写真を気軽に飾って鑑賞するという習慣があってもいいですよね。
尾崎さん
本当にいい写真って、見ているだけでリアルな体験ができますからね。
葛西さん
ナショジオの写真はストーリーのある写真だというのも大きいと思います。記事やテーマ、あるいはメッセージを、その一枚で伝えられる写真なんです。だから一枚だけを取り出しても当然そこにストーリーを感じられるはずです。写真が語るものが豊かということは、鑑賞の仕方も豊かであるということだと思います。
TIMBER YARD
私もそれは前回開催した写真展で会場に立っていて、とても感じましたね。同じ写真を見ても、お客様によって違うように捉えていたり。逆に、皆さん同じように感じる写真もあったり。面白かったですね。
葛西さん
まずは好きな一枚を見つけていただけると嬉しく思います。
TIMBER YARD
前回のインタビューでナショジオの写真には1枚1枚にストーリーがあるというお話がありました。素晴らしい写真はどうやって生み出されているのでしょうか?
尾崎さん
スマホなどの普及で、今は多くの方が気軽に写真を撮りますよね。カメラの性能も良くなっているので、いい写真が撮れるようになってきていると思います。しかし、そうなった今でも、ナショジオの写真が人を惹きつける理由の一つは、大変な手間と時間をかけているからなんです。
かつて米ナショジオ誌の写真部の人が語っていたんですが、雑誌の場合、特集1つにつき10枚くらいの写真が載るんですが、その写真を選ぶために写真家さんはひとつのテーマで大体2万枚から6万枚くらいの写真を撮るようです。その写真の中から編集者が50枚くらいに厳選して、そこからフォトストーリーを作り、最終的に10枚くらいに絞っていくといいます。それだけの写真から選び抜かれたという厳選感が、ナショジオの写真にはあるんですね。
TIMBER YARD
1枚の写真のために、想像以上の時間がかかっていることに驚きました。今回の写真展で展示の作品のなかにも、そういった写真があるのでしょうか?
尾崎さん
たとえば、クリスチャン・ツィーグラーの「決定的瞬間」という写真だと、ハチドリがここの花に来るだろうと予測し、そのときの構図まで決めて撮られているんです。ストロボを6つ用意して、2つは花、2つは背景、2つはハチドリが来るだろうという場所にセットして、飛びながら蜜を吸う姿を撮れるまで2週間かかったそうですね。
「決定的瞬間」クリスチャン・ツィーグラー
また、めったに姿を現さない動物を捉えた「ヒマラヤのユキヒョウ」という写真では、撮影者のスティーブ・ウィンターが獣道が交差する場所に自動でシャッターが切られる装置を設置して、ユキヒョウを待ち構えるんです。ずっとそこに待機することはできないので3週間ごとに撮れているか確認しに行くんですが、なかなか撮れず、3ヵ月後にやっと撮れた!となったそうです。1枚の写真を撮るためにそれくらい時間がかかるんですね。そうやって撮ったたくさんの作品から実際に使用する写真を選んでいくんです。
「ヒマラヤのユキヒョウ」スティーブ・ウィンター
TIMBER YARD
撮影者の強い思いがあるからこそ、特別な一枚が生まれるんですね。ナショジオの写真にはどうやって撮ったのだろうと考えてしまう写真も多くありますよね。
尾崎さん
ティム・レイマンの「極楽鳥」は、どうやって撮っているのか不思議ですよね。極楽鳥は正式にはフウチョウ、英語ではBird of Paradiseと呼ばれていて、文字通り楽園を感じさせる鳥です。39種類いるらしいのですが、どれも変わった装飾を付けていたり、踊ったりする種類もいて、とても魅力的な鳥なんです。
もともと鳥類学者であるティム・レイマンは、そのフウチョウがこの木の場所に来ると判断しました。しかしいつ来てくれるかは分からないので、彼は木にカメラを隠しておくんです。
「極楽鳥」ティム・レイマン
葛西さん
それで、隣の木に身を隠す場所を作るんですよ。様子を確認できるモニターを設置して、フウチョウが来たらシャッターを押すんです。
尾崎さん
ひたすら待って撮るんですよね。ティム・レイマンの写真集が出たときに彼のお気に入りの写真を聞いたんですが、即答でこの1枚を挙げていましたね。この写真が撮れたときは本当に嬉しかっただろうと思います。
TIMBER YARD
今はカメラの性能も良くなっていますが、まさにこういった写真はどれだけカメラが良くなっても撮れないですね。
尾崎さん
普通の人ではいけない場所で撮影する写真家もいます。カーステン・ペーターは、探検が好きなのか、火山や洞窟といった危険なところによく行くんですよね。今回展示する、「世界最大の結晶洞窟」がまさにその代表です。
「世界最大の結晶洞窟」カーステン・ペーター
葛西さん
彼が行く場所は技術がないと行けないところなんです。本人が関心を持っているということはもちろんですが、そこへ行くことができる技術を持っているから、こういった危険な地の撮影依頼があるんだと思います。
尾崎さん
ジョージ・スタインメッツの「湿原をゆく」という写真も撮影手法が面白いんです。最初は飛行機で撮っていたらしいんですが、飛行機だと速すぎて撮影が難しかった。
そこで、彼は乗り物を変えるんです。「湿原をゆく」は後ろにファンがついた大きいパラシュートのような乗り物に乗って撮影されました。今ではドローンがありますが、当時はこういった空からの写真は限られた乗り物に乗ることでしか撮れなかったんですよね。
「湿原をゆく」ジョージ・スタインメッツ
葛西さん
ナショジオではカメラ以外の機械を開発する専門部署もあって、技術的な支援を行っています。動物などを待ち構えて撮ったり、プラスアルファの道具を使って、写真家がいち早く新しい撮影方法を発明していくことに協力しているんです。それまで撮れなかった視点で撮るということを、ナショジオはずっと追求してきました。
尾崎さん
カメラがどんどん進化していく中で、写真家の価値が問われていくんだろうと思います。カメラの性能がどんなに進化しても色あせない写真とはどういうものか、今回の写真展で感じてもらえると嬉しいです。
TIMBER YARD
ナショジオに取り上げられる写真は最新の技術を用いて撮影され、何枚もの写真から厳選されているというお話を伺ってきました。今回はナショジオのすばらしい写真を撮影してきた写真家について、お伺いしたいと思います。
尾崎さん
ナショジオにはいろんな写真家がいます。
クリスチャン・ツィーグラーはもともと熱帯雨林に咲く蘭の研究者で、論文を書くための記録として写真を撮っていました。やがて、自分が見ているものの美しさを論文だけに発表するのはもったいないと考えるようになります。あるとき、写真家のフランス・ランティングが彼のもとへ撮影に来るんです。研究者としてランティングの撮影に同行した彼は、ランティングからアドバイスをもらいました。好きなものを好きなだけ撮ればいいじゃないか!と。感化されたツィーグラーはそこから本格的に写真家としての活動を始めていきました。彼はもともと熱帯雨林の研究者だったので、被写体は熱帯雨林の植物や鳥などの動物といった生き物たちなんです。
「決定的瞬間」クリスチャン・ツィーグラー
TIMBER YARD
ランティングとの出会いがツィーグラーの人生を変えていったんですね。
尾崎さん
ポール・ニックレンという写真家も、20代前半は生物学者として働いていました。しかし、ツィーグラーと同じような思いを抱えていて、そのあと写真家になったんです。彼は極寒の地の写真を撮影しつづけ、一流の写真家になっていきました。
「穴の中から」ポール・ニックレン
TIMBER YARD
研究者からのスタートだったからこそ、彼らは写真家になる前からすばらしい光景を知っていたのかもしれませんね。
尾崎さん
また違ったタイプの写真家でいうと、“写真道”を極めようという写真家もいます。たとえば、サム・エイベルです。彼は静物画のような動きの少ない写真を撮る、ナショジオでは珍しいタイプの写真家です。彼は道具もカメラ1台とレンズ2本くらいしか使わず、道具ではなく自分が撮るんだ!という気持ちでほかの人とは違った境地を目指しました。
「洋梨とクレムリン」サム・エイベル
ジム・ブランデンバーグも、そういうタイプかもしれません。1日1枚ずつだけ撮ると決めて、100日100枚撮るというプロジェクトを行うなど、1枚に込める思いが深いですね。
TIMBER YARD
シャッターを1日に一度しか押せないと思ったら、手が震えてしまいそうです。面白い試みですね。今回展示するジム・ブランデンバーグの「ホッキョクオオカミ」という作品、一目見た瞬間に惹かれてしまいました。
葛西さん
「ホッキョクオオカミ」は私もお気に入りの作品です。この作品は、オオカミを撮りたい一心でカナダの北に位置するエルズミア島に3年通い続けて撮影されたそうです。極限の場所に生きている動物の凄い瞬間を捉えていますよね。立っているだけでもなく、警戒してこちらをにらんでいるわけでもなく。このオオカミが少し足を出して水につけているシーンなどが写った一連の写真があるんですけど、このオオカミがここから先どうするんだろうと想像すると面白いです。
「ホッキョクオオカミ」ジム・ブランデンバーグ
TIMBER YARD
1枚の写真から想像をふくらませて鑑賞できるのが素敵ですね。ここまでたくさんお話を伺ってきましたが、今回の写真展で展示する作品についてまとめるとどういった作品と言えるでしょうか?
尾崎さん
写真の歴史はまだ浅いんですが、それでも歴史に残っていく名作がいくつも生まれています。今回の写真展で選んだ写真はそういった作品です。ゴッホの「ひまわり」やモネの「睡蓮」は時代を超えて鑑賞されていますが、それに劣らない力を持っていると思います。写真集の表紙になっているものも多く、それぞれの写真家さんがもっとも大事にしている作品ばかりです。
TIMBER YARD
そういった特別な作品を、お気にいりの場所に飾れたら素敵ですね。
葛西さん
写真に親しんでいる人には当たり前かもしれないんですが、写真はプリントの方法も大切なんです。今回の展示作品や販売作品は、本当に鮮やかで発色が特別にすばらしいです。
TIMBER YARD
名作と呼ばれる作品の数々を大きなプリントで見られるのがとても楽しみです。きっと本やWEB上で見るのとはちがう感動がありますね。
今回の写真展が写真に親しんでいただくきっかけになれたら嬉しいです。尾崎さん、葛西さん、興味深いお話をありがとうございました。
尾崎さん
葛西さん
こちらこそ、ありがとうございました。
水曜定休(祝日を除く)